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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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63/202

避難バス第58便 最後の避難バス

2024年2月14日にカクヨムで公開したものです。

 王都の北側エリアに住む市民から順番に避難させ続け、私の担当する地区の避難者はこれで最後だ。

 停留所に集まっていた全員が乗り込んだのを確認し、扉を閉める。


「発車します。大きく揺れる場合がございますので、お近くの吊り革や手すりに必ずお掴まりくださいますようお願いします」


 アナウンスをしながらバスを発進させる。


 先ほどから王国騎士団の動きが騒がしくなってきた。

 恐らくもう時間が無いのだろう。


 人の気配がほとんど感じられなくなった王都の中を、安全に気を付けつつも飛ばしていく。


「…………」


 ハンドルを握る手に無意識のうちに力が入る。

 何か、嫌な予感がしていた。


 直後、王国騎士団の兵士が交差点の真ん中で手を振っているのが見えた。

 あれは止まれのサインか。


 ブレーキを踏んでバスを停めると、兵士がこちらに駆け寄ってきた。

 窓を開けて話を聞く。


「たった今、オークの群れに北門を突破されました。そっちの道は危険です。市民広場方面へ迂回した方が安全かと」

「なるほど……。分かりました」


 頭の中で地図を思い浮かべ、即座に大型路線バスの走行に適したルートを探し出す。

 私は予定していたのとは別の道で王都南門へと急ぐ。


 だが、もう王都の中に安全な場所など存在しなかった。


 建物の陰から不意に巨大な何かが現れて、私は咄嗟に急ブレーキをかけた。

 立っていた人たちがよろめき、何事かと前方を見る。


 バスの目の前に立ちはだかったのは、巨大な二足歩行の豚。オークだった。


「おい、あれ……!」

「オークだ!」

「おい御者、早くバスを出せ!」

「嫌、死にたくないっ!」


 阿鼻叫喚の状態に陥る車内。


「皆さん、落ち着いてください。吊り革に掴まって」


 パニックを収めるべくアナウンスするも、誰の耳にも届かない。

 こんな状況でバスを発進させたら車内事故が起きるのは確実だ。動かそうにも動かせない。


 どうすればいい?

 私はこのまま、魔物に襲われてしまうの……?


 最悪の想像が脳裏をよぎる。

 しかし、その時だった。


「おい、こんな場所にまでオークが来てるぞ」

「みんな大変! バスが危ないよ!」

「あっ、本当だ! バスのお姉さん、大丈夫〜?」

「今助けてやるから、ちょっと待ってろよ」


 運良くオーク討伐に参加していた冒険者の少年少女たちが通りかかったのだ。

 しかも偶然にも、全員が以前私のバスに乗ったことのあるお客さんだった。


 間一髪、命拾いしたことで、乗客たちも冷静さを取り戻す。


 その後は車幅ギリギリの裏道も使いながら、どうにか王都南門まで辿り着くことに成功。


「降車後は王国騎士団の指示に従ってください。皆さんの無事を祈っています」


 最後の一人が降りるのを見届けて、住民避難は全て完了した。



 路肩に寄せてエンジンを切ってから、私もバスを降りる。


 けれど、私にとってはまだ終わりじゃない。

 我らが営業所と、そこに残した数十台の車両が心配だった。


「報告します。ニャラルカ村が多くのオークに襲われ、住民が蹂躙されているとの情報あり」

「オージェイム地区陥落! 防衛線を後退させろ!」


「……よし、怖いけど行こう」


 兵士たちの緊迫したやり取りを聞きながら、私は再び南門を潜って王都の中へと足を踏み入れた。

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