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私は逃げてみせます。国からも。儀式からも。  作者: まるねこ


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8 彼との約束

私は馬車を降り、いつものように教室へと向かう。


最近、図書室で様々な本を読んで気づいたんだけど、やはり私の記憶にあるイメージの爵位はこの世界でも同じようなものようだった。


公爵から始まり、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、平民という順だった。詳しくはまだ分からないけれど、「公爵が平民と結婚する」なんてことはないみたい。


……と、すれば私は貴族だからいいの?


それも違うような気もする。それに、Sクラスの人たちはどうみてもみんな貴族なんだよね。文具一つとっても高級品で私の持ち物よりも高い。


でも、みんな私に気を使ってくれているような気がする。もっと知識を得ないと何とも言えないわよね。


「ミルロア様、ごきげんよう」

「皆様、ごきげんよう」


私はそう挨拶をして家へと戻っていく。今日は大事な日だものね。私は浮かれ気分で家に戻り、マティに準備をしてもらう。


「ミルロア様、ペリト様がお見えになられました」

「すぐに行くわ」


私は浮かれる心を隠しながらペリト様の元へと向かった。


「お久しぶりです、ペリト様」

「ミルロア、久しぶり。元気にしていたかい」

「はい」


私はペリト様とサロンへ向かった。


ラニャは静かにお茶の準備をし、私たちは席に着いた。ペリト様は優しく微笑みながら私の手を取る。


「ミルロア、学院では大変だったね。あの時、テア嬢を止めきれなくてすまない」

「いえ、私の方こそ、テア様には心配をおかけしてしまいました。テア様は元気でしょうか?」

「ミルロアは優しいね。テア嬢は元気にしているよ。時間が許せばミルロアとお茶したいと言っていた」

「よかったです。心配していました」


私がそう言うと、ペリト様はふっと笑顔を溢している。


この優しい笑顔を見ることができるのが嬉しい。


「ミルロア、欲しいものはあるかい?」


ペリト様は珍しく聞いてきた。さっきラニャがねだれって言っていたよね。


でも、自分から欲しいだなんて厚かましいよね。

でも、ずっと考えていたことがある。

ダメ元で聞いてみよう。


「あ、あの。欲しいものではないのですが……」

「ミルロアが自分から言うのは珍しいね。なんだろう?」

「街に出てお買い物がしてみたい、です」


私が勇気をだして言うと、ペリト様は動きを止めた。


「ん? ごめん、ミルロア。もう一度言ってくれるかな?」

「ま、街に出てお買い物がしてみたいです」


二度目も勇気を出して言うと、やっぱりペリト様はしばらく黙ったまま何かを考えはじめた。やっぱり駄目だったのかな。令嬢ってものは本当に箱入りなのかもしれない。


私が諦めようと思っていると、ペリト様が口を開いた。


「……君の父上に確認を取ってみるよ」

「本当ですか。嬉しい」


私は勇気を出して言ってみてよかったと思う。


嬉しい。

ペリト様と街に出ることができるのね。


たとえ父が駄目だと言ってもペリト様がそう言ってくれたことだけで嬉しくなる。私の望みを叶えようとしてくれたというだけで嬉しい。


「じゃあ、今日はこの辺で。このまま義父上のとこで話してくるから」

「わかりました。ペリト様、ありがとうございます」


今日もペリト様は忙しいのね。


私は立ちあがり、ペリト様をサロンの入り口まで見送る。


ペリト様は私の頭を撫でて父のいる執務室へと向かっていった。


「お嬢様、よかったですね」

「そうですね。でも父が許すかどうか」

「旦那様ならきっと許可をしますよ。ペリト様と一緒ですから」

「……だといいですね」


私はラニャと一緒に自室に戻り、街に出る時の服を探す。


やはり私は今まで外に出なかったので一着も服を持っていないみたい。ラニャがあとで街に出て服を買ってきてくれると言っていた。


街に出るってことは平民と同じ格好をするってことよね?


男爵令嬢はそもそも平民と大差ないんだし、そこまで気にしなくていいのかしら?


なんて考えつつ、ラニャの淹れてくれるお茶を飲んでいると眠くなってきた。


「……なんだか、眠く、なってきました」

「お嬢様、これはいけません。お嬢様はあまり体力がないのですから。すぐにベッドでお休みください」

「わか、り、ました」


私は立ちあがり、ベッドへ向かうところまでは覚えている。どうやらそのまま意識を失ったみたい。




―カタン。


窓の桟に置いてある小物が風で落ちたのかしら。ぼんやりと浮かび上がる意識に抵抗することなくゆっくりと目を開けてみる。


もう、夜なのね。


私は一体どうしていたのだっけ。


周りを見てもラニャの姿はない。寝る前のことを思い出してみる。


「えっと、ラニャと自室でペリト様とのお出かけの話をして、突然眠くなった?」


つい口に出してしまった。誰かに聞かれているとなんだかまずいような気持ちになってくる。


突然眠くなるっておかしいわよね?

私は何かの病気なの?

だから両親もラニャもペリト様も過保護なの?


でも、自分では全く痛みやだるさとかないのよね。

不思議だわ。


体力がなさすぎて充電が切れたように突然眠くなる?

あれ?

充電ってなんだっけ……?


だめだ。考えが散乱して上手くまとまらない。


私は気持ちを落ち着かせるように床に落ちた小物を拾い、再び窓辺に置いて窓を閉める。


体力がないせいなの? それならやっぱり身体を動かして体力を付けないといけないわよね。


私はベッドの周りを歩いたり、ストレッチをしたりして少しずつ身体を動かしていく。動き出して気づいた。私は今、とてもお腹が減っているわ。


どうしようかしら。

このままだと空腹で眠れそうにないし……。


そう思っていると、テーブルの上に水差しとクッキーが置いてあるのに気づいた。とりあえずこれで空腹を凌ぐしかない。水でお腹を膨らませつつ、クッキーを食べてなんとかお腹が安心した感じ。


これ以上起きていると、空腹で倒れてしまうかもしれない。そう思って私はベッドに入り、目を瞑った。


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