第44ルート(王都コミュニティバス) 王城西入口〜商業ギルド前〜ガルガード北通り〜王都東門
2023年10月25日にカクヨムで公開したものです。
王城西入口停留所から百メートルほど離れた場所にある、バス転回場。
そこに小型のバスを停めたこころは、前扉を開けて運転席から立ち上がった。
バスを降りると同時、タイミングを見計らったように物陰から人影が現れた。
「こんにちは。人見こころ」
「こんにちは、なのです……」
見遣った先、歩み寄ってくるのは修道服姿の女性だ。
しかし、彼女が纏う雰囲気は修道女らしからぬ冷徹さで、本来聖職者が持つべき慈愛はまるで感じられない。
異様な緊張感に包まれる中、修道女が口を開く。
「あなたのおかげで、無事に対象の強制処分を執行することが出来た。協力感謝するわ」
「はい、なのです」
こころはこくりと頷く。
すると、修道女は胸元からおもむろに何かを取り出して、こちらにすっと差し出した。
「で、これがお礼ね」
「ありがと、なのです……」
彼女から手渡されたのは、そこそこ重量のある手のひらサイズの麻袋。
確認するまでもなく、中身は数十枚の金貨。
協力に対する報酬だ。
でも、いつもより量がちょっと多いように感じるのです……。
首を傾げていると、修道女は背を向けながら言った。
「千万そなえの家を調べてみたら、大量の金貨が隠されていたのよ。だからその分上乗せ」
「…………」
老後の資金にでもするつもりだったのだろうか。
こころが居場所を密告した異世界人は相当な額を貯金していたらしい。
「じゃあ最後に、次の対象を伝えるわ」
それから、ぴたりと立ち止まって振り向いた修道女は、有無を言わせぬ態度で一方的に告げる。
「次の強制処分の執行対象者は、月夜野かける。闇の組織を率いる少年よ」
見つけ次第通報よろしくと、写真を渡される。
「分かりました、なのです」
受け取った写真に目を落としたところで、彼女は不意に修道服のスリットの中に手を入れた。
直後、発砲音。
顔を上げたこころの、左耳のすぐ横を弾丸が通過した。
驚き目を見張るこころに、右手に拳銃を持った修道女が呆れた様子で一言。
「やっぱり当たらないのね。どういう仕掛け?」
「……よく見てるだけ、なのです」
「よく見てたって、普通は避けられるものじゃないわ。はぁ、まあいいけど」
ため息を吐きながら拳銃を太ももに取り付けていたホルスターに戻すと、修道女はそのままどこかへと去って行ってしまった。
「私も仕事に、戻らないとなのです……」
と、そんなやり取りをしているうちに、発車時刻が迫ってきている。
急いでバスに乗り込んだこころは、エンジンをかけて始発の停留所へ向けて発進させた。




