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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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72/202

教習車(高速バス) はやてとオクトーバー

2024年4月17日にカクヨムで公開したものです。

 時速80キロで交易路を疾走する高速バス。

 そのハンドルを握っているのは新人運転手のオクトーバーだ。


 運転席の左斜め後ろの席からオクトーバーの姿を見守っていた遠町《とおまち》はやては、感心した様子でうんうんと大きく頷いた。


「これはもうバッチリやな。明日から路線教習でもええくらいやわ」

「いやいや、それはまだ早かですって」


 はやての冗談交じりの独り言が聞こえていたらしく、オクトーバーが苦笑しながら謙遜する。

 それでも全然ふらつかないのだから、本当に路線教習に出しても問題ないレベルだ。



 出発から二時間が経ったタイミングで、休憩のために交易路沿いにある食堂兼宿泊所(サービスエリア的な施設)に立ち寄った。


 二人で車外に出て外の空気を吸う。


「ぷはぁ〜。ようやく一息つけたけん」

「長距離運転の時はこうやって肩の力抜かんと、身体も神経も持たんからな。休憩は大事やで」

「そげんですねぇ」


 はやてはただ座っているだけだが、流石に何時間もとなるときつい。

 ぐーっと身体を伸ばして、溜まったコリをほぐす。


 それからはやては、雑談がてらオクトーバーに気になっていたことを質問した。


「そういえばオクトーバーって地方出身なん? なかなか特徴的な方言で喋るよな?」


 訊かれてオクトーバーは、こくりと頷く。


「そげんです。西の方にあるフク王国の出身ですたい」

「ほ〜ん、可愛らしい方言やな」


 こっちの世界で言うところの博多弁と似ているだろうか。


「はやてさんも方言ですけど、生まれはどこですと?」

「あ〜。ウチは大阪や」

「オオサカ? 聞いたこと無かです。どの辺にあると?」

「う〜ん。どう説明したらええやろか……」


 異世界、なんて言えるわけあらへんし。どうしたもんかなぁ。


 考えあぐねたはやてがしばらく黙り込んでいると、先にオクトーバーが口を開いた。


「もしかしてはやてさん、日本人だったりすると?」

「えっ!?」


 はやては驚きのあまり、とんでもない大声を出してしまった。

 慌てて口元を押さえる。


 なぜオクトーバーは、日本人という単語を知っている?


 驚愕の表情のまま固まるはやてに、オクトーバーが続ける。


「実は私、ダイレク……保護者が日本人っちゃけん。だから日本のこと多少は知っとるんよ」

「へぇ、そうやったんや。そんな人もおるんやな」


 日本人に育てられた異世界人。

 アニメでも数人しか見たことがない。(そもそもキャラクターの数え方は人《にん》なのか?)


「私みたいな人間は超レアケースですけん。内緒にしてもらえると?」

「そりゃもちろん当たり前や。けど、はこびとこころには伝えてもええかな? あいつらもウチと同じ日本人なんや」

「それは別に構わないですけん。むしろ伝えておいてほしいけん」



 後日。はやてはオクトーバーが日本を知っているということを同僚のはこびとこころに伝えた。


 当然はこびは声を上げて驚いた。

 感情を表に出さないこころは、控えめな反応ではあるものの一応驚いてはいる様子。


 こうしてオクトーバーの秘密は三人に共有された。

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