第62ルート(王都コミュニティバス) 王都南門〜トトリナ庭園〜ヨジュカ聖堂東〜王城西入口
2024年3月13日にカクヨムで公開したものです。
『次はトトリナ庭園。地域に愛されて三十年、グーダック酒店前でございます』
小型のバスでもギリギリの幅の道を進んだ先、次の停留所が見えてきた。
一見誰も居なさそうだが、物陰に人が立っているのをこころは見逃さなかった。
ブレーキを掛けてバスを停める。
前扉を開けると、乗り込んできたのは杖を突いたお婆さんだ。
毎週、いつもこの時間にバスを利用している常連客。
こころは慣れた手つきで運賃箱を操作し、シルバー割引に設定を変更する。
お婆さんはゆっくりとした足取りでバスに乗り込むと、財布からお金を取り出した。
硬貨投入口にじゃらじゃらと110ゴールドを入れる。
「ありがとうございます、なのです」
『ピンポーン』と支払い完了の電子音が鳴ったのと同時にこころが告げると、お婆さんがふと顔を上げた。
「このバス、三月で無くなっちゃうのかい?」
投げかけられた質問に、こころは小さく頷く。
「そう、なのです。三月末でこの路線は廃線になるのです」
運転手の人手不足や利用者の低迷などが理由で、近年は都市部でもコミュニティバスの廃線や減便が相次いでいる。
それは異世界で事業を行っている我々も同じ。
「ご不便をおかけして、大変申し訳ないのです。四月からは表通りの路線を使って欲しいのです」
「そうかい。ちょっと距離があるけど、そこまで歩くしかないねぇ……」
「はい。本当にすみません、なのです」
心苦しいが、ただただ謝ることしか出来ない。
お婆さんが席に座ったのを確認し、こころはバスを発進させる。
『次はトトリナ中央通り。インプラント、ホワイトニングのシーラ審美歯科へはこちらが便利です』
異世界営業所管内では四月から路線の再編が行われる。
そこでこの路線は、廃線となることが決定してしまったのである。
コミュニティバスは採算を取るのが難しい。
その現実を、改めて突きつけられる形となった。




