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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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78/202

インターバル ゴーレム使いの魔女とお茶会

2024年5月29日にカクヨムで公開したものです。

 2024年4月から、働き方改革関連法によってバス運転手にも勤務間インターバル制度が導入された。

 この制度の内容はインターバルというその名の通り、終業時刻から始業時刻の間に最低9時間の休息時間を確保するというものだ。


 今はその休息時間。

 私は仕事帰りにカフェに立ち寄り、ゴーレム使いの魔女こと小松しほりさんとお茶をしていた。


「沢山《さわやま》さんは、この世界にはもう慣れた?」

「まあ、はい。なんだかんだで、もう一年以上経ちましたからね」

「そっか、一年……」


 470年以上もこの世界で生きてきた小松さんにとっては、異世界生活二年目の頃の記憶や感覚など、もう残ってはいないのだろう。

 遠い目をして、ぽつりと呟く。


 感情が抜け落ちた、虚ろな表情。


 そんな小松さんの顔を見ていて、ふと気になることが思い浮かんだ。


「あの、小松さん。小松さんは日本に帰りたいって、思ったことありますか?」


 私は以前、『日本に帰る方法がある』と幽霊の女の子に告げられた。

 その時の私は、帰りたいと明確に思えなかった。


 いざ帰れると知ってしまったら、帰りたいという気持ちに揺らぎが生じてしまったのだ。


 まだ一年しか暮らしていない私ですらこうなのである。

 それなら小松さんは、一体どうなのだろう?


 半分相談を含んだ問いに対して、小松さんは静かに考え込む。

 そしてしばらくの沈黙の後、コーヒーを啜ってから答えを口にした。


「覚えてない。私が帰りたいって思っていたのか。日本がどんな場所だったのか。何も」

「そ、そうですか……」

「でも、一つだけ言えることがあるとするなら。あなたは早く日本に帰るべき」


 真っ直ぐにこちらを見つめながら、はっきりと言い切った小松さん。

 ゴーレム使いの魔女の虚ろな瞳に、わずかに光が戻っている。


「どうして、ですか?」


 なぜ小松さんは、私が早く日本に帰った方が良いと思ったのだろうか。

 理由を聞きたかったが、小松さんが答えてくれることは無かった。


「とにかく、帰るべき」


 仮に帰る手段が目の前にあったとして、私は日本に帰る選択をするのか。

 今の私には、まだ分からない。


 けれど、小松さんの『あなたは早く日本に帰るべき』という言葉は、深く胸に残った。

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