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聖女の覚醒

更新が遅くなってすみません。

忘れてしまっている部分もあったので、今までの投稿した分を見直して、少し加筆修正をしています。(大まかな流れは変わっておりませんので、時間がない方は読み返していただかなくても大丈夫だと思います。)

 



「ナラノ、お前が好きだ」


「っ!!」




 ――私はアロイスに覆い被さって抱きしめられながら、告白されていた。




 アロイスの顔が私のすぐそばにあり、その吐息が私の耳に吹きかかる。生暖かいアロイスの息に、思わず私の身体は緊張で固まる。


 真剣な瞳をしたアロイスからは、これが冗談なんかじゃなくて本気だってことが伝わってくる。


 それがわかったとき、私の心臓はアロイスにも音が聞こえちゃうんじゃないか、ってくらい音を立て出す。



(〜〜っ! あ、あれ……? なんで、私、告白されてるの〜!?)




 ――こんなアロイスは見たことがない。




 アロイスに覆い被さられたまま、私は顔を真っ赤に染めたのだった。









 ―――――









 私とアロイスは、メアリアの提案で、『宝探しゲーム』をしていた。






 ――『メアリアが隠した宝石を先に見つけた人の勝ち』






 とっても簡単なルールだった。




 幼馴染の私とメアリア、クレイグ、アロイスの4人でゲームを始めた。

 ゲームの範囲は、メアリアの住むペリクレス王城の庭だった。


 この庭は、幼い時からメアリアを訪ねてきて私達が遊び慣れている場所でもあったし、私たちは誰も反対することなく宝探しゲームを庭ですることになった。




 まず、メアリアが宝の宝石を隠しに行く。


 時間が経ったら、私とクレイグ、アロイスが隠された宝の宝石を探しに行く。



 夕方までに宝の宝石が見つからなければ、宝を隠したメアリアの勝ち。

 もし宝の宝石を見つけられたら、見つけ出した私達の勝ち。



 小さい時から、私たち4人が遊び慣れた宝探しゲームで私たちは、それぞれ庭を歩いて宝を探すことになった。






 ――そこで、私は狼のような()()に襲われた。






 本来、ペリクレス王国の王城の庭には魔獣なんて出ない。なのに、なぜか私の目の前には、魔獣が現れたのだ。



(どうして、いるはずがない魔獣がいるの……!?)



「……っ!」


 私は、向かってくる魔獣を見て身体がすくんで動けなくなってしまった。


 逃げなくちゃいけない、とわかっているのに、怖くて足がすくんでしまって動けないのだ。



「……ガルルルっ!!」



 本来ここにいるはずのない魔獣は、私に狙いを定めたようにジリジリと距離を詰めてくる。



「こ、……こないでっ!!」


 私は、掠れた声で魔獣に叫んだ。その声は小さくて、魔獣からすれば威嚇にすらならなかったのだろう。


 私の声が合図になったのか、魔獣は私に向かって襲いかかってきた。



「ガルルルッ!!」


「きゃあっ!」



(もうだめだ……私、このまま、魔獣に殺されちゃうんだ……)



 襲いかかってくる魔獣を見て、私はせめてもと思い身を小さくして身構えた。


 きっと、魔獣に襲われたら痛くて苦しいんだろな、と思いながら。


 でも、いくら待っても、私の身体はなんともなかった。襲ってくるはずの痛みも何もやってこない。



(あれ……どうしたんだろう……? 魔獣が襲ってこない?)



 私がそう思いながら、恐る恐る、瞑っていた目を開けると、私に襲いかかってきていた魔獣はアロイスに拒まれて、戦っていた。


「っアロイス?!」


 私が思わず、アロイスに向かって叫ぶと、ちょうどアロイスが魔獣を蹴り飛ばしたところだった。


「っナラノ、逃げるぞ!!」


 魔獣はアロイスに蹴飛ばされて、「ガルッ!!」と叫びながら転がっていた。


 アロイスは私の手を掴むと、魔獣から私を引き離すように走り出した。


「ガルルルッ!」と、走り去る私たちの後ろから、アロイスに蹴飛ばされても死ななかった魔獣が憎悪を込めた目で私たちを睨みながら唸っている声が聞こえた。


「どうして、アロイスがここにいるの?」


 走りながら、私はアロイスに尋ねた。


「質問は後だ! まずは、あの魔獣から逃げることを考えねぇとっ!」


 アロイスは、後ろから追いかけてくる魔獣に追いつかれないように、私を引っ張りながら走った。








 ―――――






「ねぇ、アロイス。ここ、どこなんだろう?」




 アロイスに引っ張られ、私たちは闇雲に庭を駆け回った。そして、普段なら通らないような道じゃない場所も走り回った。


 その結果、私たちは慣れたはずの庭でものの見事に『迷子』になった。


「……わかんねぇな。だが、王城の庭じゃない、ってことだけはわかる」


「うん、そうだよね。こんな場所、今まで一度も見たことがないもん。きっと、私たち、走ってるうちに王城の庭から出ちゃったんだね」


「ああ、そうだな。魔獣から逃げるために、とにかく必死だったからな。今、どこにいるのかすら、検討がつかないな。

 …………っ!!」


 アロイスは、木の根元に座り込みんで、足をさすっていた。


「アロイス、どうしたの? 足が痛いの? え、それ……もしかして、魔獣にやられたの?」


 私は、アロイスがさすっている右足に近づいた。アロイスのズボンを捲って見ると、アロイスの足は赤黒く腫れていて、見るからに痛そうだった。



(これは……普通の傷じゃない)



 異様なオーラを、纏った傷を見て、ナラノは魔獣から受けた傷だと思った。


「やめろ、ナラノ。こんなの、なんってことねぇよ!」


「で、でもっ! これ……」


「なんでもないって!」


 アロイスは、私が捲ったズボンを元に戻し、赤黒く腫れた患部を隠した。



(…………これは、魔症だ…………!)









 ――魔症。




 魔獣から感染する病気で、魔獣に触れたりすることで感染する物。


 放置しておくと、強烈な痛みを伴いながら魔症が広がり、最終的には患部が腐ってしまう、恐ろしい病だ。しかも、治療が遅れると、魔症に侵された患者の多くは命を落とすことも珍しくない。




 治療方法は、ただ一つ。




『聖女』と呼ばれる存在から、癒してもらうことだけだ。




 ――でも、そんなのは不可能だ。




『聖女』なんて、伝説の存在は、ペリクレス王国にはいない。

 いや、そもそも、今のこの世界にはいないのだ。



 本来なら、魔獣ですら、ペリクレス王国にいることがありえない存在なのだ。しかも、ナラノとアロイスがいたのは、ペリクレス王国の王城の庭。


 ペリクレス王国の中心部に、魔獣がいるなんて、おかしい話なのだから。



 ――魔獣が住んでいるのは、魔大陸。


 ペリクレス王国とは正反対の場所にある大陸で、魔獣がペリクレス王国にやってくるなんてことは、ありえないはずなのだ。


 それに、ペリクレス王国には、神ジェラルド様の加護があって、魔獣は入ってこれない筈なのだ。


 そして、ペリクレス王国の王城は、その神ジェラルド様の加護が篤くて、決して魔獣が入り込める場所ではないはずなのだ。



 それなのに、アロイスは魔獣から魔症を受けてしまった。



 聖女なんて存在がいない現代では、魔症の治療は、遅らせるしか方法がない。でも、それもこんなどこにいるのかすらわからない状況ではできそうにない。


 まさに、なす術がない、といった状況だった。



「そんな……」



(このままじゃ、アロイスを治す方法はない)



 私は、ズボンに隠されてしまったアロイスの魔症を受けた右足を見つめて、呆然とした。


「っなんでもねぇ、って! ……気にすんなって、ナラノ。お前を助けられたんだから、こんな傷、なんてことねぇよ!」


 魔症に侵されて痛い筈なのに、アロイスはなんてことないように無理矢理から元気を出して私に笑いかけてくれた。



(私のせいだ。魔獣に襲われた私を助けようとしたから、アロイスは魔症になったんだ。私があの時すぐに逃げていれば、アロイスが魔症にかかることはなかったはずなのに……)



 ナラノは自分が不甲斐なかった。





 そもそも、やり直しの前の世界では、魔獣がペリクレス王国に現れたなんて話は聞かなかった。



(もしかして、私が自称神様にやり直しを願ったから、現れるはずがなかった魔獣が現れたの?)





 ――それなら、やっぱり私の本当に私のせいだ。アロイスは、私のやり直しの巻き添えを食らっただけだ。




「私を助けようとしてくれたから……」


 私は、ただフランツへの初恋をやり直したかっただけだ。その結果、魔獣が現れて、アロイスがこんな命の危機に陥るなんて考えもしなかった。


「違う! ナラノのせいじゃねぇからな!」


 落ち込む私を見て、アロイスが私のせいじゃない、と言ってくれる。



(けど、そんなことはない。私がアロイスを巻き込んでしまったんだ。)



「で、でも」


「違う! 本当に、違うんだ…………俺が、ナラノに会いたくて、話したくて、メアリアに頼んだんだ。」


「……メアリア?」


 アロイスは、顔を真っ赤に染めて俯いた。



(なぜ、ここでメアリアが出てくるんだろう?今は、私のせいでアロイスが魔症になった話をしていたはずなのに……)



「うわ、は、はずぅっ!! なにこれ! 俺、なんでこんなとこで、こんな話してんだろっ! くそっ、ほんとはもっとカッコ良く伝える予定だったのによ……!」


 あ〜、俺、これは恥ずかしすぎるだろ〜! いや、でも、魔症に侵されて命を落とす前に、俺がナラノを好きだったこと、知ってもらいたかったしなぁ……、とアロイスは顔を真っ赤にさせて、手で顔を押さえながら独り言のようにブツブツと囁くような小さな声で呟いていた。


 混乱したアロイスのもにょもにょとした呟きは小さくて、ナラノにははっきりと届いていなかった。



「アロイス、何を言ってるの? ……メアリアは関係ないでしょう?


 これは、私がやり直しをしたから起こったことだし、やり直しの前の世界では魔獣は現れなかった。それに、私があの時、魔獣からすぐに逃げていたらこんなことにはならなかったんだから」


「あ、いや、それは違うんだ。ナラノ、自分を責めるな。」


「違わないよ。ごめんなさい、アロイス」


「だから、違うんだって! 俺がっ! 俺が、メアリアに今回の『お泊まり会』を企画してくれって、頼んだんだよ!」


「……アロイスが?」


 アロイスは、顔を真っ赤にしながら私をまっすぐ見つめていた。


 あ〜、これは、ナラノにはだまっとくつもりだったのに〜、かっこ悪りぃよな〜、と言って、アロイスは頭をクシャクシャとかき混ぜていた。


「うわ〜っ! だ、だから、さっ! 俺が、ナラノと、一緒にいたかったから、メアリアにお泊まり会を頼んだんだよっ!!」


「〜〜っ!!」



(そ、それって、どういうこと……?!!)



 真っ赤な顔をしたアロイスの衝撃の告白に、私の心臓はドクンとはねた。今の私の顔も、アロイスに負けず劣らずの真っ赤になっているだろう。


 魔獣から逃げて、迷子になっている内に、もう夕日が出てきていた。



(私、今きっと顔が赤くなってると思う……うわぁ〜、恥ずかしいっ!夕日が出てるから赤くなってるだけだって、誤魔化されてくれてほしい〜っ!)



 私たちはお互いに顔を真っ赤にしていた。


 でもそれは、お互いに恥ずかしいから、赤い夕日のせいってことにしておきたい。






 ふと、アロイスの赤黒くなった右足の傷を見ていると、黒いモヤのような物が見えることに気がついた。



(なんだろう、この黒いモヤは? もしかして、手で払ったらどうにかなるかな?)



 確証があったわけじゃない。

 ただ、痛みを我慢するアロイスを見ていられなかっただけだ。






 ――私はアロイスの右足の黒いモヤを手で払った。






 ついでに、なんだか私自身にも黒いモヤみたいなのががかかっているような気がしたので、ペッペッ、と払っておいた。





「うぇっ!?」


 アロイスから素っ頓狂な声が出た。

 その声を聞きながら、黒いモヤを払った当事者の私も驚いていた。



 なんと、私が手で黒いモヤを払ったら、アロイスの右足の赤黒い傷は何もなかったかのように()()()()()のだった。


 私は、驚きすぎて声も出ずに、アロイスの綺麗になった右足をみつめていた。



「ナラノ、お前……」

 ()()、だったのか――――?



 アロイスの困惑する声が響いていた。

 だけど、私にも自分が聖女なのか、なんてわからない。


「…………ごめん、私もよくわからない」


「あーー、そうだよな。いきなり、『聖女』とか言われてもわからんよな、ははは。すまんすまん。


…………俺好きなナラノのことになると、どうにも歯止めが効かない、っていうかさ〜。はぁ、だめだな、我慢できそうにない。」


「? 好き?」



(好きなナラノ、って……どういう意味だそれは。)



 私は疑問で首をかしげた。


 その時、アロイスが私をふんわりと抱きしめられていた。



(〜〜っ!! なん、なんなんだ、この状況はっ!! あ、アロイスに抱きしめられてる!?? え、なんでだよ! っというか、アロイスからめちゃくちゃいい匂いがするんだけど! ……って、変態か!、私はっ!!)



 アロイスに抱きしめられて、脳内会議が混乱を極めている中、アロイスは私を抱きしめ続けた。


「ありがとう、ナラノ。俺、お前を助けたつもりだったけど、結局お前に助けられちまったな。ハハ、全くカッコ悪いぜ……俺、魔症で死んじまうんだ、って覚悟だって決めてたんだけどさ。……ナラノは俺の『命の恩人』だな!」


「!! ちが……」



(私はそんな大層な者じゃない)



「いや、俺を助けてくれたのはナラノだ。ありがとう、ナラノ」


「……」


「お前が俺の命の恩人だから、ってわけでもないんだけどよ。

 俺、前からナラノが好きなんだわ」


「!!」


「ははは。ナラノ、冗談だと思ってるだろ? なら、もっかい、言ってやるよ。」


 アロイスは、私の耳元に口元を近づけて、愛おしい者にするような声で囁いてきた。


「ナラノ、お前が好きだ」


「っ!!」


 アロイスは、私の耳元から離れると、見たことがないくらい熱を孕んだ顔で私を見つめてきていた。





 ――ドクンっ!!!!





 私の心臓は大きくはねた。


 鈍感な私でもわかるくらい、アロイスの目は私を求めているのがわかった。どきどきして、見なくても私の顔が真っ赤になっているんだろうな、ってことがわかる。



(……アロイスが、私を…………好き?)



 欲を孕んだようなアロイスの瞳が私を愛おしげに見つめてきている。



「へへっ。ナラノ、驚いて真っ赤にしてる姿も可愛いな。…………そんな可愛い顔で見つめられると、俺、我慢できなくなりそうだ」


 そう言うと、アロイスは私が欲しくてたまらない、っといった表情で私を抱きしめながら顔を近づけてきていた。



(えぇぇ、ちょっと待ってくれよ! これは、好きな男女が『キス』とやらをする流れではないのだろうか?)



 恋愛経験のない私の脳は、軽くパニックを起こしていた。



「…………ナラノ。抵抗しないなら、俺お前にキスするからな? 嫌なら抵抗しろ」


 アロイスは、『抵抗してほしくない、もう離さない』ってわかるくらい逃げないように私を抱きしめて、愛しげに私を見つめながら、さらに顔を近づけてきた。



(あ、あああああろいすぅ! 違う! 待って!! 私はまだフランツが好きなの。 アロイスへの好きは、フランツへの好きとは違うんだよ。


 だから、これはアロイスを受け入れた、とかじゃなくてっ!! ただ単純に驚きすぎて動かないというか、抵抗できていないだけなんだよ。


 それにっ! アロイスっ! 抵抗しろ、って言うわりに、私のこと抱きしめすぎだからねっ?!!)





 あ、もうアロイスと私の唇がくっつく、っていう距離になった時、不意に私は誰かの腕に引き寄せられていた。


 アロイスの腕の中から誰か別の、男の人の逞しい腕だってわかるような腕に抱きしめられていたのだ。



(……え?)



 何が起こったのかわからなくて、ぽかんとしたままの私。



「………………何をしているんだ」



 底冷えするくらい冷ややかな声は、私の大好きなフランツの声だった。


 そう。フランツが私を、抱きしめて、アロイスに問いかけていたのだ。



 対するアロイスも、私を奪われて一瞬きょとん、としたが、すぐに私をフランツに奪われたとわかると、敵対心をみなぎらせた視線で睨みつけていたのだった。







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