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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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異26系統 カルコッタ村〜サラスティア湖〜タルリナ樹海〜サッパビア温泉

2023年6月7日にカクヨムで公開したものです。

 この時期は異世界も雨の季節らしい。ここ数日は雨が降り続いていた。


 始発のバス停に向かうために車庫を出て、いつものようにバスを走らせていた私。

 しかし、思わぬトラブルに見舞われた。


 ラルハイト遺跡の辺りを走行していると、不意にガタンと車体が揺れる。


「きゃっ!」


 何事か。

 驚いてブレーキを踏むも、特に何かを轢いたとかぶつかったとかでは無さそうだ。

 周囲の安全を確認しつつ、再度アクセルを踏む。


「……ん、あれ?」


 どうしてだろう。動かない。

 何度かアクセルを踏み込んでみるも、ブオーンとエンジンの音が鳴るばかりで、バスは一向に前進しない。


 まさか、やっちゃった……?


 一旦エンジンを切り、傘をさしてバスを降りる。

 そして、屈んで前輪を覗き込んでみると。


「あちゃ〜」


 オーマイゴッドファーザー降臨。


 タイヤがぬかるみに完全にハマってしまっていた。いわゆるスタック。

 ここ数日の長雨のせいで、未舗装の路面がぬかるんでいたようだ。


「これ、発車時刻までに脱出できるかなぁ?」


 いや、流石に難しいか。


 この雨の中、お客さんをいつまでも待たせる訳にはいかない。

 営業所に連絡して、代車を出してもらうべきだろう。


 無線で連絡を取るべく、運転席に戻ろうとしたその時。


「どうしたの……? 困ってる……?」


 通りすがりの女性に声を掛けられた。

 顔を上げると、そこに立っていたのは以前お客さんとして乗せたことのある人だった。


「あっ、493歳の」

「私の年齢、何で知ってるの……?」

「ああ、驚かせてすみません。前に私が乗務したバスをご利用頂いた時に、お客様の年齢を確認させて頂いたことがあったので。覚えてませんか?」

「バスの運転手の顔なんて、いちいち見てない……」


 そう言われると確かにそうか。

 客側は運転手のことをほとんど気にしていない。だから当然覚えられているはずがない。


「それで、どうかしたの……?」

「はい、あの。実はバスがぬかるみでスタックしてしまいまして……」


 私がぬかるみにハマったタイヤを指差すと、女性はそれを一瞥して数秒ほど黙考する。

 そして彼女は頷きながら口を開いた。


「大丈夫、ちょっと待ってて……」


 言い残して、遺跡の方へと歩き去って行く。


 あれ、私ここに放置ですか……?


 それからしばらくして。女性がレッカー車に乗って戻ってきた。


「これで引き上げるから、あなたは離れてて……」


 いやいや、そのレッカー車どこから持ってきた!?



 結果、女性のおかげであっという間にぬかるみから抜け出すことに成功。

 これなら発車時刻にもギリギリ間に合いそうだ。


「本当に助かりました。ありがとうございました!」


 最大限の感謝の気持ちを込めて、何度も何度も頭を下げる。

 女性は無表情のまま、こくこくと首を縦に振っていた。


「それじゃあ私はもう行かないとなので」


 失礼しますと最後にもう一度頭を下げて、バスに乗り込もうとしたところ。


「待って……」


 女性に呼び止められる。


「はい?」


 振り向くと、彼女は忠告するように言った。


「あなたも日本人でしょう……? だったら、余計なことはしないように……。でないと、執行者に狩られる……」

「? はい、分かりました……?」


 冒険者の間でゴーレム使いの魔女と呼ばれる彼女が告げた言葉の意味を、この時の私は全く理解することが出来なかった。

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