47話 第1縮小前 露店街エリア視点
「うん、こんなところかな」
開始から30分。特段接敵もなく、準備に集中することが出来た。
粗方、誰が来ても対応できる自信がある。
「そろそろかな、時間的にも…」
時間が経てば経つだけ、中央へと人が集まってくるのだ。私の見立てなら、もう数分もしないうちにこの通り、もしくは市街地エリアを通る者が居るはずだ。
「私も、動こうっと」
待ち伏せというのは、初手の誘導あってのもの。
今回はヨルを使えない。だから、どっちも私がやってやろうじゃないの。
* * *
数は5人…いや、6人か。やけに気配を消すのが上手いのが一人。他は、私と大差無いぐらい。
どうしてこんなにも纏まっている?
バトルロワイヤルじゃなかったのかと言いそうになったが、これも私の境遇によるものだろう。
恐らくは、発現したばかりということになっているからだ。全くもって損な設定…
「悪く思うなよっ!新入り!」
「戦わねぇのか!?」
物騒な。
それに、これは戦いじゃなくてリンチだろう。まぁ…戦略的には間違ってないのだから責める理由はない。
何よりも、こうなる可能性を加味して準備していたのだから。
* * *
ある、露店街へ6人が辿り着いた。
どういうわけか、曲がり角をくねってから例の新入り、ルナの姿が見えなくなった。
どこへいったのかと、目視で探す者、探知の魔術を使おうと詠唱を開始する者。
恥もプライドもない。とにかく最下位にはなりたくないと結託したその者達は容赦もなくルナを探して─────
「あ─────」
それは、探知魔術を使用した者の声。何かを言おうとして、それで、
ドカンと何かが爆ぜる音がフィールド上で鳴り響いた。
* * *
無事命中。一人目がリタイア。
「1つに、安易に敵の拠点に潜り込まない。2つに、敵地で魔術を使わない」
私は、露店街の屋根の上で、様子を伺っていた。上手く罠に嵌ってくれたらしい。
全く、こんなところで戦争中の経験が活きるとはね…
多対1。本来では圧倒的な実力差が無ければ負けるものだ。だが、それを逆転させるのが『策』というもの。
「魔道具の持ち込みが出来なかったから、用意は大変でまだこのエリアしか仕掛けられなかったけど…」
誘いこむことが出来ればこちらのもの。全員が足を踏み入れたのを確認して、私は手元の魔術式を完成させる。
「なんだっ!?」
「おいっ!これじゃ出られねぇぞ!」
遠隔で発動したのは竜巻を起こす風魔術。これにより、露店街の出入り口は封鎖。まずは退路を断つ。
「こんなものっ!」
異能か、魔術かどちらかは分からない。ただ魔力を使った。それこそ狙いだ。
その魔力を、『月食』が奪い取る。
奪った魔力は露店の至るところへ仕掛けた未完の魔術式に送り込まれ、発動する。
ドガァン!!と、地鳴りのような爆発音。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
それと共に、悲鳴が上がっていく。
魔術は時代遅れ、そう言っても昔は人も魔族も殺してきた技術。不意に打たれれば馬鹿にならないのだ。
「三人…かな?」
呟くは倒れた人数。最初に踏んだのを合わせると4人。動けるのは後2人…
「…いや、1人か」
既に目視の範囲で戦意を失っている人影があった。少しトラウマになってしまたかもだが…この程度で無理なら勇者になんてなれやしない。
今のうちにそれを知れてラッキーだったね。
「それで、その1人は…」
どこから来る…?
……………………
「来ない…?」
数十秒、数分、十分…それだけ待っても敵は姿を現さない。もういなくなったのだろうか?だが、竜巻の魔術はまだ…
「もしかして、空飛んでるとか?」
上空を警戒。しかし黒煙が上がっていて視認性が悪い。ここは一旦、風の魔術で視界を良くしておくべきか。
そう思い、警戒は解かないまま魔術を使おうとした…瞬間。
「下っ…!」
足元から魔力の流動が起きた。一気に膨れて、弾ける─────
待ってこれって、私の……
* * *
何が起きた?影は間に合ったらしい。怪我という怪我は無い。
…さっきのは、魔術、だろうか?
それも、私が仕込んでた、火と風を使った爆発の魔術。
「外はどうなってる…」
繭のように私を覆っていた影から一部、穴を開け様子を伺う。
真っ暗だ。多分建屋の瓦礫に埋もれているんだろう。
「それに…」
出てくるのを待ち伏せられている。見えたわけじゃないが間違いない。あれだけの罠を搔い潜り、逆に私を嵌めた奴だ。
一筋縄ではいかないだろう。
「安易に出るのは危険……なら」
足元に、影が巻き付き靴のような形に。そして、影の繭を、今度は足元の方へ穴を開けた。
「目に追えない速度で出てしまえばいい」
地を、蹴った。
それを起点に、私の魔力が呼応して『月速』が、発動する。
本来はノノの『異能』。それを『死追』で模した、劣化版ではあるのだけど─────
「待って速すぎぃぃぃぃ!!!!」
一瞬で繭が瓦礫の山を突き破り、そのまま上空まで。ここまで来てようやく、私は影の繭を解いた。
視界が広がる。辺りの状況を、即座に把握していく。
「やっぱり、爆破。でもなんで…私はあそこには魔術式を書いてない…」
「そりゃあ、俺がやったからな」
空中で体勢を捻じり、防御結界を前面に押し出す。
「今度は魔術なんだな」
衝撃。防御に構わず、声の主は地上に向けて私を蹴った。
まずい。今、どうしてか防御が機能していなかった。どういう原理だろうか。少なくとも魔術ではないのを見るに異能であることは確定…
先に着地!
防御結界、それに加えて衝撃を殺すための『月食』。ここは出し惜しみしている場合ではない。
接地数秒前、私の身体はぶつかる寸前で留まる。
やっと一息。ようやく、空中から降りてきている人影が目に映った。
「中々に手こずらせてくれたな。新入り」
「あんな簡単な策に嵌るなんて思ってもいなかったよ。案外、発現済って発現してるだけで大したことはないんだね?」
挑発を返しつつ、伺う。
エメラルドグリーンの髪に、赤目の青年。
彼は恐らく、初めに追いかけてきた際明らかに強い力を持っていた奴だ。
やっぱり思ってた通り、強い。
「……もう小細工には付き合わない。正面から叩き潰す」
「それはどうかなぁ…」
残存魔力は半分ちょい。ヨル抜きで、私の第一の策は破られてしまっている。
分が…悪すぎる。




