第一章:魔物と少年
「じゃあ、結ちゃんは果実と山菜と、狩りに行ってくれる?思ったより食料が底を早くつきそうなんだ。」
ノクスと過ごし始めて4日が経った頃だった。
たしかに、私達が予想していたよりも早く無くなっている。
何故なのかは明らかで、ノクスが来たからだ。
ノクスが食べるものは私たちと基本は同じなようで、果実や山菜、後は魔物でないもののお肉。
魔物は口に合わないそうだ。
「いつもより少し多めに取ってきた方がいいですね。行ってきます。」
そう言うと、レイさんはノクスを抱えて手をヒラヒラと振る。
これは私の特訓代わりでもあるため、ノクスを連れていかずに行うのだ。
「あ、結ちゃん、MPが結構増えてきて魔物おびき寄せやすいから1/5くらいに抑えながら動いてね!」
そう、最近の私はそこら辺の人より全然MPが多くなっていて魔物をより誘き寄せやすくなってしまったのだ。
だから、先日レイさんに教えて貰って体外に常時放出されている魔力量を抑え込む方法を教えてもらったのだ。
私たちの住む小屋があるのは険しい山の中なので、周りにあまり安全なところは無い。
身体強化などを使いながら、崖や段差を超えつつ採取をして行く。
今日のお目当ては、星雫果、灯火苺、重重葡萄、銀糸ワラビの4種類だ。
「これは…温かいから星雫果ね、こっちは呼吸するように光っているから灯火苺。この子は………おっと、水を吸収するから鉄錆ワラビね。あ!重重葡萄!」
なんて言いながら採取していると、いつの間にか籠いっぱいに入っていた。
少し取りすぎたかもしれない。
「これだけあるんだから、ちょっとくらい食べたって大丈夫…だよね?」
ちょっとずつつまみ食いもしてしまう。
だって美味しいから仕方ない、よね?
そうして、星雫果を1粒口に入れる。
「んん〜!!甘い!濃厚!とろけるよぉ……」
星雫果は、なんだろう、バニラの風味が少しする甘くて美味しい果実だ。
食べると体温を少し上昇させ、基礎代謝などを1次的に上昇させるので、冬山で遭難した時などに重宝されている。
「灯火苺が凄く酸っぱいから、一緒に食べるとバランスがいいんだよねぇ♪」
なんて歌うように言いながら食べている姿は、傍から見たら変な人だろうか。
まぁ、1人だしいいだろう。
そんなことを考えながら、動物を狩っていたその時。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
遠くの方から男の子だろうか、叫び声が聞こえてきた。
「さ、叫び声…?助けに行かなきゃ!」
そうして身体強化を強めにかけ、全速力で駆けつけた先では、ソルトロック・クラブが1人の高貴な身なりをした男の子を襲おうとしているところだった。
ソルトロック・クラブとは、非常に硬い甲羅を持つ蟹型の魔物で、岩塩や山菜、動物などを主食とする雑食。
その甲羅はミスリル製の刃物でしか通らないと言われるほど硬い。
と、図鑑に書いてあった。
男の子はそのソルトロック・クラブ相手に、普通の剣と魔法で挑んでいたようだ。
少し青白い色をした刃渡りだ、なんの鉱物だろうか。
しかし、その男の子も限界を迎えたのか、高貴な服もボロボロになっていて彼自身も凄く疲弊しているように見える。
私は迷わず彼の元に駆けつけ、籠に入っていた星雫果と灯火苺を彼に渡す。
「大丈夫!?それ、同時に食べて!!」
そう言うと、彼はびっくりしたように言う。
「おい!危ないぞ!早く逃げろ!」
「何言ってんの!危ないのはそっちじゃん!早く食べて!」
実は、灯火苺には少しだけ魔力回復が出来るという効果がある。
私は残りの果実たちをマジックボックスに入れ、ソルトロック・クラブと対峙する。
「マジックボックス………!?」
そう後ろで彼は言う。
珍しい魔法だったのだろうか?最初から使えたからあまり分からない。
普段あまり食べないのか、彼は果実をまじまじと見たあと、なんだかんだ食べてくれた。
「おい、そいつは硬いんだ。俺でさえ無理だったのに、女のお前に何が出来る!?」
食べ終わると、そう叫んでいる。
確かに、女の私に……と思われるのも無理はない。
女って大概非力だしね。
ただ、今の私はその辺のやつより非力じゃない自信がある。
なんてったって、あのレイさんの特訓を毎日のようにこなしてきたのだから。
そのお陰で、私は数多くの魔法を取得してきた。
私はソルトロック・クラブに向け杖をかざし、呪文を唱える。
「ホーリーレイン」
そう、あの時レイさんが助けてくれた魔法を使えるようになったのだ。
まさか、私がこの魔法で助けることになるとは思ってもいなかったけれど。
そうしてソルトロック・クラブは討伐された。
「ホーリーレイン、だと?お前は一体……?」
緊張が解けたのか、そう言いながら眠ってしまったので、仕方なく小屋に連れ帰ることにした。




