表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
10/24

苦しみ

俺の人生か?


あの頃は、すべてが普通だった。何も問題なんてなかった。京都の学校に通う、どこにでもいる普通の男の子だった。


日々は穏やかに過ぎていった。当時の唯一の悩みって言ったら、数学のテストに合格できるかどうかだけ。数学は大の苦手だったからな。


すべてが変わったのは、中学三年生の最後の年だった。ある日、体育の授業が終わって、更衣室で着替えてると、急に変な感覚に襲われたんだ。


その不快感は一日中続いて、やがて視界に異常が現れ始めた。周りの景色や人がうまく焦点を結ばなくなった。すぐに頭がクラクラし始めて、そのまま意識を失って倒れた。目が覚めると病院のベッドの上で、両親が枕元に立ってた。学校で倒れて意識が戻らないから、救急車で運ばれたって言われた。


医者は何もないって言った。


そこでいくつか検査を受けたけど、何の異常も見つからなかった。ただのストレスの蓄積だろうって言われて、しばらく休むように言われた。そうした。


もちろん、この一件で俺はすごく不安になった。自分の健康に関しては、いつも悪い方に考えちゃうんだ。大げさに考えて、最悪を想定してしまう。小心者なんだと思う。この不合理な恐怖は、子供の頃に遡るのかもしれない。覚えてるのは、小さい頃に父の兄である叔父が若くして亡くなったことだ。もうすぐ結婚するはずだったのに、突然の死だった。健康に何の問題もなかったのに、急な容態の悪化で亡くなった。


その時から、そういう考えがどんどん強くなっていった。ちょっと頭が痛いだけでも、重いことを考え始めてしまう。馬鹿げてると思うけど、自分じゃどうしようもない。俺は死ぬのが怖い。今もずっと怖い。でも、言ってるのは、十分に生きた老人が悔いなくこの世を去るって話じゃない。自分がやりたいことを見る前に、やり遂げる前に、この世界を去ってしまうのが怖いんだ。


そういう問題や不安が、当時の俺を、そして今の俺を、ずっと苦しめてた。


医者からただリラックスすればいいって言われて、少しは気が楽になった。でも、そう長くは続かなかった。俺の恐怖が現実になるまで、そう時間はかからなかった。


安静にしてるある日、二階の寝室と一階を結ぶ階段を下りてると、またあの平衡感覚を失う感覚に襲われて、階段から落ちた。


頭がひどく痛み始めて、それまで食べたものを全部吐いた。痛みにのたうち回って、両親は急いで俺を病院に連れ戻した。何度も検査を受けて、ついに真実が明らかになった。


頭部のMRIを撮って、フィルムを印刷した後、医者がそれを見つけた。


俺の癌。


脳にできた小さな黒い斑点。俺を苦しめるもの。


検査の頻度は増えて、ほとんど日常のルーティンになった。時には医者が家に帰してくれないこともあった。経過観察のためだ。発作を防ぐために薬を処方されて、今も飲み続けてる。


学校に行くことはどんどん減っていった。数週間ぶりに学校に行くと、好奇心に駆られたクラスメートが、なんで休んでたのか聞いてきた。誰にも自分の状況は話さなかった。話したところで現実は変わらない。だから、自分の中に閉じこもることにした。


そうして、普通の生活から少しずつ遠ざかっていった。もはや俺の日常は病院になってた。実際、中学三年生の最後の一年は、ほとんど病院で過ごした。学校にはほとんど戻れなかった。檻の中に閉じ込められる感覚を味わった。白い壁に囲まれた自分の部屋の中で。家族がずっと病院に一緒にいることはできなかったから、どの日も同じように過ぎていくと思ってた。でも、偶然にも、同じように入院してる同い年の女の子に出会った。彼女は俺とは違って、毎日を笑顔で過ごしてた。彼女との時間は長くは続かなかった……でも、彼女から何かを学んだ。今でもそれを支えに前に進もうとしてる。


勉強は自分でやった。両親が先生たちのところに行って——状況は伝えてあった——教材をもらってきてくれた。


両親は無理するなって言った。でも、俺にとってそれは負担じゃなかった。


宿題をしたり勉強したりすることは、奪われた普通の生活から唯一持ち越せたものだった。中学を卒業するとき、クラスメートにさよならを言うことさえできなかった。


高校に入ってから、癌を抑えるための治療を始めて、薬を飲み始めた。薬は時間とともにどんどん増えていった。永続的な解決策じゃなかったけど、少し前までは効果があった。その薬のおかげで、二十四時間病院の部屋にいなくても済んだ。正確な効果はわかんないけど、何とか助けになってた。


これは俺だけじゃなくて、家族にも影響を与えた。


母は、不確かな俺の未来にパニックになった。俺の前では壊れない岩のように見えたけど、父と二人きりになると、悲しみを泣いて発散してた。一度、聞いちゃったからわかる。


姉はすべてを知ったとき、俺の目をまっすぐ見るのが難しくなった。そうしないと、無意識に泣いちゃいそうだったから。病院に見舞いに来るときはいつも、「ごめんね」とか「すまない」としか言わなかった。本当に無力感を感じてたんだろうな。


父は、三人の中で最も精神的に打ちのめされてた。俺と母と姉を支えるために、常に崩れないようにしなきゃならなかった。


今、俺は何度目かの病室で、このすべてに関係のない一人の少女に、自分の話をしてる。俺が関係を築くことができた少女。今では、俺の家族と同じように、俺の状況に無力さと悲しみを感じてる。


だから、この新しい街に引っ越してきたとき、学校に通って普通の人になりたいと思った。でも同時に、一人でいることを決めた。皮肉なことに、自殺して命を捨てようとしてる少女に出会った。だから、彼女と口論するようになった。腹が立ったんだ。彼女には前に進む可能性があるのに、俺にとってはすべてが大きな疑問符のままだから。


隣同士に住むことになったのも、一緒に学校に行くのも、すべて偶然だ。彼女に近づきたかったわけじゃない。ただ助けたかっただけだ。俺と違って、彼女がどれだけ恵まれてるかをわからせたかった。彼女の話を聞いたとき、俺は言葉を失った。それまで持ちこたえられたのは、家族の温かさと、あの病院の友達から学んだことのおかげだった。彼女は俺とは違って、本当に強かった。だから、自然ともっと近づきたくなった。そして、混沌として不確かな俺の人生の中で、彼女は必要な普通の生活の光になった。


自分の話をしてる間の彼女の表情を見るのは、胸を刺されるようだった。彼女の目は曇って、信じられないような表情で見開かれてた。まるでドラマでも見てるかのように。その大きな蜂蜜色の瞳が俺の目を覗き込んで、話が終わるまで一度も視線をそらさなかった。同情してほしくなかった。ただ、今まで通りでいてほしかった。もし彼女が俺に対する態度を変えたり、変に扱ったりしたら、嫌でも自分の現実を思い知らされることになるから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ