異79系統 カルコッタ村〜サラスティア湖北自然公園〜サッパビア温泉〜ロシド村役場
2024年9月4日にカクヨムで公開したものです。
『次はラルハイト遺跡。王国騎士団からのお知らせです。最近、冒険者による遺物の無許可持ち出しが増えています。正式な許可無く遺物を遺跡の外に持ち出すのは犯罪です。絶対にやめましょう。また、そのような行為を見かけた際には騎士団まで報告をお願い致します』
私が車内放送の操作ボックスのボタンを押して次の停留所を案内する自動音声を流すと、後方の二人掛けの座席からお客さんの会話が聞こえてきた。
「ダイレクター、そろそろ到着しますので起きてください?」
「ん、んぁ……。あと五分、むにゃ……」
「ちょっと。寝ぼけてないで、目を覚ましてください。このバス本数少ないんですから、乗り過ごしたら戻ってこられませんよ」
降りるバス停が近づいてきたというのに、未だ眠ったままの少年に腹を立てたらしい。
彼の隣に座る少女が苛立った様子で、やや乱暴に降車ボタンを押した。
『次、停まります。バスが完全に停車するまで、席を立たないで下さい』
「大体、ダイレクターが言い出したんじゃないですか。あの遺跡のダンジョンは地下鉄の遺構の可能性があるから調べようと」
少女に体を揺さぶられて、ようやく少年がぱっちりと目を覚ました。
少女の方を向くと、おかしなポーズをしながら言う。
「ああ。あれは間違いなく、千年前に繁栄した古代文明を解き明かす手掛かりとなるだろう」
「……古代文明の調査をすること、それ自体は我々の活動にも有益なため反対はしませんが。その当時の勇者である異世界人が今も生きているという仮説の証明には繋がらないのでは?」
「ふっ。ジュライもまだまだ甘いな」
少年と少女の会話の内容はかなり気になるものだったが、ここでバスは停留所に着いてしまった。
「ラルハイト遺跡です。ご乗車ありがとうございました」
後扉を開けると、少年と少女は席から立ち上がった。
「では、遺構へ行こうか、ジュライ」
「それ、ダンジョンの中ではやめてくださいね? あまりの寒さに天井が崩落しかねませんので」
二人が降りたのを確認して、扉を閉める。
「……発車します」
『次はサラスティア湖北自然公園。バスのすぐ前や後ろの横断は非常に危険です。バスの発車後、左右をよく見て横断しましょう』
地下鉄が存在したという、千年前の古代文明。
そして、今も生きているという、異世界人の勇者。
もし、あの少年が言っていたことが事実だとするならば。
先日の聖域での出来事を思い出す。
「マルメラーダさんなら、何か知ってるのかな……?」
私はハンドルを握りながら、恐ろしい裏の顔を見せた後輩の姿を思い浮かべていた。




