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「君を抱くことはできない」と言われたけど毎日抱き上げられてます  作者: 鷹羽飛鳥


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ラジー 2

「奥様のお年は15です。

 ご実家ではひどい扱いをお受けになっていたと伺っておりましたが、本当にひどいですね」


 マールがプンプンしながら言う。

 あ、マールはメイド長の名前。

 ここに来て半年が経って、少し慣れてきて、私は「マール」、マールは「奥様」と呼び合うようになった。

 私が、自分が何歳か知らないって言ったら、マールが教えてくれた。15歳だって。

 この国の成人年齢が15で、結婚できるのも15からで、私は15歳の誕生日に結婚したんだって。

 なんか、旦那様が私を助け出すために結婚したんだって。

 あのままだと死んじゃうからって。

 あ、旦那様っていうのは、ガリー様のこと。今は一緒にお茶を飲むようになって、色々とおしゃべりするから、「旦那様」って呼ぶようになった。

 最初は怖い人だと思ってたけど、本当は、栄養失調で死にかけてた私が元気になるまで様子を見てくれてたんだって。

 私が少し元気になったから、一緒にお茶を飲むようになった。

 お仕事の休憩の時に、私と一緒に。

 天気がいいと、お庭に出ることもある。

 そのために、テーブルとイスを置くスペースも作ってくれた。

 最近では、その辺りは私が好きにお花を植えていい場所ってことになってる。

 今日は、そこでお茶の予定。




「今日は何をしていたかな?」

「ハンカチに刺繍してました。

 できあがったら、旦那様、また使ってくれますか?」

「もちろんだとも。

 ラジーの刺してくれたものを身に着けていると、体が軽くなるからね」


 刺繍は、マールに教えてもらった。

 実家では、ずっと閉じ込められてたから、私はこの世界の文字を全然読めなかった。

 今は教師が付いて習ってるし、少しは読み書きできるようになったけど、まだまだ読書するって感じじゃない。

 暗号解読してるみたいで、楽しめない。

 それで、刺繍を覚えることにした。

 貴族の奥様は、旦那様のことを思って刺繍したハンカチとかケープとかを贈るものだって聞いたから。

 私を助け出してくれた旦那様に、ありがとうの気持ちを込めて。

 何枚か練習して、1枚目のハンカチができたのが一月前。

 前世でいう四つ葉のクローバーみたいな幸運の象徴の花があるんだけど、それを刺してみた。

 へたっぴだけど、その分、心を込めたつもり。

 できあがったハンカチをマールに見せたらこれなら大丈夫って言ってくれたから、お茶の時、旦那様に渡した。

 かなりドキドキだったけど、旦那様はにっこり笑って「ありがとう、使わせてもらう」って言ってくれた。




 次のお茶の時に、ポケットから取り出して「とてもいいよ。また刺繍してくれると嬉しい」って言ってくれた。

 おせじだと思うけど、誰かに「ありがとう」なんて言われたの初めてで、すっごく嬉しかった。

 マールも、旦那様がとっても喜んでたって言ってたから、次を作ることにした。

 今度は、もうちょっと頑張って、花と蝶に挑戦してる。

 マールに聞いたんだけど、花に寄っていく蝶の図柄は夫婦円満って意味なんだって。

 旦那様と仲良くできたらいいなって気持ちを込めて刺してる。

 あの地獄から助け出してくれて、いっぱいごはん食べさせてくれて、何の役にも立たない私に優しくしてくれる旦那様のために、私はこれしかできないから。

 そういえば、貴族の奥様の一番大事なお仕事は、子供を生むことだっけ。

 でも、旦那様は私を抱かないって言ってたし…。




「旦那様、あの、子供はどうするんでしょうか?」


 お茶の時間に聞いてみた。

 愛人とかいたら悲しいけど、私じゃダメみたいだし。

 旦那様は、困った顔で笑いながら答えてくれた。

「もちろん跡継ぎは必要だ。

 ラジーが産んでくれたら一番いいが、君はまだ子供を産める体じゃないからね」

 産める体じゃない?

「あ…!?」

 そういえば、今世ではまだ生理が来てない!

 え、ちょっと待って、私、今、15歳なんだよね?


「おそらく、幼い頃からの栄養失調が原因だと思うが、ラジーは15歳の発育状態じゃない。

 ラジーのせいじゃないんだ、気にすることはない」

 気にするなって言われても、気になるでしょ。

「お世継ぎはどうするんですか?」

「3年ほど前に、妹の子を養子にしていてね。

 既にこの屋敷で学ばせている。

 ラジーとの子が産まれても補佐として残せるし、産まれた子が娘なら、結婚させる手もある」

「私、その方と会ったことありませんけど…」

「あれは、ラジーと年が近いからな。

 変に懸想されても困るから、会わせないようにしている。

 くだらん独占欲と笑っていいぞ。

 私は、ラジーを極力ほかの男の目に触れさせたくないんだ」


 そういえば、このおうちに来てから、男の人って家宰の人しか会ってないような気がする。

 大事にしてくれてる、のかな。

「えと、どうして私と結婚したんですか? 会ったことなかったですよね?」

「ラジーが幼かった頃、見掛けたことがある。

 まだ母君がご存命だった頃だ。

 だが、まあ、結婚したのはラジーにここにいてほしかったからだ」

「私、お役に立ってます?」

 何もしてないんだけど。

「ラジーが、ここで刺繍して、笑っていてくれるだけで、十分役に立ってくれているよ。

 こうしてラジーとお茶を飲むだけで、疲れが吹き飛ぶ」


 そんなわけない。

 でも、嬉しい。

 私、何の役にも立たないけど、旦那様は毎日会いに来てくれるし、優しくしてくれる。

 旦那様の子供なら可愛いかも。ちょっと欲しい。

 もうちょっとごはん食べて、大きくならないと。

 旦那様がずっと優しく笑っててくれるといいな。

 旦那様の膝の上で、頭を撫でてもらいながら、そう思う。

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― 新着の感想 ―
小さい頃から監禁され、外にも出ない食事も満足に与えられないで、ラジーは危ない状態だったのですね。 ナリーア侯爵家に嫁いでどうなることかと思いましたが、この二話めを拝読して、安心しました! 良かった、お…
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