62話 冬休み
それは、ユノとの何気ない会話中に気付いたこと。
「ルナちゃんは、冬休みはどうするの?」
私、もう帰る家が無いってことに。
* * *
あそこの避難区は既に荒れに荒れて魔族は追い出されて、実家も正直近寄りたくないため本当に行き場がない。
冬休みは全生徒寮まで入っちゃいけないとか聞いてないんだけど!
「うーん…どうしよう…」
「ルナ?何か悩み事?」
「リゼ先輩…」
つい業務中にも頭を抱えてしまってリゼにまで迷惑をかけてしまう始末。
もういっそのこと、皆は逆にどうするのか聞いてみようかな。
「その、冬休みって、リゼ先輩は何か予定あるんですか?」
「帰るわ。家に」
即答だった。予め用意していたかのような答えに正直驚いた。
……………………
「副会長、お時間いいですか?」
「うん?僕に用かい?」
「はいっ、少しお聞きしたいんですけど……冬休みって、なにか用はありますか?」
「僕は…実家に帰るよ。元気な顔を見せておかないとだからね。あぁ、でも何かあったらいけないから…偶には学園に戻るつもり」
なんとびっくり。シオンの実家はこの学園のすぐ近くらしい。
というか、絶対に私のことまだ探してるよね?執念が怖いんだけど!?
……………………
「レインは……冬休みどうすんの?貴方から家族の話を全く聞いたことがないんだけど」
「禁書庫に籠る…つもりだったが、状況が変わった。手始めに黒く染まる本を探したいから力を貸してくれ」
「えっ」
黒く染まった本の精査を実家でやるらしい。冬休み前ぐらいは休ませてよぉ…
……………………
「フェイ先輩、おはようございます」
フェイは廊下ですれ違った。何やら庶務仕事を解決してきたようだ。
「おはよう……って、なんだ?なんか顔色わりぃぞ」
「ちょっと考え事してまして。……フェイ先輩。先輩は、ご家族とはどういう感じですか?」
「家族……って言ったら、弟と妹がいるな。そろそろ帰省の時期だから土産買わねぇと」
知らなかったのだが、兄貴肌だと思っていたら本当に弟妹がいるらしい。
……………………
「ミアせんぱ」
「私も実家。まー、退屈だから学園来たいんだけどねー」
どこから聞きつけたやら。つまらない回答に反してニヤニヤと楽しそうだった。
「……そうですか」
広報を書きながらも素早い返事に、もはや恐怖を感じた。
………………
「ユノは……冬休み、どうするんだっけ?」
「お母さんのところに帰るよ?あっ、後ユステス先生と一緒にお土産買おうかなって思ってる」
聞くとユステスに推薦されてユノはこの学園に編入したらしい。同じ編入生って知って、ちょっと親近感が湧いた。
「そっかぁ…」
皆、ちゃんと予定あるんだ…
帰る場所があって、帰りを待つ人がいる。酷く、羨ましかった。
……………………
トボトボと、肩を落として廊下を歩く。生徒会の面々の予定を聞いて回ったわけだが、皆既に決まっているようだ。
「私は…どうしよう…」
ルリエナに相談すべきか。いや、ルリエナだけならまだしも、ヴェルトと一緒に年越しなんて嫌だ。絶対にお断りである。
「うーん…」
「いた!ルナ」
「えっ…セイル!」
最近は時間が中々合わず、見なかった顔。
変わりなく善意が滲み出てるねぇ…なんだかほっとしちゃう。
「どうしたの?」
「いや、ルナを探してたんだけど…今忙しいかな?」
「ううん、全然大丈夫」
ちょうど悩んでて、セイルの顔を見たおかげで少し気分が晴れたところだ。
つまりは機嫌がいい。
「少し、相談があって……この手紙を読んでくれればわかると思うんだけど」
「えっと……?」
セイルから手紙が手渡される。読めということか。
封を剥がし、軽く内容に目を通していく。
これは……冬休みに帰っておいでという旨。家族からかな。羨ましい。
……ん?何?これ……は……
「私も、セイルの帰省に着いてっていいの?」
「ルナが問題なければ……お姉さんとルーシアがどうしてもって」
「行く!」
即答していた。予定どころか帰る家さえ無い私からしたら助かるなんてもんじゃない。
逃がさまいと、肩を掴んで顔をグイッと寄せる。
「いつから!?どの辺まで!?」
「冬休み2日目から、リードベルク領までだよ。ルナ、近いって」
「分かった!準備しとくね!手土産も!」
本当に助かった。それに、セイルの言っていた「お姉さん」に会えるなんて……楽しみ!




