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第4話 【ライバル!?①】 新・男メイドが現れた!

「……はぁ。ローン返済まで、あと大金貨25枚……」



僕——レイ・セルスティアは、手作りの「何でも屋」のチラシを抱えながら、秋晴れの青空を見上げて深々とため息をついていた。



原因は明白。僕の師匠であり元Sランク冒険者、そして重度の男メイドフェチであるドスケベオヤジ・グレンツが、勝手に高額なメイド服をローンで落札しまくっているからだ。



「レイくん……ため息をつくと、幸せが逃げちゃいます……」



「あ、ルノアさん。……そうですよね。でも、ため息をつかないと胃に溜まった胃酸が口から溢れそうなんですよ……」



おずおずと差し出された手作りクッキーを受け取りながら苦笑いする。



前の依頼で引きこもりを克服した大富豪の令嬢・ルノアさんは、すっかり僕に懐き、毎日のように屋敷に通ってくれている。



「大丈夫ですレイ師匠! このカイル、師匠の借金返済のためなら、どんな高難易度依頼でも一刀両断してみせます!」



「いやカイルさん、あなたはまず先日の門扉の修理代を払ってください。あと僕の弟子にした覚えはありません」



キリッとした顔で剣を握る熱血剣士・カイルもいつの間にか居座っており、僕の周りは連日賑やか(というか騒々しい)だった。



そんな時、表門のベルがカララ〜ンと明るい音を立てて鳴った。



「やっほー! 初めまして、レイくん!」



パッと花が咲いたような明るい声とともに走ってきたのは、一人の男の子だった。



鮮やかな青髪を高い位置で元気にポニーテールにし、キラキラとした大きな瞳。



衣装はなんと、ふんわり広がったミニ丈の青いメイド服にニーハイソックス!



僕の着ている「白髪に映える(師匠いわく)クラシカルなロングスカート」とは正反対の、明るくてポップな可愛らしさに溢れたスタイルだった。



【人物分析】

15歳くらい? 鮮やかな青髪ポニーテール。ミニスカメイド服を着た、明るく優しい男メイドの男の子。



「僕、ギルドで何でも屋をやっているフェリスって言います! 街で『すご腕の綺麗なメイドさんが何でも屋を始めた』って聞いて、お友達になりたくて飛んできちゃいました!」



「えっ、お友達……!?」



「うん! 僕もね、困っている人を笑顔にする男メイドのお仕事が大好きなんだ! 街の依頼で『暴走イノシシの保護と農園のお手伝い』っていうのがあって……一人だとちょっと不安だったから、一緒に協力してくれたら嬉しいなって思って!」



「うーん、イノシシですか…。服が汚れてしまったらどうしましょ…」



「報酬は大金貨2枚だってさ!」



「ぜひ、やりたいですー!!いや、ぜひ、やらせてくださーい!!」

「大金貨2枚……! フェリスさん、あなた天使ですか!? ぜひ一緒に行きましょう!」



毒気のまったくないキラキラした笑顔にすっかり毒気を抜かれた僕は、フェリスさんと手を取り合って農園へと向かったのだった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「出たよ! 暴走イノシシ(ワイルドボア)だ!」



農園に到着すると、巨大なイノシシの魔物が畑で暴れまわっていた。



「レイくん! お野菜やイノシシさんを傷つけないように、僕が風で優しく包み込むね! ……えーっと、シトラス・ウィンド〜!」



フェリスさんは軽やかにジャンプすると、ミニスカの裾をふわりと揺らし、優しい青い風の魔法を解き放った。 風の帯がイノシシを包み込み、一時的に動きを封じる。



(わぁ、なんて優しくて綺麗な魔法なんだろう!)



……と、僕が感銘を受けたのも束の間。



興奮した巨大イノシシが「ブモォォォッ!」と激しく咆哮し、フェリスさんの風の帯を力づくでバリバリと破り始めた。



「ひ、ひぇぇぇぇっ!? 破られたぁぁぁ!?」



さっきまでの太陽のような明るい笑顔が一瞬で吹き飛び、フェリスさんの顔から一気に血の気が引いていく。



直後、彼の口から凄まじいスピードの長文マシンガントークが放たれた!(レイによる実況)



「嘘でしょ破られたどうしようやっぱり僕の魔力制御が甘かったんだあんなに練習したのに土壇場で失敗するなんて本当に使えない男メイドだこんなの農家さんに顔向けできないし弁償とか言われたら今月の食費ゼロだしそれどころか一緒に来てくれたレイくんに『なんだコイツ大口叩いたくせに全然使えないじゃんガッカリだな』って思われて嫌われて見捨てられて二度と口きいてくれなくなったら僕どうやって生きていけばいいの無理絶望すぎる死んじゃうーーーッッ!!!」



(早口長文ネガティブすぎるーーーーっ!? 息継ぎどこでしてるの!?)



あまりのパニックとネガティブの暴風雨に僕が呆然としている間にも、イノシシは涙目のフェリスさんに向かって猛スピードで突進してくる!



「フェリスさん、息吸って落ち着いてください!下がって!」



僕はハタキ(風魔法付与)を握りしめ、優雅にロングスカートの裾を翻した。



サッ……!



師匠のスパルタ教育で叩き込まれた極上のステップ。



イノシシの猛進をコンマ1秒の差でかわすと、すれ違いざまにハタキの柄で急所を『ポンッ』と優しくひと突き!



「グルル……〜〜〜」 フェリスさんの風魔法で鈍っていたおかげもあり、イノシシは怪我一つなく気持ちよさそうにスヤスヤと眠りについた。



「風魔術・集塵術! ついでに風魔法で土を耕します!」



散らばっていた野菜を風でそっとカゴに収め、荒れた畑を一秒で元通りの美しい畑へと生まれ変わらせる。



「ふぅ……怪我はありませんでしたか、フェリスさん?」



お辞儀をしながら手を差し伸べると、地面で体育座りをしてガタガタ震えていたフェリスさんが、涙目のまま呆然と僕を見上げていた。



「レイ……くん……? 僕、あんなにブツブツ弱音吐いて足引っぱったのに……見捨てないでくれたの……? 『早口で気持ち悪い』とか思ってない……?」



「思うわけないじゃないですか!フェリスさんがイノシシや作物を傷つけないように優しく風で包んでくれたから、僕も落ち着いて一撃を決められたんです。フェリスさんの優しさがなかったら、こんなに綺麗に解決できませんでしたよ」



僕が言うと、フェリスさんは一瞬ぽかんとしたあと、またもや長文早口で叫びながら僕の服の裾に飛びついてきた!(謎の実況その2)



「レイくん聖人すぎるよ大好き神様仏様レイ様だよ〜〜っ!僕本当はメンタル豆腐だから一人だとすぐパニックになっちゃうんだけどレイくんが隣にいてくれたら世界最強になれる気がするから一生離れないし一生推すし一生お給仕のお手伝いするから見捨てないでねぇぇぇ!!!」



「わわっ!? だから息吸ってください息っ! 倒れちゃいますからっ!」



明るい笑顔の裏にあった、重度の豆腐メンタル。



僕は苦笑いしながらも、彼の手を優しく握り返してあげたのだった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



こうして農園の依頼は無事大成功! 大金貨2枚を手に入れて屋敷へ戻ったのだが……。



「レイくん……あの青い髪の人、すごく懐いています……(バチバチッ)」



ルノアさんが見たこともないような重苦しい防護魔法の圧を放ち、



「レイ師匠! 僕もその青髪の男に負けないよう、師匠をお守りしてみせます!」



カイルがなぜか対抗心を燃やして剣を構え、



「レイく〜ん! 僕、またメンタル崩壊したら慰めてね〜!」



フェリスさんが僕の腕にしがみついて離れない。



そして屋敷の玄関では、ドスケベ師匠が、

「なに!? 清純派で芯の強いレイと、明るくてメンタル脆いマシンガントークフェリス……このギャップと関係性が尊すぎる! 素晴らしい! では二人で並んで着る用の『至高のペア男メイド服』を新たにローンで購入しておくか!」と笑顔で出迎えてくれた。



「師匠ーーーーーっ!! 人の精神的打撃を勝手にネタにしてローンを増やさないでくださいーーーーっ!!」



僕の絶叫が、秋晴れの空にどこまでも虚しく響き渡る。

(叙情的な表現です。僕の気持ちはこんなおだやかじゃないですけど…)



借金生活は相変わらず大変だけど……とっても賑やかで素直な仲間がまた一人増えて、僕の日常はますますカオスになっていくのでした。

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