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異世界転生して見た目が犯罪者っぽいが実は勇者な件  作者: 明太パスタ


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魔王、対面前から敗北を確信する

魔王城の最深部――重厚で漆黒の『玉座の間』。

かつて数々の勇者や英雄たちを絶望のどん底へと叩き落としてきたその神聖にして禍々しい空間は、今やかつてないほどの『絶望と恐怖』に包まれていた。


「ま、魔王様ぁぁぁっ! 奴が……『歩く破壊神』ザックスが、菓子折りの姿をした大量破壊兵器を玄関に設置し、玉座の間へ向かって歩いてきますぅぅっ!」


痩せ細った四天王ゲイルと、鎧をガタガタと鳴らす総大将バザルが、玉座の足元で涙と鼻水を流しながらしがみついていた。


「ええい、取り乱すな不甲斐ない……っ!」


玉座に鎮座するは、魔族の頂点に君臨する『魔王ヴァルザック』。

数百年を生きた絶対的な覇者であり、その圧倒的な魔力と冷徹な知略で人間界を恐怖に陥れてきた伝説の存在だ。

……しかし、そんな魔王の額からも、油のような冷や汗がダラダラと垂れ流されていた。


(な、なんだあの禍々しい圧力は……っ!? 一歩近付いてくるごとに、この魔王城全体の空間がミシミシと悲鳴を上げているぞ……!?)


魔王ヴァルザックほどの領域に達していればこそ、遠くから近づいてくる人間の『次元が違いすぎる領域(レベル99+神聖魔力)』が、痛いほど理解できてしまっていた。

配下たちが「手かざし一発で数万を蒸発させた」「一瞥で四天王を精神崩壊させた」と報告してきた時、最初は「大袈裟な」と鼻で笑っていた。だが、違ったのだ。奴らは大袈裟に言っていたのではない。むしろ『手加減された脅威』を報告していたに過ぎなかったのだと。


(勝てるわけがない……! あいつは勇者などという生ぬるい存在ではない! 神話の時代に世界を滅ぼしそこねた、本物の『邪神』だ……っ!)


対峙する前から、魔王ヴァルザックの精神的勝利(プライド)は完璧に粉砕されていた。


ギギギギ……。


重厚な玉座の間の扉が、ゆっくりと開いた。


「あ、あの……ごめんください。扉が開いていたので入らせてもらいました……」


逆光の中から姿を現したのは、身長二メートルの巨躯、顔面を斜めに走る太い傷跡、そして死者を射殺すような冷酷な三白眼を持つ男――ザックスであった。


(うわぁ……なんか一番奥の部屋に来ちゃったよ。あそこに座ってるのが魔王さんかな? めちゃくちゃ怒ってそうな顔してるなぁ……)


私は内心、前世の社畜時代に『取引先の大激怒している社長室』の扉を開けた時と同じ、猛烈な胃痛とプレッシャーに冷や汗を流していた。

とにかく、誠心誠意お詫びをして、穏便に穏便に話をまとめなければならない。


私はゆっくりと玉座へと歩みを進めた。


だが、その私の「胃痛で顔を歪めながらの歩み」は、魔王たちの目には【貴様らの命など羽虫と同じ。いつでも首を跳ね飛ばせるぞという、最悪の残虐な笑み】にしか見えていなかった。


(く、来る……っ! 恐怖で足が動かん……っ!)

魔王ヴァルザックの全身の毛穴から冷や汗が噴き出す。


私は玉座の数メートル手前で立ち止まると、前世の完璧な謝罪の作法に則り、深く深く頭を下げた。


「魔王様。この度は、私の行き届かない行動のせいで、貴軍の皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした!」


私は心からの謝罪の言葉を述べた。

――しかし、レベル99の『物理無効・極大』の魔力と共鳴した私のドスの利いた超低音ボイスは、玉座の間全体を激しく振動させる【天動説レベルの冷酷な圧迫面接宣言】へと変換されていた。


「――おい魔王。貴様らの無能な配下がオレの視界に入り込み、王都で牙を剥いた罪は重い。このオレが直々に出向いてやったのだ。大人しく首を差し出し、膝を屈するか……それとも、この城ごと消滅するか、今すぐ選べ」


「ひ、ひぃぃぃぃっ……!!」


魔王ヴァルザックは、あまりの恐怖に玉座から転げ落ちた。


(な、なんだあの声の威力は……!? ただ挨拶されただけで、ワシの全魔力障壁が破砕したぞ……っ!? に、人間界にこんな怪物がいてたまるかぁぁぁっ!!)


魔王は惨めにも床に這いつくばり、ガタガタと全身を震わせながら、命乞いのように叫んだ。


「わ、分かった! 降伏だ! 我が魔王軍は今この瞬間をもって全面降伏する! 人間界への侵攻も全て撤回する! だから……だから命だけは助けてくれぇぇぇっ!!」


「……えっ?」


深々と頭を下げていた私は、ポカンと口を開けて顔を上げた。


(えっ……? 俺、ただ謝りに来ただけなんだけど……なんで魔王さんが泣きながら降伏宣言してるの……??)


中身はただの胃痛持ち元社畜、見た目は対面しただけで魔王を屈服させる人類史上最強の破壊神。

こうして、異世界を数十年間脅かし続けてきた魔王軍との戦いは、主人公が「頭を下げて謝罪しただけ」で、完璧な終結(?)を迎えるのだった。

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