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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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77/202

異68系統 王立競技場〜(直行)〜ファチュー本町

2024年5月22日にカクヨムで公開したものです。

 夕方四時過ぎ。

 今日は王立競技場で馬の獣娘によるレースが開催されていたため、直行シャトルバスは帰路に就く人でごった返していた。


 車内からは悲喜こもごもの感想が聞こえてくる。


「いやぁ。やっぱりニシカワブロンズは強かったなぁ」

「ぶっちぎりだったもんね。あれはエグかったわ」


「俺の百万円が吹っ飛んじまった……。どうしてくれんだよアルタイルプレイズ!」

「落ち着け。アルタイルちゃんのせいにするな。そもそも勝ちたいんだったら、どうしてそんな大穴に賭けるんだよ」


『ご乗車ありがとうございました。次は終点、ファチュー本町。お忘れ物ございませんようご注意下さい』


 数分後、終点に到着。

 扉を開けると同時、ぞろぞろと乗客が降りていった。


 全員が降りたのを見届けて、扉を閉める。

 それから私は運転席から立ち上がると車内確認を行った。


「よし、大丈夫そうかな」


 座席に忘れ物や落とし物が無いことをチェックして、再び運転席に戻る。



 折り返しで王立競技場まで運行し、再びファチュー本町行き。

 すでに競技場は閑散としていて、バスを待つ人は居なかった。


 しばらく待機した後、発車時刻になったので扉を閉めようとした、その時。

 遠くから走ってくる人の姿が見えた。


「ファチュー本町行きです」


 車外放送スピーカーでアナウンスしつつその人の方を見遣る。


 時間ギリギリで乗り込んできたのは馬の耳と尻尾の生えた少女だった。

 もしかして、さっきのレースに出てた子かな?


 それから一人掛けの席に座った馬の少女は、終点に着くまでの間、がっくしと項垂れて床を見つめていた。


『ご乗車ありがとうございました。次は終点、ファチュー本町。お忘れ物ございませんようご注意下さい』


「ありがとうございました、終点ファチュー本町です。……お客さん?」


 その後。終点に到着し扉を開けるも、馬の少女はなかなか席を立とうとしない。

 どうしたのかとミラー越しに様子を窺っていると、馬の少女が床から何かを拾い上げた。


「あっ、もしかして何か落ちてました?」


 車内確認の時に、気付かずスルーしてしまった落とし物でもあっただろうか。

 私は運転席を立って、馬の少女の元へと向かう。


 すると彼女が持っていたのは、小さな紙切れだった。

 先ほどのレースの馬券。


 そこには数字と共に名前が印字されていて。

 どうやら、彼女を指名した単勝馬券だったらしい。


「私、みんなの期待に応えられなかった……。勝ってみんなに、喜んでもらいたかったのに……」


 そう言って、しくしくと泣き出してしまう馬の少女。


 う〜ん、どうしよう。早く降りてほしいんだけど……。

 流石にこの状態で追い出すわけにもいかないので、私はそっと声を掛けることに。


「私は仕事中だったのでレースは見てませんけど。でもお客さんの頑張りとかその想いは、きっとファンの皆さんにも伝わってると思いますよ。だから次、一着取りましょう?」

「こんな私なんかに、一着なんて取れません……」

「きっと取れますよ。だってお客さんは『賞賛される一等星』ですよね?」

「はっ……!」


 どうやら私の言葉が響いたらしい。

 馬の少女が俯けていた顔を上げる。


「ありがとうございました。すみません、すぐに降りますね……!」


 元気を取り戻したようで何より。


 さて。

 予想外の出来事で時間を食ってしまった。


 私は運転席へと向かい、急ぎ通常業務に戻った。

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