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私は悪を犯す、故に、世界は救われる  作者: 神月佑奈
第一章

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第一章:第三王子〜レイ視点〜

「またなにか連れてきたの………?」


採取から帰ってきたはずの結ちゃんが抱えていたのは、結ちゃんと同じ歳くらいの見た目をした男の子だった。


とは言っても、同じ歳というのはこちらの世界での話で見た目だけ言ったら結ちゃんの方が大人びて見える。


ただ、結ちゃんも魔力を得ているので恐らく、暫くは見た目の成長が止まるのではないだろうか。


ただ、今はそんなことはどうでも良くて。


「今度は動物じゃなくて人なの、?結ちゃん。」


念の為そう聞くと、結ちゃんはあっけらかんと答えた。


「はい、人ですよレイさん。魔物に襲われてたので助けたら意識失っちゃいました。」


あぁーなるほど、多方叫び声でも聞こえて助けに行ったら、助かった安心感で気絶して見捨てられなかったってとこか。(←正解)


「なるほどねぇ……その子ぉ、どうするのぉ?」


「あー……。」


そう聞くと、結ちゃんは言葉に詰まった。


はぁ、この子はほんとにもう、後先考えずに突っ走るんだから。


「1つ、普段使ってない部屋あったよね?そこにベッド用意するから寝かせてあげて。」


なんだろうな、結ちゃんと話してると真っ直ぐすぎて毒気が抜かれるのが分かる。


それは果たして、救世主だからなのか結ちゃんの人柄なのか、はたまた別のものなのか。


とりあえず、使っていなかった部屋を水魔法と風魔法でサッと綺麗にしたら土魔法でベッドを作る。


実は、俺も多くの魔法を扱える人間だったりする。

まぁ、だから大司教様の右腕なんて務められるんだけれど。


そこに少年を寝かせ、結ちゃんに料理をしてもらうようお願いする。


その間、俺はもうひとつ確認しなきゃならない事があったから。


その少年の傍ら、俺はとある名を呼ぶ。


「ノクス。」


ノクスは直ぐに姿を表した。


影の中なら自由に行き来できるらしい。


ノクスは相変わらず何も言わないでこちらをじっと見ている。


「ねぇノクス、君、使い魔契約したからもう喋られるでしょう?というか、君の場合は使い魔契約しなくても喋れた気がするんだけど。」


そう言うと、ノクスは観念したように口を開く。


「なんだ、特にお前と話したいことはないんだが。」


やっぱりね。

琥珀色の瞳を持っていた時点から察していたけれど、かなり上位の魔物だ。


「君はなんて魔物なの?結構上位なはずなんだけれど、猫型の魔物なんて聞いたことないんだよねぇ。」


そう聞くと、ノクスは少し嫌そうにして答える。


「俺は魔物じゃない。魔族だ。」


その言葉を聞いて、俺は早まったかと後悔する。

魔族は今戦争している相手じゃないか。


そんな魔族を使い魔にしてどうする。


「魔族が彼女になんの用で?」


俺は少し警戒しながら聞く。


「別に害す為に来たのでは無い。結とは………少し、過去に関わりがあってな。様子を見に来たんだよ。」


…………?


過去に関わりがあった?


結ちゃんが会ったことあるかと聞いた時に、あったことは無いと答えていたじゃないか。


俺自身はその声は聞こえなかったけれど、結ちゃんが後から教えてくれたんだ。


「詳しくは言えない…が、俺は魔族でも魔族側の魔族では無いとだけ理解していて欲しい。俺はいつでも、結の為に生きているっ。」


最後はなにか思う所でもあったのか、少し悔しそうな、悲しそうな、なにか負の感情を伴って発言していた。


嘘をついている気はしなかったので、信じることにする。


そんな会話をしていると、少年が目を覚ました。


「んん………ここ、は?っっは!ソルトロック・クラブ!」


見慣れない天井に少し頭を混乱させていたが、気を失う直前の事を思い出したのか、勢い良く起き上がった。


「な!お前は誰だ!?ここはどこだ!?身代金目的か!?」


身なりからして高貴なことがわかる。

多方誘拐とでも勘違いしたのだろう。


「落ち着いて落ち着いてぇ!ここは安全だから!」


そう言うと、少年は怪訝そうな顔をして繰り返す。


「安全………?」


少しの沈黙が続いた時、扉が空いて結ちゃんが入ってきた。


「ズッパ出来ましたよ!あ!起きてる!良かったぁ!」


そう言うと、結ちゃんは少年の元へ駆け寄り、ズッパを差し出す。


「これ、ズッパ作ったんだけれど食べられるかな?」


少年は、結ちゃんを見て驚く。


「さっき助けてくれた女じゃねーか。あ、ありがとな。ズッパは………ちょっと貰う。」


なんだろう、結ちゃんには素直なんだな。

まぁ、結ちゃん可愛いし、助けられたなら無理もないか。


「熱いからゆっくり食べてね!」


なんて会話をほのぼのと見ていたら、少年はこちらを見て驚く。


「待て、お前、よく見たら大司………」


「ちょちょちょ、ストップ!」


どうやら俺のことを知っているらしいことを言いかけたので、思わず口を塞ぐ。


今ここで正体をバレる訳にはいかない。


にしても、俺を知ってるなんて誰だこいつ。


「なぁに?2人共知り合い?」


何も知らない結ちゃんは純粋な疑問というふうに聞く。


少年はまた口を開き、危ないことを言う。


「は?お前知らないのか?こいつは……」


「初めまして!初めましてだよね!ね!!」


急いで圧をかけると、気圧されるように少年は「は、初めて…だ。」と言う。


良かった……。


「ふぅーん?にしても、貴方どうしてこんな所に?」


それは俺も気になっていた所だ。


すると、少年はかしこまった礼をして言う。


「……申し遅れました、オルマンス民主国の第三王子、エドウィンと申します。救世主様を迎える為の使節団として伺わせて頂きました。こんな所に住んでいるということは、貴方が救世主様、ですよね?」


…まさか、第三王子直々に迎えに来るとは。

そうか、彼は幽閉されていると聞いていた。何でも母親が過保護なんだとか。だから俺は見たことがなかったのか。


結ちゃんはびっくりした顔をしていた。

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