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66話 ただいま



「フンフフーン♪よし!いい感じね」


エリシアが、夕食を作り終え、遊びに行った子供たちを呼びに行こうと思ったところで。


「あら……?」


小さな窓から見えて気が付いた。門の辺りに、誰か立っている。

こんな時間にお客さんだろうかと、エリシアは急ぎエプロンを外して、外へ出た。


「まぁ…!」


そして、その青年と2年ぶりに再開するのだった。



 * * *



「ただいま、エリシア姉さん」


「セイル、おかえりなさい」


セイルが、優しい微笑みと言葉を向けた女性。


一目見て、彼女がセイルの憧れであり、この孤児院を経営している「お姉さん」だと理解した。


髪は亜麻色で、一つに結んでまとめている。そして、特徴的な青緑色の瞳。どこか輝きが見えるのは、セイルに似ている点だ。


お姉さんは、驚いたように、しかし嬉しそうにセイルの肩に手を伸ばした。


「もうっ、来るなら言ってくれればいいのに!」


「サプライズだよ。それに、手紙を出しても間に合わないだろうからね」


確かに、ここまで来る距離を考えればセイルの言葉には納得する。


そうして頷いていると、今度は青緑の瞳が私の方へと向いた。


「それで?そちらの子は…?」


「あぁ、紹介するよ─────」


「もしかしてっ!彼女さんかしら!」


「えっ」


あらあらまぁまぁと、嬉しそうな顔を浮かべる「お姉さん」。


思わず、私は一歩後ずさりをする。嫌な予感がしたのだ。


「セイルはいい子だもの。学園に通えば女の子の一人や二人ぐらい…」


「ち、違うって!姉さん!ルナだよ。ほら、手紙で書いた」


「ルナちゃんっていうのね。名前も可愛らしいわぁ」


完全に自分の世界へ入ってしまってセイルの言葉は届いちゃいない。

なんというか、学園というものに変わった偏見でもあるのだろうか。


それでも、頬を赤らめ、セイルに対して言う言葉はどれも本物で温かみを感じる。


セイルの言っていた通りの、いい人だ。


「とりあえず、中に入れてもらってもいいですか?」


だからこそ、ちゃんと知ってもらわないと!



………………………………



「私は、エリシア・リードベルク。改めてよろしくね、ルナさん」


「こちらこそ。招待してくださってありがとうございます」


ようやく一段落。中に入り、友達であることを事細かく説明し終えた。


私自身、この誤解だけは解かなければならないものだ。


セイルにはもっと見合った人がいるはず。少なくとも、私だけはありえない。


エリシアは、少し残念そうだったが仕方あるまい。


「ここまでは遠かったでしょう?」


「えぇ…ですが、それなりに楽しい旅でした」


「それならよかったわ」


バラムとの出会ったり、ロウ爺のご飯食べたり。他にも苦労はあったが間違いなく楽しい思い出になった。


それに、ここらは雪が降っていて冬を感じられるのがいい。


「そうだ、夕食を作っていたの。よかったらルナさんもどう?」


「いいんですか?」


「えぇ、もちろん。大事な、セイルのお友達ですもの」


丁度お腹が空いてきた頃合いだ。ありがたく、厚意に甘えるとしよう。


「セイル、皆を呼びに行ってくれる?セイルが行ったら喜ぶと思うわ」


「分かった」


セイルも嬉しそうに部屋を出ていく。

そりゃあ家族に会えるんだもん。嬉しくないわけがない。


「ちょっと待っててね」


「手伝います!」


「いいのに……ありがと」



 * * *



夕食を終え、一先ず今日は休むことになった私は、ルーシアに部屋を案内されていた。


「ここが客室です。急いで準備したので、至らないところがあれば言ってください」


「ありがとう、ルーシアちゃん。何から何まで助かったよ」


ルーシアは、夕食の時もいっぱい話しかけてくれたから他の子ともいい具合の関係になれた。


お礼、なんて言われても私からすれば貰いすぎなぐらいだ。


「あ、そうだ。まだ渡してなかったんだよね」


手荷物を整理するついでに、王都で買ったお土産を取り出す。


「そんな、悪いですよ」


「いいの。泊めてもらうんだしこれぐらいはね」


「でも…」


断りづらいが断らないと。そういう雰囲気を感じ取った。


しかし、私としても受け取ってもらえないと困るのだ。だからここは…奥の手だ。


「じゃあ…こう!」


「むぐっ!?」


私は一つ、お菓子を手に取りそれをルーシアの口に放り込んだ。


ルーシアは突拍子のない行動に驚いていたものの、咀嚼を始め次第に顔が緩んでいった。


「甘い…」


「でしょう?」


「ありがとう、ございます」


ルーシアは控えめながらも、笑顔でお礼を口にした。満足そうでなによりだ。


「ほら、皆にも配ってあげて」


「はいっ」


お菓子の入った小袋を与えると、ルーシアは慌ただしく部屋を出ていった。

これで少しでもお礼になっただろうか。


「そろそろ寝ようかな。眠いや」


今日はほぼ一日中歩き続けたからだろう。いい具合に眠気と疲労感がやってきている。


私はその感覚に身を委ねて、夢の世界へと飛び立った。





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