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「君を抱くことはできない」と言われたけど毎日抱き上げられてます  作者: 鷹羽飛鳥


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1/3

ラジー 1

「君を抱くことはできない」


 え、それ、どういう意味?

 実家での監禁生活からようやく解放されたと思ったら、これだ。

 ナリーア伯爵家令息のガリー様と婚姻することになって、ようやく連れ出してもらえたのに。

 私は、母の顔を知らない。

 顔どころか、名前も、どんな人だったかも知らない。

 物心ついた時には、離れに閉じ込められていた。

 食事は1日2回、黒パンと野菜くずが浮いてるだけのスープ。

 いつもお腹をすかせていた。

 物心ついてから何年も経ってると思うけど、実際どれくらい経ったかはわからない。

 栄養状態が悪いせいか、全然大きくならないから、自分でも今何歳なのか想像も付かない。

 前世の記憶がなかったら、言葉もロクにしゃべれなかったんじゃなかろうか。


 そう、私には前世の記憶がある。

 日本のどこかで、会社勤めしてたみたい。

 なんか記憶の隅っこに「異世界転生」なんてジャンルの小説があったらしいことが残ってるし、きっとそういうのなんだろうなぁ、なんて思う。

 でも、具体的な作品名とか知ってるわけじゃないし、何の小説に転生したのかとか、全然わかんない。

 たぶん「ドアマット」とかいういじめられ役になっちゃったんだよね。

 いじめられるのは()なんだけど、どうすればいじめられなくなるのかわかんないし、なるべくおとなしくしてようと思って、実家ではなるべくベッドで丸くなってた。

 動くとお腹がすくしね。

 閉じ込められてるだけで、殴られたりとかはなかったし、家族の顔もほとんど見たことなかったんだよね。




 ある日突然、ナリーア侯爵家に嫁ぐことになったって言われて、結婚式もなく引っ越してきて、初夜。

 旦那様になったガリー様は、私の寝室にやってくると、額にしわを寄せてイスを引っ張ってきて座った。

 すっごい大人な感じの人。

 28歳だって。

「家政に関しては、君は何もしなくていい。

 社交もいらない。

 パーティーなどへの出席もしなくていい。

 ドレスでも宝石でも、欲しいものがあればメイド長に言って業者を呼ぶように。

 君のための予算があるから、その範囲内なら何に使ってもいい。

 母屋の中の移動は構わないが、外に出るならメイド長に言うように。護衛を手配させる」

「お庭に出てもいいんですか?」

 実家では、離れから出るのは禁止されてた。出る元気もなかったけど。

「庭を散歩するのは構わないし、君に一角を預けるから、そこは好きに使って構わない。

 ただし、護衛は必須だ」

「贔屓の店はなかったはずだな。

 屋敷には信用できる者しか入れないから、メイド長の方で出入りの商人を呼ぶ。

 メイド長は、明日あいさつに来させる。

 今日はもう休め」


 ガリー様は、それだけ言うと部屋を出て行った。

 「休め」って、寝ろってことだよね。

 こんなふかふかのベッドで寝てもいいのかな?

 1人でベッド使ったりしたら、怒られるかも。

 床のじゅうたんだって毛が長くて、実家の掛け布団より厚みがある。

 ここなら、怒られないよね。




「ラジー様! ラジー様!」


 揺り起こされて、目が覚めた。

 ピシッとメイド服を着たおばさんがいる。この人がメイド長かな?


「絨毯に埋もれるのがお好きというのでなければ、次からはベッドでお休みなさいますよう」

「ベッド、使っていいの? ふかふかだよ?」

「あれはラジー様のベッドです」


 私のらしい。すごい。


「朝食をお持ちしました。

 全部召し上がっても、お残しなされてもようございますので、お好きなものをどうぞ」


 部屋の真ん中のテーブルに、今世では見たこともないようなごちそうが並んでた。

 とても食べきれない量。

「こんなに…」

「お好みのものだけ召し上がっていただけば結構です」


 パンを食べてみる。ふわふわ。中が白い。やっぱりこっちにも白いパンはあったんだ。

「おいしい…」

いい匂いのスープがある。一口飲んでみる。おいしい。

 パンを1個とスープを飲んだら、お腹いっぱいになっちゃった。

 まだいっぱいあるけど食べられない。

 もったいない。

 せっかく食べていいって言われたのに。

 涙が出てきた。

「ごめんなさい」

「いいえ、ご無理なさいませんよう。これは、別の者がいただきますので」


 怒られなかった。優しい。




 お腹いっぱいになったら、眠くなった。

「どうぞ、お昼寝なさってください」


 ベッドに入って、目が覚めたらお昼ごはんが用意された。。

 今度はちょっと少なめだけど、それでも食べきれない。

 お昼は、フレンチトーストみたいなのとスープを食べた・

 メイド長が

「夕食までお寛ぎください」

と言って、残したごはんをさげたから、ベッドに腰掛けてボーッとしてた。

 次回更新は28日午後7時になります。

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― 新着の感想 ―
最初からハードモードの人生、辛い。 でも、ここでは幸せに暮らせそう。 ドキドキしながらラジーちゃんを見守ります。
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