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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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76/202

異67系統 シャクリャギ町〜ヤミアシータ町〜イノーボザッキ灯台〜ピナリ港

2024年5月15日にカクヨムで公開したものです。

 新人のトランセは今日、初めて一人で営業運行を任された。

 無意識のうちに、ハンドルを握る手に力が入る。


「よっしゃ、行くぜ」


 気合を入れ直すように呟いてから、前扉を開ける。

 続けて、車外放送スピーカーで待っているお客さんに向けてアナウンスする。


「お待たせしました、ピナリ港行きです」


 覚えたての丁寧な言葉遣い。ちゃんと出来ていただろうか?

 はこび師匠がいないから、たとえ間違えていても誰も指摘はしてくれない。


 早速、女性が一人が乗り込んできた。

 耳が長い。エルフだ。


 トランセは運賃箱の硬貨投入口を手で塞いで、エルフの女性に問いかける。


「六十五歳以上の方は運賃が割引になります。年齢が確認出来るヤツ、なんか持ってるっすか?」

「あっ、えっと。これ、とか……?」


 女性がポーチから小さな札取り出す。

 遺跡調査の免許証。


「ちょっと見せてください」


 年齢の欄を確認すると、303と記載されている。

 人間の年齢に直すと三十歳くらい。だが、この会社では長寿の他種族であっても年齢通りに取り扱うルールだと教わった。


 トランセはボタンを操作して、運賃の設定を変更。

 それから硬貨投入口から手を離して、どうぞと手のひらを差し向けた。


 エルフの女性が110ゴールドを投入すると、『ピンポーン』と精算完了の電子音が鳴る。


「これでいいの?」

「大丈夫っすよ。んじゃどっか空いてるとこに座ってください」


 すでに発車時刻を迎えていたので、女性が着席したのを確認しつつ、前扉を閉めてバスを発進させる。


『発車致します。お掴まり下さい。本日も埼京交通バスをご利用いただき、誠にありがとうございます。この車は、異67系統ピナリ港行きです。次はムオミッジ坂。お降りの方はブザーでお知らせ下さい』



 トランセはその後、途中の停留所でお客さんを乗せたり降ろしたりしながら、なんとか無事に終点まで運行を終えた。


 まだまだ接客面(特に言葉遣い)に関しては改善の余地があるトランセだったが、運転技術に関しては先輩たちと遜色のないレベルになっていて。新人としては上々のデビューだと言える仕上がりだった。

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