祈り
病室にいると、二人の看護師が呼びに来た。車椅子で迎えに来て、それに座って手術室まで運ばれた。エレベーターで一階まで下りた。手術室はそこにあった。気を紛らわせようと、どうでもいいことに意識を向けた。たとえば、自分で歩いて行けるのに、これが標準的な手順で患者を運ぶんだな、とか。
入り口の前には、両親と姉貴、そして従姉妹がいた。変だったのは、アヤメさんとその叔母さんが遅れてることだ。もう学校は終わってるはずだから、なぜ遅れてるのかわからなかった。
後で会えるさ、と心の中で思った。
その間、愛する人たちの顔が、悲しみと希望に満ちた表情で俺を取り囲んでた。彼らは皆、心の中で全てがうまくいくように祈ってた。俺も同じだった。
不確かさゆえに、俺は皆にこう言った。
「ありがとう!」
皆、その言葉に驚いた顔をしてた。
「愛してるよ」
姉貴と従姉妹は突然泣き出した。母さんと姉貴は父さんに寄りかかって、何とか立っていようとしてた。父さんも、他の皆と同じように、悔しさを表に出したかったんだろう。
「もし……もしも、もう会えなかったら……」
「やめて……言わないで!」
チカが泣きじゃくりながら言った。必死に「平静」を保とうとしてた両親も、ついに泣き崩れた。
「聞いてくれ。それはあり得る現実だ。でも、知っておいてほしい。俺はお前たちを愛してる。今まで折れずにやってこられたのは、お前たちのおかげだ……」
俺も話しながら涙が溢れてきて、手で目を拭った。
「……だから、戦う。生きてここを出るために戦い続ける。愛してる。お前たちは、俺の人生だ」
看護師たちも、関係ないはずなのに、その光景に心を動かされてた。入室の時間だと告げられた。でも、その前に母さんが俺の前に跪き、涙ながらに唇を俺の顔に近づけて、何度も何度もキスをした。
「私の宝物……お願い……戻ってきて。私たちも愛してる……」
母さんの唇の感触が永遠に続けばいいと思った。でも、入らなきゃならなかった。
大きくて冷たい部屋のベッドに横たわり、全身麻酔の注射を打たれた。
薬の効果がゆっくりと効き始め、力が抜けていくのがわかった。準備される器具の音が聞こえた。使われるのを待ってる。
俺は自分の人生について考え始めた。目の前に立ちはだかった数々の困難や問題について。それに立ち向かい、生き延びるために——ただ生きるのではなく——振り絞らなきゃならなかった力について。
経験したすべてのこと。どれほど胸が引き裂かれ、感情的に苦しくても、正直になろう……感謝しなきゃならない。
この病気がなければ、この街に来ることはなかった。この家を買うこともなかった。そして、アヤメさんに出会うこともなかった。
もしかしたら、この状況を知らない人は、人の出会いと病気の有無を比較するなんてできないと思うかもしれない。実際、その通りだ。そんなことを比べるのは馬鹿げてる。でも、なぜかわからないけど、彼女に出会わなかった自分を想像すると、説明できないほど胸が締め付けられる。
今、ここにいて、すべてはこうなるべきだったんだと感じる。彼女に会うためだったんだ。
そうしてるうちに、目が重くなってきて、ほとんど自然に閉じようとしてた。知覚する光はぼやけ始め、周りの音はどんどん遠ざかっていった。
麻酔が効いてきてる。
アヤメの顔を心に刻みながら、神に祈った。一日も早く目を開けられますように。




