旅
修学旅行の日がやってきた。行き先は京都。でも宿泊先は滋賀県の大津市で、二日間一泊の予定だった。二つの都市は車で三十分ほどの距離だけど、バスだとそれ以上かかる。京都はかつて日本の首都だっただけあって、古い寺院や歴史的な建造物を見学できることになってた。幸運なことに、大津に宿泊する予定だったので、日本最大の淡水湖であり、世界でも有数の古代湖である琵琶湖も見ることができた。さらに、毎年この時期——十月の中頃——には大津祭りが開催される。地元ならではのイベントを楽しむ機会もあった。つまり、一石二鳥だった。
この旅行の話は夏休み前から出てたけど、参加するかどうか迷ってた。
参加する唯一の理由はユウトくんがいるからだった。でも、彼の予期せぬ入院と、いつ退院できるかわからない状況が、私の決断を「不参加」に傾けてた。幸い、物事が予想より早く「落ち着いた」ので、私たちはこの経験を楽しむことができて、彼のリストの一つも叶えられることになった。
旅行の朝、私たちは夜明けに学校の前に集合して、目的地に向かうバスに乗った。
前の晩に夜遅くまでゲームをして、自分たちで決めた起床時間に起きられず、時間に遅れさえしなければ、もっと楽だったのに。
もちろん荷物は前もって準備してあった。でも、着替える時間は必要だったし、睡眠不足で立ってるのもやっとなのに、その時間も馬鹿にならなかった。
狂ったように学校へ走った。家の近くでよかったと心から思った。
学校には、私たちのクラスのバスの他に三台のバスが停まってた。どうやら他の三クラスも旅行に参加するらしい。知らなかったし、正直どうでもよかった。正直言うと、自分のクラスのことさえどうでもよかった。友達と一緒に旅行できればそれで十分だった。彼だけが友達とたくさんのことをしたいと思ってるわけじゃなかった。
バスに乗ると、ユウトくんと私は真ん中あたりの隣り合った席に座った。
「よし、みんな準備はいいか?」
先生がその言葉で私たちの注意を引いた。簡単に点呼を取って、全員の出席を確認すると、ホテルの部屋割りを発表した。
ユウトくんはある男子生徒と二人部屋になった。相手はかなりおとなしそうなタイプだった。彼とその男子生徒がこれまでに何か関係を築いたことがあるとは思えなかったけど、ユウトくんは結構社交的な性格だから、一晩くらいならうまくやっていけるだろう。
私はというと、唯一のシングルルームを割り当てられた。不満はなかった。むしろ、それが私の希望だった。出発前に、私から先生にシングルルームの可能性を尋ねたのだ。
外界との関わり方に進歩は見られるものの、同じ部屋で寝るような親密な関係を誰かと築く気にはなれなかった。それに、もしルームメイトが割り当てに不満を持って、先生に抗議したら、先生は別の女子生徒と私を組ませるかもしれない。でも、その別の女子生徒も同じように不満を持つだろう。連鎖反応だ。もちろん最終決定権は先生にあるけど、一晩だけとはいえ、望まれない同室の気まずさを旅行中ずっと感じるリスクは避けたかった。
相手を疑いながら「目を開けて」寝るのはごめんだった。
これが全員にとって最適な選択だった。
部屋割りが終わって、準備完了。私たちの旅が始まった。
前の晩の夜更かしゲームセッションで溜まった疲れのせいで、すぐに眠りに落ちた。
「おい、アヤメ。起きろ!」
隣の席の声が、私を揺すりながら眠りから覚まそうとしてた。
何度か呼ばれて、ようやく目を完全に開け、バスの窓に預けてた頭を上げて意識を取り戻した。
完全に混乱してた。
「な、なに?」
「ほら、あそこ」
彼の人差し指が窓の外を指した。私はその方向に顔を向けた……
「わあっ!!」
滋賀県に入ったばかりだった。ユウトくん曰く、動くバスの窓から見えたのは琵琶湖だった。
目の前に広がる広大な淡水。太陽の光が降り注ぎ、湖面全体を純白に照らしてた。
空と大地が一つになったかのようだった。青い空と、鏡のように空の色を反射する透き通った湖面。二つを隔てる水平線が、ほとんど見分けられなかった。
「きれいだろ?」
驚きのあまり、シンプルに答えた。
「息を呑むね……」
「もうすぐ着くのかな?」
「早く湖をもっと近くで見たいな」
「ああ。俺は主に寺を知ってるけど、湖には行ったことがない気がする」
その言葉で、ユウトくんが引っ越す前は京都に住んでたことを思い出した。予定表には自由時間もあったから、自分たちで探索することもできた。
ガイドの他に、かつてそこに住んでた人が案内してくれるなら、これ以上のことはない。
「じゃあ、京都で一番素敵な場所を全部見せてね」
「もちろん」
ほどなくして、ようやく京都に到着した。その日のうちに予定の一部をこなし、残りは翌日ということになった。
ようやく京都に着いて、最初の見学地は嵐山だった。クラスごとに見学順序が違ってたので、私たちのクラスだけが嵐山にいた。
まずは天龍寺の見学から始まった。
豊かな緑に囲まれた、荘厳で巨大な仏教寺院。まるで緑が盾のように建物とその向こうに広がる広大な庭園を覆ってた。
建物の中には入らなかったけど、ガイドが歴史や建立者について説明してくれた。正直、興味はあったけど、あまり聞いてなかった。目の前にそびえる実際の構造物に魅了されてたからだ。
昔の人々が、テクノロジーの助けなしに、手作業だけでこんな荘厳なものを作り上げたのかと思うと、ただただ感嘆するばかりだった。
それに、朝起きて、その広大な庭園を眺めて一日を始めるのはどんな気分なんだろうと、好奇心が湧いた。
庭園には、曹源池を囲む円形の遊歩道があった。水はとても澄んでいて、自分の姿が映った。小さな金魚や亀が、その透き通った水の中で楽しそうに泳ぐ姿が見えた。
見学を終えて外に出ると、寺院の入り口から少し北に行ったところに、次の目的地——竹林への入り口があった。
神聖な場所の近くに竹林があるのは、決して偶然じゃない。
神社や寺院は、しばしば竹林の近くに位置してる。竹っていう植物には象徴的な意味があり、力の象徴とされ、邪気を払う力があると考えられてるからだ。
密集した竹林の中には、何メートル続いてるのかわからない長い小道があった。
ガイドはこの竹林の歴史についてはあまり語らなかった。この場所の意味は、散策を通じてリラックスし、日常の喧騒から離れることだったからだ。実際、私とユウトくんにとってはそうだった。散策中、私たちは一言も話さなかった。ただ隣り合って歩き、周囲を包む魔法のような静けさを楽しんだ。
あの瞬間の感覚を一言で表すなら——「現実離れしてた」。
風に揺れる竹の葉擦れの音が、かすかに聞こえた。
スマホで何枚か写真を撮って、あの場所の本質を少しでも捉えようとした。でも、どの写真も、私が捉えたかった夢のような雰囲気を完全には表現できてなかった。竹の高さは五百メートルはあっただろうか。その先端は空に届きそうで、太陽の光が小道に差し込むのを遮ってた。
散策は約三十分続いた。
長い散歩の後、バスに戻る頃には文字通り疲れ果ててた。ようやくホテルに行って休める。だから、来た時と同じ席に座るのに時間はかからなかった。簡単な点呼を済ませて、出発。
「いやあ、素晴らしい散歩だったね」
席に座って伸びをしながら言った。
「ああ。昔、近くに住んでたのに、竹林には行ったことがなかったんだ」
「あの小道を歩くのは、本当に特別な体験だった。魂と自然が一つになったみたいだった」
「そうだな。風の音、聞こえたか? まるで音楽みたいだった」
「本当ね。お寺の中に入れなかったのは残念だけど、庭園は息を呑むほどだった」
「ああ。あの池の周りを一時間でも回っていられた。目が回っても構わなかった。あんなにリラックスできたんだ」
「そうしたらバランスを崩して、池に落ちてたわよ」
軽く笑いながら言うと、彼はしかめ面を返した。
「お前はいつもそうだな、面白くて」
「それに、ガイドをしてくれるって言ったのに、そんなに詳しくなかったみたいじゃない」
「京都の街中ならもっと詳しいんだぞ」
大津に着くまで約一時間かかった。
「ああ、ようやく着いた」
彼が私に向かって言った。
「早く部屋に行って休みたいよ」
一日中動き回ってたから、その時はとにかく部屋に行ってリラックスして、お風呂に入りたかった。
それぞれ荷物を受け取り、フロントでチェックインした。他のクラスもそこにいた。いや、もう到着してて、部屋にも落ち着いてるようだった。他のバスが駐車してあったからだ。
親切に対応してくれたフロントの女性が、今夜から大津祭りが始まること、そして参加したい人は浴衣をレンタルできることを教えてくれた。
先生たちは許可したけど、門限はあった。
私の部屋は3-Dで、ユウトくんは5-Eだった。ホテルは五階建てで、アルファベットが各階を表してた。Aが一階、Eが五階だ。つまり、ユウトくんは五階で、私は四階だった。先生たちは、生徒の寝室を男女でできるだけ分けたかったようだ……
「アヤメさん、待って」
彼の声が私を呼び止めた。他のみんなが上の階に向かい始めてた。
「なに?」
「思ったんだけど……よかったら……一緒に祭りに行かないか? どう思う?」
まるで心を読まれたかのように、彼は私も近いうちにしようと思ってた質問をしてきた。
「いいよ。二時間後にここで待ち合わせしない?」
「完璧だ」
エレベーターに乗って、先に降りたのは私だった。降りた後、ユウトくんが操作してエレベーターのドアが閉まりかけるその瞬間、私は右手を口元に近づけて言った。
「あ、二時間って言ったのは、浴衣を着ようと思ってるから」
ゆっくり準備したかったから、二時間って言ったのだ。ただの情報提供のつもりで言った一言が、気まずい結果を招くことになった。
閉まりゆくエレベーターのドアの隙間から、驚いて照れてる友達の反応が見えた。彼の頬がほんのり赤くなってた。
突然そんなことを言ったから、まるで彼に浴衣姿を見せたくて言ったみたいに聞こえた。ある意味、気合いを入れてるように。
私も急に恥ずかしくなってきた。




