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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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回送(回想) 情報屋スティール

2024年1月24日にカクヨムで公開したものです。

 見えたもの、聞こえたもの。

 この世の全てが情報だ。


 情報は金になる。

 しかも一つの情報で二重三重にも稼げる。


 頭さえ使えば、ほんの些細な噂すらも大金に化けさせることが出来るのだ。



「スティールっス。入っていいっスか?」


 情報屋のスティールが部屋の扉を叩くと、中から返事が返ってきた。


「どうぞ」


 部屋に入ると、そこに居たのは豪奢なドレスに身を包んだ美少女。

 メー王国の第一王女、セトである。


「この前頼まれた調査結果を報告しに来たっス」

「あら、随分と早いですね。もう少し時間を要するものかと思っておりました」

「いやぁ、この件は本当はとっくの前に終わってたんス。けど他の仕事で忙しくって……」

「そうだったのですか、別に構いませんよ。それで、結果はどうでした?」


 首を傾げて早く報告するよう促すセトに、スティールは告げる。


「やっぱりバスは、異世界由来の乗り物っスね。そしてバスを操っている女性も異世界人、恐らくは日本人っス」

「……私の見立て通りだった、ということですね?」

「っスね」


 報告を受けた第一王女は真剣な表情で頷くと、天井を仰ぐように背もたれに身を預けた。


 そもそもスティールが沢山《さわやま》はこびに密着取材を行ったのは、セトからの依頼が発端だった。

 突如として現れたバスという乗り物と、バスを操る者。それらに危険性はあるのか、どれほど有用なものなのか、市民生活にどこまで浸透しているのか。出来る限りの情報を集めてほしいと。


 スティールはその調査のカモフラージュとして、新聞の取材という名目を使った。

 でもそれを嘘とするには惜しかった。

 得られる情報が、あまりに興味深すぎる。


 だからボクは、調査とは関係の無い部分を抜粋して記事を作成し新聞社に売った。

 その記事のおかげで埼京交通バスと運転手らに怪しまれることも無かったし、思わぬ報酬も獲得できた。


 情報屋稼業はずる賢さこそが重要である。


 と、そんなずる賢さついでに、スティールはセトにもう一つ情報を吹き込む。


「あっ、そういえばセト王女。これはまだ噂レベルの未確認情報なんスけど、オークスタンピードって知ってるっスか?」

「オークスタンピード? 確かオークの大群が人里を襲う魔獣災害、ですよね。それがどうかなさったのですか?」

「実はっスね。セイ連合王国から逃げてきたエルフ曰く、もうすぐこの国にそのオークスタンピードがやって来るみたいっスよ。まあ、偽情報の可能性も高いっスけどね」

「オークスタンピードが、王国に……」


 思わぬ噂を耳にしたセトは、顎に指を当てて暫し思考に耽る。


「考えてみればあれは兆候だった……? ともかく、情報提供感謝いたします。調査報酬とは別に、こちらの情報代もお支払いしないといけませんね」


 よしっ、売りつけ成功っス。

 スティールは心の中でガッツポーズを決める。



 この日の収入は20万ゴールド。正社員の給料一ヶ月分だ。


「これだから情報屋はやめられないっス」


 封筒の中身を見て悪い笑みを浮かべたスティールは、軽い足取りで夜の王都の飲み屋街へと消えて行った。

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