異40系統 ニサーラ井堰〜ヨギマ五等級ダンジョン〜西スギャ村〜イーケヴォック楼東入口
2023年9月27日にカクヨムで公開したものです。
何か、変な噂が広まっている。
『次は西スギャ村。タイソー大学前でございます。トゥエール三滝線をご利用の方はお乗り換えです。……次、停まります。バスが完全に停車するまで、席を立たないで下さい』
降車ボタンが押された。
次の停留所が近づいてきたので減速し、ゆっくりとバスを停車させる。
待っているお客さんもいたので、前と後ろのドアを同時に開けた。
「イーケヴォック楼行きです」
降りる人の様子をミラー越しに確認しつつ、車外放送スピーカーでアナウンスする。
乗り込んできたのは、冒険者の男性二人組。
彼らは掲示されている車両番号と私の顔を見て、興奮したように声を上げた。
「うおっ! 2879号車ってことはこの嬢ちゃんが例の!」
「本当だ、間違いねぇ! ロードキラーのはこびだ!」
うん? ロードキラーのはこび……?
「なぁ嬢ちゃん、あのマーダーウルフを一人で討伐したんだろ? 御者なんか辞めて冒険者にジョブチェンジしたらどうだ?」
「このバスとやらで魔物をガンガン轢き殺してくれたら、俺らとしちゃあかなり助かるんだがな」
運賃を支払いながら、そんなことを言ってくる男性二人。
これは完全に、冒険者に転職しないかというスカウトだ。
「あはは……。いやぁ、すみません。あの、もう発車しますので、お席にお座りください」
いつまでもここに停まっていたら到着が遅れて、他のお客さんの迷惑になってしまう。
一旦話を切り上げたい。
「おっと、すまなかったな」
「ギルドも嬢ちゃんを欲しがってる。ちっと考えてみてくれや」
彼らは大人しく私の注意を聞き入れてくれて、後部座席へと向かっていった。
「お待たせいたしました。発車します」
『次はフォリアリ地区。スギャ村立中学高等学校前でございます。お客様にお願い致します。やむを得ず停留所から離れて停車する場合がありますので、お降りの際はご注意下さい』
確かにこの前オオカミっぽい動物をロードキルしちゃったけど、まさか魔物だったなんて。しかもめちゃくちゃ強いやつ。
いつの間にかおかしな二つ名が付いてるし、冒険者ギルドにも目をつけられてるみたいだし。あんまり目立ちたくないんだけどなぁ……。
それにそもそも、私はバスの運転手を天職だと思っている。
他の仕事をするなど考えられない。
本当にバスと一緒に異世界に来られて良かったよ。
バスが無かったら無職になってたところだもん。
無職で転生したら絶対地獄だもんね。




