異76系統 異世界車庫〜(直行)〜メグ廊
2024年8月7日にカクヨムで公開したものです。
クールビズが社会的に定着したことによって、多くのバス会社で路線バス運転手も夏場は制帽を着用しなくても良くなってきた、というのは普段からバスを利用する方ならご存知だろう。
だが近年はそれに加えて働き方改革の一環として、『革靴ではなくスニーカーでもOK』や『日差しを遮るためのサングラスの着用を認める』といったルール緩和が一部のバス会社で進んでいる。
そしてここ、埼京交通バス異世界営業所でも(異世界なので東京にある本社とは連絡していないが)今年からスニーカーやサングラスが許可されることになった。
所長の「別にいいんじゃない?」という、適当な一声で。
「おはようございます」
私が営業所に出勤すると、はやてがこちらを振り向いて手を上げた。
「おうはこび、おはよう」
いつものように、軽い挨拶を返すはやて。
しかし、彼女の恰好は普段と違った。
「えっ、何それ……?」
「何ってなんや?」
「いや、だって」
私は苦笑いを浮かべつつ指を差す。
はやては早速、サングラスを掛けていたのだ。
それ自体は会社が許可しているのだから、そこはいい。そこはいいのだけれど……。
「だってそれ、見た目ほぼパーフェクトヒューマンじゃん」
ここまでどうにか我慢していたが、堪えきれず「あはは」と笑ってしまう。
そのサングラスはもう、形が完全にパーフェクトヒューマンのやつだ。
すると、はやては「誰がパーフェクトヒューマンやねん!」と怒った。
きっと自分では似合っていると思っていたのだろう。
ポカポカと叩いてきたので、私は「ごめんごめん」と謝る。
しばらくして、トランセが出勤してきた。
「おざーっす。……えっ、どうしたんすか?」
トランセもまた、サングラスを着用していた。
靴も動きやすそうなスニーカーを履いている。
もちろんルール上は何も問題無い。
しかし、スーツっぽい制服にサングラス、スニーカーという恰好を見ると……。
「トランセさん、『闘走中』のハンターみたい」
「ジャケットとネクタイしてる時点で、もう絶対狙ってるやろ」
ハンターを連想してしまって、二人して大笑い。
「いやいや、アタシが何を狙ってるって言うんすか。これは営業所ん中が寒いから着てるだけっすよ。ってか、ハンターって何すか?」
日本のテレビ番組など知る由もないトランセは、困惑した表情で首を傾けていた。




