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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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異18系統 ナウラ町〜ココロア街道〜ララ川大橋〜アヴァカネ関所東口

2023年4月12日にカクヨムで公開したものです。

『次はホーブリオ丘陵。ニコラック村、タグジム山麓方面はお乗り換えです』


 街道が交わる丘の上。交差点手前の停留所に一人のお客さんの姿が見えた。

 ブレーキを踏み、ゆっくりとバスを停める。


「アヴァカネ行きです」


 車外放送スピーカーでアナウンスしながら扉を開けると、乗り込んできたのは少女。

 いや、童顔なだけで大人か?

 とにかく性別は女性だ。


 採集クエストでもやっていたのか、片手に果物が入ったカゴを持っている。


「220ゴールドになります」


 私は現地人だと思って気にせず対応する。

 しかし女性は、ポケットから思わぬものを取り出した。


「あの、これ使えます?」

「えっ!?」


 なんと女性は交通系ICカードのPASMOを持っていた。

 あなたも異世界人だったのか。


 転生者の女性がPASMOをかざすと、ピピっと音が鳴る。続けてこんな音声。


『チケットを使いました』


 私はこの音声を聞いて、驚きのあまり思わず叫んでしまった。


「懐かしっ!」


 バスチケットって言葉、すごく久々に聞いた。


 バス利用特典サービス、通称バス特。以前に関東エリアのバス事業者を中心に実施されていた、頻繁にバスを利用するお客様に対してのちょっとした運賃割引制度である。令和3年5月31日で終了したサービスだが、付与済みの特典バスチケットは10年間有効だ。まだ使うことは出来る。


「向こうの世界でチケットが付いた後に死んじゃったもので、ずっと残ってたんですよね。やっと使えたよ〜」


 そう言ってホッと息を吐いた女性は、PASMOをポケットに戻しながら運転席真後ろの一人掛けの席に座った。


 扉を閉め、バスを発進させる。


『次はワクマイスカ農業地域。近所の畑で採れた新鮮な野菜を低価格でお買い求め頂ける、ワクマイスカ農協直売所へはこちらが便利です』


 きっとあの音声は、この先もう二度と聞くことが無いんだろうなぁ。


 ただでさえICカード利用者が少ない異世界で、バスチケット持ちが再び現れる確率は限りなく低い。そしていつか日本に戻れたとしても、バスチケットが付与されたままのICカードを持つ人間はほとんどいないはずだ。


 恐らく人生最後になるだろう『チケットを使いました』の響きを、私は忘れないように脳裏に深く刻み込んだ。

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