異39系統 テルダリオ自然公園〜トラハリ植物園〜ララ川新橋〜王都北門
2023年9月13日にカクヨムで公開したものです。
自然が豊かな郊外の道路。
夕暮れ時で、辺りは段々と暗くなってきた。
ヘッドライトをハイビームにして、しっかりと前を照らして進む。
だが、どれだけ注意して走行していても、木陰から突然飛び出されると反応するのは難しい。
「きゃっ!」
いきなり木立の中から現れた何かを見て、私は慌ててブレーキを踏んだ。
しかし距離が近すぎて間に合わなかった。
ドスン。衝撃と共にバスが停まる。
「う〜ん、やったな……」
確実に何か轢いた。恐らく人ではなく動物の類い。
現在は始発のバス停に向けて回送中で、お客さんを乗せていなかったのが不幸中の幸いだ。
前扉を開け、運転席から出てバスを降りる。
片手には会社支給の業務用携帯。
営業所に電話を掛けながら車の前方に回り込む。
電話が繋がった。
『どした、はこびちゃん。何かトラブった?』
「もしもし所長。すみません、動物を轢いてしまったみたいで……」
『おっと、なかなかヘビーな事案。それ、お客さんは大丈夫なの?』
「回送中だったので、はい」
『はこびちゃんは? 怪我してない?』
「大丈夫です」
バスの前には、死骸が転がっている。
四つ足で、全身毛むくじゃらで、見た目的にはオオカミっぽい。
「そうだ。警察と道路緊急ダイヤルに連絡しないとですよね?」
動物を轢いてしまった場合、それは交通事故に該当するため警察に電話をしなければならない。加えて、その動物が何度も車に轢かれることのないように、国土交通省の道路緊急ダイヤル(#9110)に電話をして、処理してもらう必要がある。
『まあ日本ならそうだけど、ここ異世界だからねぇ。連絡するなら騎士団かな』
「ああ、そうでしたね。動揺しすぎてここが異世界なの忘れてました」
『バスは動かせそう?』
「はい。少し前がへこんだくらいで、エンジンとかには問題無さそうです。このまま予定表通り運行しようと思います」
『了解。騎士団にはこっちが連絡しとくから、はこびちゃんはそのままバス停に向かって』
「分かりました、ありがとうございます。失礼します」
その後、死骸の回収に来た騎士達は驚いた。
道路に転がっていたのが、超強力で凶暴な魔物であるマーダーウルフだったからだ。
普通なら冒険者十人がかりで倒せるかどうかの魔物が、こんなにあっさりと倒されている。
騎士達はバスという存在と、バスを操る運転手についての意識を改めることになった。
もちろんそんな話になっているとは、この時私は微塵も知らない。




