25話 兄妹の再会
「凄かったですね…!」
興奮収まらぬと言った様子でルーシアが呟く。
正直、私もあそこまでのものだと思ってもいなかった。
「うん…私も魅入っちゃった」
内容は、先日見たヨハンの記憶とは別もの。途中までは綺麗に英雄として着飾られた物語だったのに、最後の演出と演技の力強さで全てを持っていった。
これは確かに、学園祭のメインイベントにもなるだろう。
「最後の演出!何が起きてるのか分かんないのに、何が起きてるか伝わってきて!それにそれに!役者さん達の演技も…」
「めっちゃ分かる…!」
瞼を閉じればあの光の流動が今にも思い出せる。それほどに脳裏を熱く焼き付けたのだ。
「でもあんな演出、どうやって…」
「あれは、最新の魔道具なんだ」
聞き覚えのある声が突然耳に入り、思わず肩をビクつかせる。
そうして、声の主の方へと振り返る。
「セイル!」
「やぁルナ。劇は楽しめた?」
私とルーシアの探し人。セイルだった。
ルーシアも夢中になって語っていたところで、兄の存在に気付き目を輝かせた。
「お兄ちゃん!」
「ルーシア?」
再会。ルーシアはセイルに飛びつくように抱き着いた。
「どうしてここに?」
「ルナさんが連れてきてくれて…えっと、来ちゃダメだった?」
「1人じゃないんだろう?お姉さんは?」
「いるけど、馬車で寝てると思う…」
「そっか、またお礼を言わなきゃだね」
…うわ、なんか…いつものセイルではあるんだけどなんか…家族の前だけで見せる感じの顔してる気がする!私ここにいていいのかな…?
「ルナ、ありがとう。久々に家族に会えて嬉しいよ」
「ううん、セイルの力になれたなら、よかった」
素直に礼は受け取っておくとして…
ルーシアが今か今かと待ちわびたような表情になってきてるし、やっぱり私はここいらで抜けようかな。
「ごめん、私他の仕事が残ってて…行ってもいいかな?」
「そっか…この礼はまたどこかで」
「ありがとう!ルナさん!」
ふふ…いい笑顔。 私の方が元気を貰っちゃった。
午後からも張り切って、頑張るぞー!
…………
………
……
…
* * *
「皆、よく頑張ってくれたね」
シオンが労いの言葉を口にする。既に学園祭の1日目は終わり、片付けを終えたところだ。
「はい…」
「「…」」
私とユノは意気消沈、セイルだけが辛うじて返事を返した。
「あれれ?セイル君以外、随分と疲れてる?」
「ルナ、ありがとうね…私の分まで」
「しょーがねぇよ。舞台後にトラブルがあって、手伝ってもらったんだからな」
ミア先輩は相変わらず元気だし、礼を言うリゼ先輩は顔色が昨日よりも酷い気がする。フェイ先輩はどこかやり切った顔をしている。
いや、私らだけじゃなくて先輩方も手伝ってたよね…?昨日もだったけどなんでそんなに元気なの…?
経験の差なのかな?
「ふふ、皆、本当にありがとう。無事に学園祭を開催出来ているのは皆の働きあってのものだ。会長に代わって、お礼を」
にこりと微笑むシオン。対してフェイが1歩前に出た。
「堅っ苦しいぞ、シオン。とりあえず…今日は終わりでいいんだろ?」
「…あぁ、そうとも。寮に戻って休んでくれて構わない。明日も同じように頼むよ」
「だってよ。ほら、お前らはさっさと帰った帰った」
「…え?」
私たち、2年生組へ向けての言葉。どうやら私たちの疲労具合を見ての行動だったらしい。
「ありがとうございます、フェイ先輩。」
「おう、気にすんな!」
「いつものカッコつけねー」
「うるせぇっ!」
何やら意図が他にもありそうで気になるものの、疲れているのは確かだ。ここはお言葉に甘えよう。
まさかあんなことが起きるなんてね…
「行こうか、ルナ、ユノ」
「うん」
「はいっ」
セイルに続いて私、ユノも生徒会室を後にするのだった。
学園祭1日目は幕を閉じた。
* * *
「今日は、結局一緒に回れなかったね」
「はい…」
寮へと戻る道中、私はいつものようにユノと他愛ない会話を交わす。
こうして生徒会を終わりに一緒に帰るのも恒例になってきた。
「あんなに忙しいとは思わなくって…誘ったのにごめんね?」
「いえ…明日こそはっ、一緒に回りたい…な」
互いにどこか疲れていて、声に覇気は無いもののユノからは強い決意を感じる。
私もそう思うし、もっと頑張らないとだね。
「そういえば…私はフェイ先輩らと動いてたけど、ユノは1人なんでしょ?大丈夫そう?」
「そこは…うん、大丈夫。なんとかなってる…といいんだけど」
不安そうな答えはいつものことだ。
明日こそ、私は約束を守らなければ。
「私、手空いてることの方が多いからさ、困ったことがあったら連絡して。明日こそは手伝うから!」
「無理しなくていいよ?」
「…無理したいの。だって、友達じゃん!」
「!」
あれっ、今ちょっと恥ずかしいこと口走ったかも…?




