46話 対抗戦開始
─────対抗戦当日。
私達は、学園の体育館に集められた。ここで説明が行われて、そのまま移動を開始する予定になっている。
「遅刻した子はいないみたいで一安心。さあ、説明を始めようか」
エリックが、意気揚々と喋り出す。どういうわけか上機嫌だったが今は突っ込む余裕もない。
私達は、手渡された資料に目をやっていく。
「形式は前も言った通りバトルロワイヤル、最後まで生き残った者の勝利だ。そして…今回は、一つ工夫を加えてみた」
「…工夫?」
「前回は皆一年で、好戦的なものが多かったがこの一年できっと勝ち方を学んだはずだ。それゆえに…」
資料をトントンと指さしてその工夫の内容を口にする。
「範囲結界の魔道具を用意した。一定時間ごとに縮小するもので、最終的には結界が消える。…そして、この結界の範囲外に出た者は敗退とする」
頭を抱えたくなったのは言うまでもない。
…………
せっかくの対策が1から練り直すことになったわけだが…まぁ、皆一様に悩んでいるみたいなのでヨシとしよう。
エリックは、何故かより楽しそうに説明を続ける。
「結界の縮小はあらかじめ順番があって、なおかつ縮小前には中央時計台から放送が行われる。聞き逃さないようにね」
さらっと大事なことを言うの、やめてほしい。時計台…時計台……ここか。
資料には結界範囲であるフィールドマップが載ってある。これはかなり有益な情報だ。
多分…最初は皆時計台を目指すんだろうな。
「まぁ、説明はこれぐらいかな。何か気になることはあるかい?これが最後のチャンスだ」
「………」
皆一様に、黙り頷くのみ。間違いなく、初日の時を超える緊張感が場を支配していた。
「ないみたいだね。それじゃ……各自、隅に用意した魔法陣に立って」
そんな空気感でもエリックは構わずに指示を出す。私達は一人ずつ、順番に並んでいき…
最後の、ルリエナが立ったところで魔法陣が光り出した。
転移の魔道具。しかも随分と大規模なもの。
私の隣に立っているユノが大興奮してるよ…
「皆、全力で頑張って!行ってらっしゃい!」
エリックの一言、それに伴い視界が一瞬で暗転して─────
* * *
視界が開けると、眩しい日差しが差し込んできた。
思わずまた瞼を閉じてしまう。
「まぶしっ……ここは…」
今度は同じ轍は踏まないように、ゆっくりと瞼を開く。
視界に入ってきたのは、喧騒が想像出来る、派手な装飾が施された露店街。
周囲の気配に気を配りつつ、露店を巡る。
今は対抗戦中だからだろう。どこにも人はおらず、どの露店ももぬけの殻であった。
不思議な感覚だ。
「…初期地点としては、悪くはない」
配置される可能性は5箇所。
市街地、森、湖、露店街、地下水路。
正確には、露店街自体は市街地内にあるのだが、かなりの大きさであることから分けて見られている。
「中央寄り、何よりも…ここなら隠しやすい」
正確な結界縮小範囲は告げられていない。が、流石に隅の方になることは無いはずだ。
中央に寄っている、時計塔に近ければ近いだけ有利であると私は判断している。
「そのうち…私狙いの人が来るはず。そうでなくても時計塔に人が来ないはずが無いもの。だったら…」
このバトルロワイヤル、生き残ればいいと言われているが裏を返せば人を減らして最後のひとりになればいいというわけだ。
ならば、発現したばかりの私が狙われるのは必然だろうし…私も、積極的に人を減らしていくべき。
「とっておきの、おもてなしを準備しておこうかな」
* * *
「…ここは…」
ユノは、手元のマップから自身の居る場所の把握に努めた。
まず、目に入ったのはだだっ広い湖。対岸が見えない、走って回るのに1日以上かかりそうな。
「み、湖エリア…」
恐らくは今回の対抗戦で最も初期地点としても、経過地点としてもよくないエリアにあたる。
何か意図を感じて仕方ないが、とにかく先へ行かねば。
「縮小エリアはどこを中心にするかは言われてないけど…多分、真ん中よりになる、よね」
最悪はどこへでも移動できる場所が好ましい。だったら、目指すは一カ所のみ。
「時計塔…」
ユノは、ゆっくりと前を見据え…目的地へと走り出した。
* * *
ルリエナは、初動から走る…否、逃げ回ることになっていた。
最悪なことに、クラスの名前も知らない奴と同じ森エリアへと転移させられたのだ。
カモと思われ追われている、というわけだ─────
「待ちやがれぇっ!」
「…そろそろ、いいですかね」
別にその場で昏倒させることは出来た。だがそれをしなかったのは…
学園に、実力を知られないため。
ルナはどうやら使わない方法を考えていたみたいだが、ルリエナは違った学園の仕込んである魔道具の位置を把握し、異能を使って阻害する。
そうして初めて、本領を発揮した。
「ぃぃ…!隙ありぃ!!」
「何をのろのろ動いている。愚図」
女だと、発現したばかりだと舐めてかかる馬鹿には丁度いい薬になるだろう。
真っ直ぐ伸ばされた手の関節を逆にねじ曲げ、呆気にとられている顔に、躊躇のない蹴りを入れ込む。
「…1人目…はぁ…」
人数は全体で20人。まだまだ、先は長そうだ。
その想いが、溜息となって溢れ出た。その時────
「あ…?俺以外にも、ここに転移したやつが居たんだな?」
厄介な橙髪が、目に映った。




