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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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異17系統 王都東門〜ガルガード通り〜オージェイム五街区〜市民広場

2023年4月5日にカクヨムで公開したものです。

 四月。それは進学や就職など、新しい生活が始まる区切りの季節。

 環境が変わったことに期待や不安を感じる人も多い中、彼らの日常に溶け込み存在する我々だけはいつも通り変わらない。


 桜が舞う王都の街路を、今日もバスは大勢のお客さんを乗せて走る。


『次はオージェイム三街区。大切な人への贈り物や自分へのご褒美に、甘いケーキやシュークリームはいかが? クラリア洋菓子店はこちらが便利です』


 上流階級の住民が多い、高級住宅街を通る路線。

 今日はどこかの学校の入学式があるらしく、真新しい制服に身を包んだ学生たちで車内は混み合っている。


 異世界って中世ヨーロッパみたいな世界なんだから、新学期は四月じゃなくて九月始まりなのでは? などという疑問は、きっと野暮なのだろうから誰にも言わないでおく。


 バス停に到着し前扉を開けると、タカラジェンヌのようなクールビューティーな美しい女子生徒が乗り込んできた。


「ふむ。これがバスという乗り物か。なるほど確かに、これは馬車よりも快適そうだな」


 車内を見回してそんな風に呟く女子生徒。

 すると車内で軽く歓声が沸き起こった。


「きゃ〜っ! ホワイト様かっこいい〜!」

「あのムディナーク家のご令嬢が、どうして!?」


 どうやら彼女は良いところのお嬢様らしい。


 左手を上げて歓声に応えつつ、右手でコインを運賃箱に投入する。

 そのちょっとした仕草すらも非常に上品で美しい。が、私はその態度になんかちょっぴりムカついた。


 それからホワイト様と呼ばれた女子生徒はファンの子から譲られた席に座ると、足を組んで一言。


「たまには庶民の生活を体験してみるのも悪くない」


「きゃ〜っ、素敵〜!」

「ホワイト様〜っ!」


 何だその上から目線。そしてそれは何の盛り上がりだ。


 バスは生活に欠かせない、大切な庶民の足。

 私はそういう誇りを持って運転手の仕事をしている。バスを馬鹿にしないでほしい。


「では御者の君、バスを出してくれたまえ。入学式に遅れてしまう」

「……発車します」


『次はオージェイム四街区。お降りの方はブザーでお知らせ下さい』


 バスを見下すような言動や行動の数々に、私は強い怒りを感じていた。

 その結果、彼女が降りるまでの間の運転が少々荒くなってしまい、その雑な運転はドライブレコーダーにしっかりと記録されていたのだった。



 その日の夜。当然私は所長からお叱りを受けた。


「あのねぇ、はこびちゃん。いくらイライラしてたとしても、大事なお客さんの命を預かってるんだから。そこはちゃんとやってもらわないと困るよ?」

「はい。申し訳ありませんでした」


 深々と頭を下げる。


「全くもう。自分を悪く言われたならともかく、バスを悪く言われて機嫌損ねるなんて。はこびちゃんはどこまでバスが大好きなんだか……」


 所長は呆れたように言って、給湯室の方へと向かっていく。


 今朝のことは本当に反省している。

 でも、私はそれほどまでにバスのことが好きで好きで堪らないのだ。安全運転には留意するが、バスを見下されるのだけはこれから先も絶対に許せないだろう。

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