63話 いい話ほど邪魔が入る
そして、当日。私とセイルは、王都を発つ前にお土産を買おうと街へ出ていた。
快くこの冬の間居座らせてもらうためにも、ここは慎重にならないといけない。
「セイル、お姉さんの好み教えて!」
「うーん…なんでも喜ぶと思うよ。寧ろ、孤児院の子達にって考えるんじゃないかな」
なるほど。無難なのは焼き菓子か…いや、奮発して砂糖をふんだんにまぶしたやつ!一番高そうなの!
「ルナ!?それは…」
「大丈夫、心配しないで。お金ならあるから」
任務のため、と押し切ってヴェルトから奪い取った支給金だ。使いどころは間違いなく今だ。
お菓子を包んでもらい、お代を手際よく払った。
「…ほんとによかったの?」
「寧ろ私が言いたいよ。ほんとに泊めてくれるんだよね?」
「何度も言ったけど、部屋なら余ってるぐらいだからね」
何度でも確認したいものだ。避難区に居た頃なんて冬場は寒くて仕方なかったのだ。それを思うと、もはや何も怖くない。
「ありがとう、セイル。私を誘ってくれて」
「…僕の方こそ。僕の都合で来てもらって……ありがとう、だね」
互いに礼を言いあって、気付けばただただ楽しいおでかけになってしまっていた。
何気に、セイルとこうやって遊ぶの初めてだったかも……
* * *
乗合馬車でリードベルクを目指して早数時間。
気付けば馬車の中は私とセイル二人きりで、沈黙が場を支配していた。
今までは離れていた分があったからか忘れられていたが、二人で長い時間過ごしていると、嫌でも思い出してしまった。
私とセイルの間に隔てられた壁を。
「……ね、ねぇセイル」
「どうかした?ルナ」
やばい、とりあえず何とかしようと思って話しかけたけど何を聞くか考えてなかった…!
ここは一先ず、旅なのだから…
「リードベルクって、どんなところ?」
「あぁ……今みたいに、よく雪が降っていてね。それと、冬にはお祭りがあるんだ。無事に年末を越せるようにって」
「へぇー……」
北部は魔族の狙いから外れやすい。それは土地の性質的にも、拠点としてもあまり秀でてはいないから。
だから、平和そうなのが聞いただけでもわかりやすかった。
「……」
「……」
またもや、上手く会話が続かず気まずい時間がまた流れていた頃。
馬車が小さい農村の停留所に止まった。
丁度いいし、寝たふりでもするか迷っていたところでセイルが口を開いた。
「……ルナ、ごめん。気を遣わせたよね」
「…!」
それは、謝罪。純粋な眼差しでこちらを見つめて彼は告げた。
「あの日…合同演習が終わった日。僕は否定したけど、ルナを責めるような言い方をしたことを、謝りたい」
「そんな…私は、別に…」
「なんとも思ってない。そうだね。ずっとずっと、気にしていたのは僕のほうだ。そのせいで君を避けたり、君に不快な想いをさせた」
…最近、セイルとは生徒会でもあまり会わなかったし会っても一言二言しか会話は無かった。偶然、忙しいのかとも思ったがそれだけではなかったらしい。
「そんな時に、あの手紙が送られて…丁度いいと思ったんだよ。謝るためにも……それに、もう一度、仲良くなるためにもね」
もう一度、だと…
彼の中ではどうやら私は内心ブチギレでもしているのだろうか。全く、こういうところがセイルらしいんだけどね。
「私、セイルとの友達をやめたつもりないんだけど!」
「…!そっか……そうだったんだ」
「クラスが変わったぐらいどうってことないでしょ?だから今、こうしてるんじゃん!」
そう言って、向かい合う形から隣へと入れ替わる。やっぱり、隣はセイルじゃなきゃ落ち着かないんだと改めて実感する。
セイルも、それを受け入れる─────
お互いに笑いあって、同時に距離が近くなる。そのせいか、少し頬が熱くなってきて……
ガタッ。
「おっとすまねぇ…お熱いところだったか?」
見知らぬ男が、馬車の入り口へ立っていた。




