第27話 それは世界のどこかにいる〝強敵〟達――まだ見ぬサッカー選手(袋詰めする方)達――!
これは、奈子が今まさに激戦を繰り広げている会場より、遥か遠く、北方の地での出来事である。
北海道の山中、その更に奥深い峻厳なる地に、雷鳴の如き雄叫びが響き渡った。
「――ハイダラァァァァァァァ!!」
『……グ、グオオオン……』
大木の如き怪腕から繰り出される岩のような拳が、羆の額を撃ち抜き、一撃で昏倒させてしまう。
されど、岩のような大男は今しがた倒した羆に見向きもせず、何処かへと視線を向けて笑った。
「ふっ……予感がしたわ、新たな戦士が……そう、サッカー選手(袋詰めする方)が生まれた予感がのう。新たなる強者よ、早く此処まで上がってくるが良い」
呟きながら、今まさに修行僧の如くサッカー(袋詰めする方)の修行のため、山籠もりを続ける巨漢が――巨大な拳を天に突き上げ、叫ぶ。
「サッカー界(袋詰めする方)の天を掴むは、この《熊殺し》の拳なり――!」
――更に、世界を駆け巡る〝予感〟は、国内だけに留まらない。
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「呀!」「呀!」「呀!」「呀!」
中国、山頂にそびえ立つ厳かな寺、その屋外にて互い同士の間を空けながら、規則正しく整列し――大勢の弟子たちが、レジ袋に詰め込まれた砂に手刀を突き込んでいる。
「哈ッ!」「哈ッ!」「哈ッ!」「哈ッ!」「哈ッ!」
「「「ハイィーーーーーッ!!」」」
休む間もなく鍛錬……いや功夫を積む者たちに背を向け、チャイナドレスを身に纏った少女が境内に足を踏み入れた。
「お師さま……今、感じたアルね。それも、とてつもなく……大きな、アル」
「…………」
声をかけられ、手を合わせていた〝師〟と呼ばれた人物が、ゆっくり顔を上げる。
「そう、あなたも感じたのね……ええ、感じましたとも……新たなるサッカー選手(袋詰めする方)が生まれた、そういう〝気〟をね」
「! やっぱりアル……〝気〟アルね……!」
簾のような前掛けの付いた帽子の隙間から、妖艶な唇に笑みを浮かべつつ――〝師〟と呼ばれた人物は呟いた。
「新たなる闘士(袋詰めする人のこと)は……この《殺界公主》を脅かすような選手かしら……?」
「唉呀! お師さま以上のサッカー選手(袋詰めする方)いるなんて、そんなワケないアルよ!」
「そう。……アルの? ないの? どっちなの?」
「あいやー?」
キョトン、とするチャイナドレスの少女だが――《殺界公主》なる艶美な女性は、こほん、と咳払いしてから囁く。
「サッカーが古代中国の万象学・算命学をルーツとする〝殺界〟から派生して出来たスポーツというのは周知の事実(※以下に出典)……中華四千年の歴史の重み、果たして受け止められるかしら……?」
「好~! お師さまに一生ついてくアルよー!」
※出典:珍名書房刊『レジ袋の如き深さと厚さのサッカーの世界』より。
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イタリアの地下深くで、サッカー(袋詰めする方)の闇試合が行われていた。
「――《猛毒の牙》――!」
「ギャアアアア! ま、まさか猛毒のレジ袋とはァァァァ!」
今、対戦相手を打ち倒した者――まさに闇世界のサッカーマフィア(袋詰めする方)のドンとも呼ばれるべき男が、子分を従えて立ち去る。
「兄貴ィ! やっぱドンの兄貴はスゲーやァ!」
「ふん、くだらねぇ……この程度で、騒いでんじゃ……――ッ!?」
「? ドン兄貴ィ! どうしたんですかい兄貴ィ~!」
「……オイ、テメーは感じなかったのか……?」
「? ??」
いまいち要領を得ない子分に、チッ、と舌打ちしたドンは――
「表のサッカー界(袋詰めする方)も……面白くなってきたじゃねェか……!」
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気配を消し、スコープ越しに、狙いをつける――溶接したかのように銃口を動かさず、呼吸さえも止まっているかのように。
(TAC-50の有効射程は、およそ1800M――だが俺は、2000Mまでなら確実にHITできる。3.2……0)
狙撃の瞬間、一切の感情を排し、放たれたゴム弾は――彼方に見えた商品を的確に撃ち飛ばし、レジ袋へと吸い込ませていく。
ふっ、と息を吐きながら、スナイパーは前髪をかき上げた。
「2000M以上――この〝山猫〟から逃げられるものなら、逃げてみな――」
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『……始まったようだな』
何処とも知れぬ、闇に包まれし円卓を囲む、顔すら隠した、謎の人間達。
厳かに席に着きながら、呟く言葉はどこか重々しい。
『これよりサッカー界(袋詰めする方)は、大きく進化してゆくだろう』
『ええ……我々の計画通りです』
『世界は、変わってゆく……サッカー(袋詰めする方)を中心に、変わってゆく』
『我らはただ、計画遂行のため……大いなる未来への燈火に、この命と魂を、ただ焚べるだけ……』
それは、責務か――はたまた、野望か。
円卓を囲む者たちは、同時に、言葉を揃えて放った。
『『『――人類サッカー選手化計画(袋詰めする方)、遂行のために――』』』
何処とも知れぬ、仄暗き闇の底で、恐るべき計画が進行しているのかもしれない――
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今、欧州の何処か、地図にさえ記されぬ、霊峰の山頂で――
『…………』
天使か、天女か、あるいは女神か――薄布を纏った眩いばかりの美女がただ一人、何も語らず座り込んでいた。
けれどほんの一瞬、ぴくり、細い金色の眉を動かす。
『…………フッ』
ただ一瞬、微笑を浮かべ――再び沈黙し、レジ袋を抱き、瞑想を続けた。
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今、確かに、まだ見ぬ世界中の猛者たちが。
天頂にすら到達せし、サッカー選手(袋詰めする方)たちが。
栄海奈子の――未来の《サッカーの女王》の息吹を、感じ取ったのかもしれない――!
※ここで出てきたコイツらは物語が続いたとしても、再登場するとは限りません。
新登場人物を豪快にブン投げる快感、たまんないね。青いよね……空がさ……。




