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7話 初めての実践授業


翌朝。


「ぅー…」


「そろそろ起きた方がよろしいかと」


「ヨル…もうちょっと…」


「ヨルとは?」


……耳に届く声がいつものものでは無いことに気づき、ようやく意識がはっきりとしてきた。


「おはよう、ルリエナ。起こしてくれたんだ」


「おはようございます。ルナ様。当然です」


1つお辞儀をすると、ルリエナは私から離れる。そして、何やら急いだ様子で部屋を出ていった。


「今、何時…?」


時計に目をやり……しばらく固まった。

登校時間の10分前だ。


「えっ…!ヨル!なんで起こして」


「私は起こしたわ」


ルリエナが居たからか、隠れていたらしい。ベッドの下からヨルが出てきた。

というか起こしたって…知らないもん!起きれてないじゃん!


「遅刻する!」


やばいやばい。編入2日目で遅刻は流石に印象が…それに目立っちゃう!


「もう!ヨル…覚えといてよ!」


「自業自得〜♪」


澄まし顔で言うヨルを睨むも意味は無い。


くそう、ヨルは悪くないから…何も言えないっ


ドタバタと準備を済ませ、私は寮を飛び出るのだった。



 * * *



「…あっぶなかったぁ…」


「ギリギリだったね」


チャイムがなる2秒前、本当に既のところで教室に足を踏み入れた。


結局担任も居て、みんなも席に着いてたから目立っちゃったけど…


「本日は予定通り、実技訓練とする。着替えて外へ出るように」


セイルとひそひそ喋っていると、朝のホームルームが終わりに近付いていた。


実技訓練…?


「それとメモリアさん、貴方の身体測定も行います。私のいる所へ来なさい」


「…?はいっ、分かりました」


それに身体測定…なにか、いやな予感がする。


「ルナは初めてだね。僕が案内するよ」


「あっ、ありがとう!セイル」



…………



着替えて、セイルと合流してグラウンドへ。


「…朝から、気持ち悪い…」


「大丈夫?休むかい?」


「ううん、少し人酔いしただけだから…」


あんなに狭い空間に集まって着替えるとは…

しかも色んな声やら匂いやらが漂ってきて気持ち悪行ったらありゃしない。

あの中に、仲良くなれる人はいるだろうか?


「あっちだよ。ニア先生は優しいから、言われた通りに頑張って」


「…ありがとぉ」


とぼとぼと、担任の元へ歩む。

遠目でもわかる上背で筋肉質、特徴的な紫髪の女の先生。セイルは優しいと言っていたけど未だに第一印象に引きづられている。


要するに少し怖い。


「…来ました」


「はい。じゃあまずは…」


早速、ニア先生はテキパキと動き出した。

あらかじめ用意していたらしく想像よりも遥かに、スムーズに進んでいく。


一般的な体力の測定と…身体的なもの。


「身長は160cm…で、体重が…」


正体がバレないかひやひやしたが、それよりも…体重が増えてしまったことに危機感を感じた。


だってぇ!ご飯が魔族たちが作るものよりも美味しいんだもん!


「その魔道具に手をかざして」


続いて魔力的なもの、そして最もこの学園で重視される『紋章』のことを調べる。


ヴェルトが予め幻術を掛けてくれたのでバレることは無いだろうが、やはりこちらも不安だった。


紋章はまだ使えないということにして、魔力も限界まで抑える。

それでなんとかなるだろ、と適当に言いやがったあいつはいつかぶん殴る。


「魔力は平均値、赤色の紋章ね」


ホッと胸を撫で下ろす。なんとか切り抜けれたらしい。

まだ、心臓がバクバク鳴っている。


「魔術は使える?」


「はい、基礎魔術なら一通り」


私は2年生に編入した。そこでは既に基礎は終え実際に使うようになる。そのための質問だ。


「そう、なら…この後の休憩を終え次第、実技訓練に参加しなさい」


「はいっ」


「…ふふ」


笑顔で答えた私。それを見るニア先生の顔は…どこか、柔らかく見えた。


なんか、不思議な人?


「怖くは無いのかも」



 * * *



放課後。

今日は一日中実技訓練だったから、身体がくたびれている。

依頼のこと進めようかとも思ったけど…どうしよ。


「うーん…」


「なにか悩んでる?」


「…セイル」


セイルも教室に残っていたらしい。というか、気付けば2人きりだった。どうやら皆帰ってしまって戸締りの前に声を掛けてきたということだ。


「いやー…疲れたなって」


「初めてだし、仕方ないよ。うちのは結構ハードだしね」


「その割にはセイル、ぶっちぎりで1番じゃなかった?」


「僕なんてまだまだだよ」


おかしいな。なんの競技でも群を抜いて優秀だったよこの人。

まだ能力は使えないらしいけどあれは…凄まじかったな。


「セイルは…この後どうするの?」


「生徒会で手伝うことがあってね」


「え…セイル、生徒会役員なの?」


「まだ候補生だけど、来月には正式に」


思わず唖然としてしまった。でも同時に、納得した。

この善性の塊みたいな奴にはお似合いだ。


「そっか…」


「やっぱり、なにか困ってる?」


うげ、顔に出ちゃった。


…ここまで心配させて何も無いは少し申し訳ないか。


「じゃあ、教えて欲しいんだけど…」



 * * *



「それ、どーしたの?」


ヨルから声をかけられ、ページを繰る手を止める。

手にしていた本は『勇者と魔王』。1000年前、初めての人魔対戦をモチーフにした作品だ。


情報収集のためにセイルから教えてもらったのだ。勇者について書かれているもので、おすすめのやつを。


「図書室で借りてきた」


「ふーん」


「聞いた割に興味無さそう」


実際その通りで、ヨルは興味無さげに尻尾を揺らしていた。


私も再びページを繰り出した。


「…なるほどね」


それとなく、読んでいるうちに『勇者』という存在がわかってきた気がする。


定義としては単純な人族における『紋章』持ち、ただ歴史を辿るうちに常識では説明のつかない力を持つ者が()()存在している。恐らくそれが…


「…ヴェルト、これを知ってどうするんだろ」


私が潜入した意味も、依頼されたものも、何も分からない。ただ少し、それら考える理由が出来た。











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