異42系統 ドフォラッド岬〜トレウジア砂丘〜イノーボザッキ灯台〜ピナリ港
2023年10月11日にカクヨムで公開したものです。
『次はウローレ七番地。地元に愛され40年。厳選されたお肉とこだわりのお惣菜、トルグ精肉店はこちらでお降り下さい』
すっかり日も暮れて暗くなった、海沿いの別荘街。
人の気配がほとんど感じられない町中を進んでいくと、ぽつんと明るい光が見えた。バス停のポールだ。
こんな時間帯に珍しく、バスを待っている人がいる。
ゆっくりと減速し、停車。
扉を開けると、乗り込んできたのは可愛らしい少女が二人。八重歯が特徴的な金髪赤目の軍服姿の子と、彼女の付き人なのだろう水色の髪のクール系なメイドさん。
「私は物語を書くのに忙しいんだ! 誰が指揮官なんかに!」
「大人しくしてください」
「おまっ、押すんじゃねぇ!」
「では引っ張って差し上げましょうか?」
「そういう意味じゃねぇ」
やいやい言い合いながら運賃を支払って、後方の二人掛けの座席に並んで座る。
『発車致します。お掴まり下さい。次はウローレマリーナ入口。お降りの方はブザーでお知らせ下さい』
それからバスが走り出した後も、二人はずっと会話を続ける。
「うぅ、照明が眩しい……」
「マドイ様、おめでとうございます。これでひきこもり卒業ですね」
「まあ爆死したくはないからな」
「初陣に勝利した暁には、豚レバーでお祝いしましょう」
「ちゃんと加熱してくれよ?」
「もちろんです」
喧嘩するほど仲が良い、ということだろうか。
ミラー越しに見る限りでは、最初よりもお互いの表情が柔らかくなっているように感じられる。
「マドイ様、少々緊張なさっていますか? よろしければマッサージして差し上げますよ?」
「そうだな……。じゃあニヴル、ちょっとだけお願い」
「かしこまりました」
しばらくして、メイドが軍服少女の肩を揉み始めた。
軍服少女は気持ちよさそうに目を閉じている。
だが、メイドがマッサージをする手は徐々に下へと移動していき……。
「って。おいお前、どこ触ってんだ!」
「どこと申されましても、ツボとしか言いようが」
「いやいや、バッチリ胸揉んでんだろうがっ!!」
メイドからセクハラを受けて、大声で喚いた軍服少女。
車内に響いた怒声に、他のお客さんが一斉に驚いた様子で振り返る。
「お客様、お静かにお願いします」
「すまぬ」
「すみません」
私が注意すると、二人はすぐに大人しくなった。
素直に聞き入れてくれて良かった。
『次はイノーボザッキ灯台。お土産に大人気、イノーボザッキ名物ぬれ煎餅本舗へはこちらが便利です』
バス車内での会話は周りのお客様のご迷惑にならないよう、声の大きさに注意してくださいね。




