祭り
待ち合わせの時間が近づいてた。部屋で浴衣を着付けているところだった。さっきまでシングルルームのバスルームで、一日の疲れを洗い流す湯船に浸かってた。
普通の部屋だった。ベッドと、その正面にある中くらいの高さのテレビ台、そしてドアの右側に小さなバスルーム。何も特別なことはない。ただ一つ、お楽しみがあった——景色だ。
四階という高さから、遠くに湖を望むことができた。部屋に上がった時にはもう日は沈んでたから、今のところ夜の景色しか見えてない。でも、その夜景は決して期待を裏切らなかった。湖面には大きな虹が沈んでるかのようだった。
祭りの準備のせいもあって、街の夜の灯りが動き、湖面に映り込んで色を添えてた。湖の上の星空が、その光景をさらに完璧なものにしてた。文脈を抜きにして見れば、有名な画家の絵画のように見えたかもしれない。
出かける前に、この自然がくれた素晴らしい絵を写真に収めて、叔母さんに送った。離れてても「参加してもらう」ための方法だった。
テレビ台の横のクローゼットの中にある鏡で、ざっと自分の姿を確認した。
準備完了。
部屋を出て鍵をかけ、エレベーターで一階に降り、待ち合わせの場所であるフロントに向かった。
少し早かったけど、そのまま向かった。エレベーターを出ると、ユウトくんがもうそこにいた。驚くと同時に、どこか満足感があった。初めてのデートを思い出させた。
「やあ」
「やあ……」
ユウトくんのいいところの一つは、その表情だ。その時も、彼の顔は感動と照れでほんのり赤くなってた。
浴衣姿の私を見て、彼は思わず口を滑らせた。
「かわいい……じゃなくて、すごく似合ってる」
照れ隠しに適当な言葉を付け加えたけど、私の頭には「かわいい」って言葉と、彼の驚いた表情が刻み込まれてた。
浴衣を着た甲斐があったというものだ。
こうして私たちは祭りへと向かった。
数分歩けば着いた。同じ方向に流れる人々について行けばよかった。
目的地に着いたことは、祭り用の提灯の存在でわかった。
通りはほとんど提灯で埋め尽くされ、屋台が食べ物を売ってるのが見え始めた。多くの人が、特に女性が、日本の伝統的な服装をしてた。街は活気に満ちてた。ユウトくんは浴衣を避けて、普段着で来ることにしたようだ。
そこから先は、何をしたか——歩き回り、ありとあらゆるゲーム、食べ物、アトラクションを試した。
金魚すくいをやったけど、できなかった。ユウトくんは三回で諦めたけど、私は何度も挑戦した。結局一匹も取れず、ただお金を無駄にしただけだった。
もう一つのゲームは、小さな空気銃で的を撃ち落とすやつだった。今度は立場が逆転して、私がすぐに諦めて、ユウトくんが何度も挑戦した。
「パンッ」
ぬいぐるみが当たって、台から後ろに落ちた。
大したものじゃない。ただの小さなクマのぬいぐるみ。でも、私の目にはすごく可愛く映った。
「いるか?」
私の視線に気づいて、彼が言った。
「本当にもらっていいの?」
「ああ。俺はぬいぐるみとか興味ないし」
私はその優しさに、満面の笑みで感謝した。
食べ物に関しては、私たちの「食欲」を知ってる人は察するだろうけど、いろいろ買った。たこ焼き、焼きそば、焼き鳥、たい焼き……全部試した。たい焼きを買ってる時に、店の人から琵琶湖の方で花火が上がると教えられた。
団子を買おうとしてる時——今まで食べたものだけでも十分すぎるのに——台車を運ぶ男の人が私たちを追い越した。その時、台車からガラスの瓶が落ちた。高さが大したことなかったので、幸いにも粉々にならずに無事だった。明らかに男の人は落としたことに気づいてなくて、そのまま進み続けた。私たち以外の誰も気づいてないようだった。
ユウトくんがそれを拾った。
「見ろ!」
……酒の瓶だった。
ちょうど私が「持ち主に返さなきゃ」って言おうとした瞬間、ユウトくんは私の手を取って、全力で走り出した。
結局、その「証拠品」を持って、湖に向かい、岸辺の誰もいない場所を見つけた。
「正気? なんで瓶なんて取ったのよ。返さなきゃダメだったでしょ」
彼がやった窃盗行為に、私はかなり怒ってた。台車の持ち主を呼び止めて返すべきだった。
「やっちゃいけないってわかってたんだけど……これもリストに入ってることなんだ」
彼は息を切らしながら言った。
「お酒を試す?」
「うん。後で追加したんだ」
湖の岸辺に座って、瓶を開けた。
「学生だから、普通に店で買うわけにはいかないだろ。落ちてるのを見た時、迷う余地はなかった」
「強い匂い……」
アルコールの香りが強烈で、私たちの周りに広がった。まるで瓶から出たくて仕方ないかのように。
ためらうことなく、ユウトくんはゆっくりと唇を瓶の口に近づけて、一口飲んだ。
「うっ! すげえ、こんなに強いと思わなかった」
舌を出して、アルコールの味に顔をしかめた。
「もっとゆっくり飲みなよ。ジュースだと思ってるの?」
彼が瓶を私に差し出した。
「ほら」
「いやいや。私は飲まない」
「いいから一口。味は強いけど、口の中ですぐに広がるから」
迷ったけど、よく考えてみれば、大したことじゃない。ただの一口だ。
本当の問題は別にあった。彼の後で同じ瓶から飲むということは……間接キスになる。
彼もそれが私の躊躇の本当の理由だと気づいてて、私が恥ずかしがって悩んでるのを、満足げな表情で見てた。でも、彼に勝ちを譲りたくなかったので、素早く一口、唇を瓶の口につけてる時間をできるだけ短くして飲んだ。
「うっ!」
ユウトくんと同じ反応をした。
「大人はどうやってこんなものを飲んでるんだろう」
冒険の相棒が笑ってる中、私はそう言った。
その時、彼がポケットから小さな紙切れを取り出した。やりたいことを書き留めてるあのリストだ。彼は横線を一本引いた。「お酒を飲む」の項目にチェックを入れてるんだろう。
私たちはそこに座ってた。満月が湖の青に映り込んでた。月はとても明るく輝いてて、まるで大きな神の目が私たちを見下ろしてるかのようだった。私たちは交互に酒を飲み続けた。もう味には慣れてた。
その酩酊した瞬間は、ユウトくんの口から出た一言で破られた。
「出発の直前に、手術の日が決まったんだ」
一瞬、言葉を失った。その時が来ることはわかってた。でも、まさかこんな時に言われるとは思ってなかった。でも、彼が自ら教えてくれたことは嬉しかった。最後の最後まで知らされないままより、ずっといい。
「そう……いつなの?」
「十二月七日。でも前日に入院するんだ」
「きっとうまくいくよ。私はそう信じてる。あなたは強いから。この瞬間を乗り越えられる」
彼は遠くの水平線を見つめながら、髪をそよ風に微かに揺らして言った。
「俺は強くなんかないよ。ただ、誰かを手本にしようとしてるだけだ。前に言っただろ、ずっと入院してた時のこと。あの時、隣の部屋に同い年の女の子がいたんだ。彼女も病気だった。そういう環境にいると、自分より状態のいい人にも、悪い人にも出会う。彼女は余命いくばくもなかった。俺とは違って、彼女こそ本当に強かった。彼女の病は何度も治療されたけど、何度も再発した。不治の病だった。でも、それでも彼女が笑顔じゃなかった日は、一日も覚えてない。言うまでもなく、彼女は亡くなった。その知らせは衝撃的だったけど、驚きはしなかった」
「ごめんね……」
その間も、酒の瓶は私たちの間で振り子のように行き来し、中身は半分になってた。
「ああ。でも彼女が強かったのは、笑ってたからだけじゃない。その笑顔の裏にある理由に、俺は惹かれたんだ。ある時、彼女が言ったんだ。『どうせいつかはみんな死ぬの。早い人もいれば、遅い人もいる。大事なのは、与えられた時間に何をするかってこと』って。その言葉で、俺は毎日を生きてるんだ。だから、生きてる間にできるだけ多くのことをやりたい。だからリストを作ってるんだ。本当は、人は時間が足りないって愚痴るけど、実際には時間はあるんだ。ただ無駄にしてるだけなんだよ。彼女は自分の状況に悲しんでたんじゃない。やりたいことをやる時間がないことを悲しんでたんだ」
ある意味、彼の言いたいことがわかった気がした。
「生きるっていうのは、ただ年を取ることじゃない。人生の中で何をするかってことだ。生きるっていうのは、毎日選択をして、すべてに挑戦して、何かをやらないよりやるリスクを取ること。たとえ人の寿命が平均より短くても、それを体験することはできる。そういう意味?」
彼は軽く笑って答えた。
「さあな。たぶんな。これは俺の推測にすぎない。彼女に確かめる時間はなかった……」
彼はもう一口、瓶をあおった。
そして、また一つ、私には奇妙に思える言葉を口にした。
「アヤメ、お前は彼女をすごく思い出させるんだ」
「私みたいな人間が、彼女みたいな人を思い出させるなんてありえないよ」
私も軽く笑いながら言った。
瓶はまだ私たちの手の間を行き来してた。今度は私が一口飲んで、完全に空にした。
二人とも、あの瓶の半分を飲んだせいで、酔いの兆候が出始めてた。
「俺はそう思うよ。二人のうち、強いのはお前の方だ。何度転んでも、お前はいつだって立ち上がる……」
彼はそう言いながら、顔をどんどん近づけてきた。
私はただそこに座って、彼が近づいてくるのを聞いてた。アルコールのせいか、疲れのせいか、その時は無防備で、体が熱かった。
「……どれだけ苦しんでも、お前はまだ笑う力を持ってる……」
彼はどんどん近づいて、五十センチもない距離になった。
「……それが、俺がお前を愛してる理由だ」
そして、その言葉が終わったまさにその瞬間、一発目の花火が空に向かって打ち上げられた。
夜空に花火が炸裂したまさにその瞬間、私たちの唇は触れ合った。その後も次々と花火が絶え間なく打ち上げられ続けた。
そう、私たちはキスをした。
湖のほとり、月明かりの下、花火が夜空に炸裂する中でのキス。
まるで映画の中にいるみたいだった。




