異82系統 イヴヤ劇場〜マンデン茶屋〜クオマ沢〜トゥドゥルキ操車所
2024年10月2日にカクヨムで公開したものです。
日曜日、夕方五時。
バスの車内は制服姿の女子高生で混雑していた。
今日は学校は休みのはずだが、部活か何かがあったのだろうか。
「次の新曲どんな感じのにする?」
「やっぱりスピカちゃんみたいな可愛らしいのがいいよね〜」
「おい先輩、国王をちゃん付けで呼んだら失礼だろ!」
「でも反対に、カッコいい系の歌もアリかも?」
「それならダンスで魅せていくスタイルにしてみたり……」
会話の内容から推測するに、どうやら彼女たちはアイドル活動をしているらしい。
これらも全ては天才アイドル天川スピカの影響によるものに違いない。
まあその当の本人はアイドルから国王に転身してしまったけれど……。
と、どうでもいいことを考えていたら次の停留所が見えてきた。
待っているお客さん……。お客さん? ともかく、何かしらが立っているのが確認できたので、ゆっくりと減速して停車。
前扉を開けると、乗り込んできたのは頭が鳥で上半身は裸の男性(?)だ。
しかも肩にはウサギを乗せている。
「ふぅ、間に合ってよかったぜ」
「まったく。あれだけ忠告したのに、どうしてあの蜘蛛にちょっかいを出したんですわ?」
いやいや、鳥人間もウサギも普通に喋るんかい!
ツッコみたいところは山ほどあるが、今指摘するべきはこの二点。
「あの〜、お客様。服を着ていない状態でのご乗車はご遠慮頂きたいのと、ペットの持ち込みはケージかケースに入れて頂く必要があるのですが……」
怒らせないようやんわりと告げると、鳥人間は「やっぱダメか」と言いながら笑った。
「そりゃそうだよなぁ。呪いのせいで装備したくても出来ないっていう理由があるにしろ、見た目は完全にただの変態だもんな」
「自覚があったんですわ? あと、あたしはペットじゃないですわ!」
そ、そうだったんですわ。失礼致しましたですわ。
ウサギの機嫌は損ねてしまったようだが、とりあえず鳥人間には納得してもらえた様子。
「んじゃ、乗るのはやめだ。驚かせて悪かったな!」
「申し訳ございません。またのご利用をお待ちしております」
鳥人間が踵を返してバスを降りる。
「発車します」
私は前扉を閉めると、何事も無かったかのようにバスを発進させた。
高校生アイドルのみんなが話に夢中になってくれていたおかげで、上半身裸の鳥人間に気付かなくて本当に良かったよ。
一歩間違えたら彼女たちの絶叫が車内に響き渡っていたかもしれない。
にしても、なぜ日曜の夕方に鳥人間とアイドルが邂逅した?
アイドルはまだしも、鳥人間の方は深夜っぽくないですか?




