異55系統 アーバ台〜トゥオカ市場〜ニャラルカ南〜ワクアバ台中央
2024年1月17日にカクヨムで公開したものです。
『次はエドキ橋。不動産のご売却、ご購入、お買い替えなどはお任せ下さい。グリコモ不動産販売、アーバ台営業センター前でございます』
次の停留所が近づいてくると、待っているお客さんの姿が見えた。
ゆっくりと減速して、ぴたりと停車させる。
前扉を開けると、乗り込んできたのは小学生くらいの女の子。
しかし、私は見逃さなかった。
髪に隠れていて見えづらいが、女の子の耳が長いことに。
つまりこの女の子はエルフである。
運賃箱の硬貨投入口を手で覆って、女の子が支払うよりも先に問いかける。
「失礼ですが、ご年齢を証明出来るものはお持ちですか? 十二歳以下のお子様と六十五歳以上の高齢者のお客様の場合は運賃が割引になりますので……」
するとエルフの少女はジトっとした目をこちらに向けた。
「何? あたしに喧嘩売ってんの?」
「いえ、そういう訳では……」
本当にただ確認したいだけなんです! エルフって年齢不詳だから……。
「子供扱いと同時に年寄り扱いまでするなんて、随分と高度な煽り方してくれるじゃない。……はぁ、でも察したから、まあいいわ。あたしは110歳だけど現役世代よ。割引なんていらないから」
一度は怒りを露わにした110歳のエルフの少女(?)だったが、最終的には身分証を提示してくれた。結局シルバー割引は拒否されてしまったので意味無かったけれど。
にしても110歳って、都営バスよりも年上じゃん。
(都営バスは1924年1月18日に巣鴨〜東京駅前と中渋谷〜東京駅前の2路線で運行を開始。つまり、2024年1月18日は丁度100周年なのである。おめでとうございます!)
「発車します。お掴まりください」
『次はウルディガ丘。眼瞼下垂手術と白内障手術の、アーバ眼科前でございます』
その後、エルフの少女は終点に到着するまでの間、険しい表情をしながら窓の外を眺めつつ。
「……オークスタンピードまで、もう時間が無い」
時折ぶつぶつと、そんな独り言を呟いていた。




