16話 目標
へぇ、人によって付け合せのものが違うんだ?
私のはお芋の揚げ焼きだけどセイルのはシンプルなコーン。
ちょっと当たり外れがあって面白いね。
私が呑気にお肉を頬張っていると、フェイとセイルが楽しそうに話す声が聞こえた。
「それにしてもよぉ、よくあの会長に認められたな!セイル」
「認められたか……分かりませんが、努力が実ったみたいで嬉しいです!」
「そうかそうか!今までの分も加えてしっかり可愛がってやるからな、食え食え!」
「はいっ!」
あっちは楽しそうだねぇ。やはり教育係ということもあってかとても仲がいいみたい。
ふむ、このタレ少し甘くもあるのか。砂糖とか入れてるのかな?
「ねぇ聞いてよぉユノっちぃ」
「えと……はい」
「でさー、顧問もさぁ、会長もシオンもぉ」
「…………」
対してこちら側、ミアの愚痴を延々と聞かされるユノ。ひたすらに可哀想だしそろそろ助け舟でも出そうかな…
モグモグ……ゴクリ。よし、お皿が綺麗になったね。
次は……
「なぁ、ルナ。ちょっといいか?」
私がメニューを見ていると、フェイの視線がこちらの方へ。
なんだろ……?
「そのな……言いづらいんだが……」
フェイは少し視線を彷徨わせ、やがて……私の前に積まれた大皿の山に行き着く。
そして言った。
「流石に食べ盛り過ぎないか……?」
そう悲壮感のある声で。
でも私からしたら、これはいつもの量よりも少し多いぐらいだし、なにより……
「……まだ10もいってないですけど?」
人のお金なんだしこういう時にしっかり食べなきゃね!
青い顔が更に青くなったのは言うまでもない。
* * *
そうして肉を食べ、果実水を飲み談笑する。
時間が過ぎていく中、ハッと思い出したようにフェイが声を上げた。
「そろそろいい頃合いだなぁ…なにか目標……そう、『勇者』でいるからして持っているであろう信念を聞きたい」
「出たよ熱血」
その言葉にすぐさま返したのはミアだった。どうやら、もう何度もこれを聞いてきてるらしい。
「いいだろ別によぉ、お前だってなんだかんだ聞きたいだろ?ネタになるし」
「……ソンナコトナイヨ」
「ま、こいつは放っておくとして……ユノ。まずはお前からだ。ちゃんと考えてきたか?」
「!」
急に名指しされたからか、食べる手が止まりビクリと肩を揺らした。
「わ、私ですか…?」
「あぁ、前の時は何も言えなかったからな。一学期生徒会で過ごしているんだ。何か無いのか?」
「えっと……あのぅ……」
あちらこちらに視線を彷徨わせモゴモゴと口篭る。そして最終的には、カチコチに固まってしまった。
「…おーい、ユノ。大丈夫か?」
「アノアノエット」
「……ダメそうだな。ま、また聞かせてくれや。次、セイルはどうだ?」
気まずそうに方向転換。セイルへと矛先が向いた。
セイルはユノとは違い、ハキハキと自分の想いを語り出した。
「はいっ、僕は……もう誰1人、争わなくてもいい世界を作りたい。そう、願っています!」
まるで夢物語のような、そんな願い。ただ、彼の目から本気でそれを言っていることは明白で……
皆、気圧されて黙ってしまった。
「……あの?」
耐えきれずかセイルが困惑を浮かべて、ようやくフェイが口を開く。
「いいじゃねえか」
ただ一言。しかしその言葉には羨望と、純粋な賞賛。
フェイの人柄を表している一言にも聞こえた。
「その目標に向けてどうするか、それはこれからだが……いい目標だ。頑張れよ!」
バシィン!!!と、セイルの背中をフェイが勢いよく叩いた。
セイルはフェイからの言葉に、少し照れつつも嬉しそうである。
なんか、いいなぁ……あの感じ。
正に理想の先輩?いや、兄貴分的な?正直憧れる。
「さて……最後、ルナは?何かあるか?」
悠長に考えている場合じゃなかった。
最後、だもんね。2人が喋ってる間に考えとくべきだった……!
何かあるかなぁ…?私はそもそも『勇者』ですら無い訳で、魔族だし。
「…あ」
「お、あるのか?」
「はい、えっと──────────」
* * *
「ご馳走様でした!フェイ先輩」
「はは……構わねぇよ……大丈夫だ」
是非ともこれからもフェイ先輩とは仲良くしていきたいなぁ…
「ルナ、ほどほどにね?」
「なんのことー?」
「とぼけないで、先輩が普段じゃ見れない顔してるから」
延々と自身の空になった財布を見つめては虚空を見つめる。フェイはひたすらにそれを繰り返している。
うぐぐ……確かに、少し調子に乗っちゃったとは思うけど……
「あはは!おもろー!筋肉まで萎んでない?」
「っ!ミア!それだけは、ねぇ!」
「ウケるんだけど!一気に元気になった!」
ミアは少しテンションがおかしい。散々愚痴ってスッキリしたんだろう。お陰でユノがちょっぴり元気なさそうだけど。
「はぁ…ったく。まぁいい。これも後輩と仲良くなるためだしな」
「フェイ先輩ならこんなことしなくっても…勝手に好きになりそうですけどね」
本心だ。私もあんな先輩なりたいと、純粋に憧れた故の発言。だったのだが…
「なんだっ、ルナ!もしや俺にほれ」
「そんな訳ないでしょ。お世辞に本気にならない」
フェイ先輩には、思った通りには伝わらなかったらしい。ミアのツッコミが無慈悲で思わず笑ってしまった。
「だぁー!!ちげぇっての!」
「うそつきぃー」
「えっと…先輩としては、尊敬してますよ?ねっ、セイル!」
「えっ、僕っ!?」
「やーい、後輩に気ぃ使われてやんの」
「ミア!お前覚えとけよ…!」
あー…楽しいな。この時間が、ずっと続けばいいのに。
「ねぇセイル」
「何、ルナ?」
「…私達が、先輩になったらまたやりたいね」
「いいね!それ」
この時の私は…潜入中ということも忘れて、ただ楽しさに溺れつつあった。
────だからだろうか。
夜闇に、小さなシャッター音が響いたことに気付けなかったのは。




