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夏休みと彼

夏休みに突入〜!

アロイス視点です。

フランツとナラノの関係は離れたままですが、ここで幼馴染(ナラノ、メアリア、アロイス、クレイグ)の、お泊まり会のお話に入ります。

 


 夏休みになり、私は親友のメアリア王女から、お泊まり会をする、ということで誘われて、ペリクレス王国の王城に馬車で来ていた。


 広大な土地と歴史ある王城の玄関に、私を乗せた馬車が着く。


 アロイスのエスコートで、馬車から降りる私に一際大きな声がかかる。


「ナラノ〜! 待ったましたわ〜っ!!」


 クレイグを引き連れたメアリアが、馬車から降りたばかりのナラノに、ガバッと抱きついた。


 唐突なメアリアの歓迎にナラノは目を丸くしながらも、嬉しそうにはにかんで、「うん、来たよ、メアリア。誘ってくれてありがとう」と受け入れた。




 その様子を見て面白くないのは、ナラノと一緒に馬車に乗ってきて、エスコートしていたアロイスだ。


 ついさっきまで、馬車の中でナラノを独占できて、この上ない幸せを感じていたと言うのに、メアリアが現れた途端にあっという間にナラノを奪われてしまった。


「……おいおい、メアリア。俺もいるんだぞ〜?」


思わずアロイスが、ナラノに抱きつくメアリアの邪魔をする様に、存在のアピールをし始めた。


「まぁっ、アロイス? どうしてここにいるのかしらっ。」


ナラノと戯れていたメアリアが、アロイスに声をかけられてあからさまに拗ねた様子で返事をした。


「どうして、って……え、えぇ〜。いや、それは、お前が俺のことも招待したから、だろ?」


「あら? わたくしったら、ナラノだけに招待状を送ろうと思っていたのに、また腐れ縁の幼馴染のアロイスまで誘ってしまったなんて…………最悪だわぁ」


「おいおい……俺の目の前で、それを言うかねぇ〜」


 毎度毎度のこととはいえ、このペリクレス王国のメアリアは、ナラノ以外の幼馴染を誘うときには、照れ隠しでこう言った憎まれ口を叩く。


 でも、それは、プライドが高く人に甘えることが苦手なメアリアの精一杯のことだとわかっているので、毎回アロイスは「あー、へいへい、そうかよ。

 ……ったく、メアリアは……」と言って、頭を掻きながらも許してしまうのだ。



 メアリアのもう1人の幼馴染のクレイグに至っては、そんなツンデレなメアリアのことも愛おしいようで、

「メアリア様のご意志に従います」

と無表情だが、こちらも、機嫌が良さそうに笑顔でメアリアのことを受け入れている。



 その姿をみたアロイスは、『そんなにメアリアが好きなら護衛なんかやめて、早くメアリアに告白して夫婦になっちまえよ』、と思うのだが、さすがに言うのは憚られる。


 なんと言っても、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()相手が好きならとっとと告白して夫婦』、

というのは、言ってしまえばクレイグだけではなくアロイス自身にも言えることだからだ。


 アロイスとて、ナラノが好きなのにいまだに告白すらできていないのだから、幼馴染のクレイグに偉そうなことを言える立場ではない。



(……まぁ、結局。俺も、クレイグも、似た者同士、ってことだよなぁ……)



 アロイスは、そんなことに気がついて、気づかれないように小さくため息を吐いた。


「っ、め、メアリア! そんな言い方だめ、誤解されちゃうよ?

 アロイスも幼馴染なんだし…………メアリアだって、幼馴染同士、いつまでも仲良く過ごしたいから、って言って張り切ってアロイスとクレイグを誘ってたじゃない……!!」


 ここで、ナラノが悪気なく、1番メアリアが照れていることを暴露した。


 しかも、こういうときのナラノには、俺のような悪気は一切ないから余計にタチが悪い。


 ナラノは、本当に、メアリアや俺たちのことを思って発言しているのだ。


「〜〜っ!! な、ナラノ! そ、それはっ、……言っちゃだめですわ……!」


思った通り、メアリアは顔を赤くさせて、ナラノに注意をした。


「え〜、なんで? メアリアが、幼馴染のクレイグとアロイスと私のことを大切に思ってるのは、すっごく素敵なことだと思うよ?

 私、メアリアのことが好きだから、メアリアの良いところは幼馴染のクレイグとアロイスにも誤解なんてされないで、知っててほしいなって思うし、メアリアが私たち幼馴染が仲良くできるようにいつも頑張ってるの、知ってるよ?」


 メアリアの注意も虚しく、ナラノはやはり1番メアリアが照れるポイントをズカズカと暴露する。


 ……何度も言うが、ナラノはメアリアが照れていることも気づいていないし、全くもって悪気など一欠片もない。


 そして、メアリアもそんなナラノが好きなので許してしまう。


「〜〜ッ!! っもう! はぁ……ナラノには敵いませんわ。

 でも、ナラノのそういうところも、わたくしは好きなのですわ!」


 メアリアはさりげなくナラノへ好きなアピールをすることもかかさない。


「うん、ありがとう、メアリア。私もメアリアが好きだよ!」


「〜〜〜〜っ!! ナラノ、可愛すぎですわ〜!」


 親友のナラノの言葉に、メアリアの顔は嬉しそうに綻び、顔は真っ赤になった。


 やっぱり、なんだかんだいって、メアリアもナラノのこういう鈍感な所も含めて好きなのだから、しょうがないようだ。






 アロイスは、幼馴染2人のそんなやりとりをニヤニヤとしながら見守った。


 心なしか、無表情のはずのクレイグも、いつもより僅かだが表情が柔らかくなっており、メアリアとナラノを微笑まし気に見つめていた。


「……へぇ〜、メアリア、本当かよ。お前、本当いつまで経っても、ツンデレ王女様なんだなぁ」


なんとなくナラノといい雰囲気なメアリアを揶揄いたくなって、俺はメアリアが照れそうなことを言って揶揄う。


「っ! あ、アロイス!!」


 メアリアが俺に揶揄われたとわかり、真っ赤な顔で睨みつけてくる。


「へへっ! そんな真っ赤顔で睨まれても怖くねぇぜ〜」


「〜〜っ!!」


「メアリアは、昔だからツンデレだからな〜。お前ももう少しばかり素直になりゃ可愛いのになぁ〜。そしたら、今よりもモテると思うぜ?

 仮にも、ペリクレス王国の王女だし、顔とスタイルはいいんだからよ?」


「…………。 あ、アロイスぅ〜!?」


「ねぇ、アロイス。それは、ひどいんじゃない?」


 メアリアを揶揄っただけのつもりだったが、予想外にメアリアと、まさかのナラノまでが俺を非難してくる。


(…………ありゃ…………やりすぎたか?)


 俺がやべぇな、と思い始めたとき――








 バコンっ!!!!








 ……俺の頭にとんでもない衝撃が走った。


「い、……いてぇっ〜〜〜〜!!!!!」


 思わず今まで涙が出てくる。俺は頭を抱えて、しゃがみこんだ。


 見上げると、拳を振り下ろしたと思われるクレイグがメアリアを守るように背中に隠しながら、俺を上から見下ろしていた。



(ま、マジかよ、コイツ……本気で殴りやがったのか……?)



 俺はちょっとした冗談のつもりだったのに、と思いながら、頭をおさえた。


「アロイス、幼馴染といっても、淑女に対して失礼だし、やりすぎだ。」


「いや、そりゃ、すまんかったけど……俺が言ったことが冗談だって、クレイグだってわかってただろう?」


「ああ、わかっていたとも。」


「っ! なら、どうして殴るんだよ〜! 頭、割れるかと思うくらい痛かったぞぉ〜!?」


「あぁ、痛くなるように殴ったからな。」


「って、……おいっ!!」


「が、手加減はしてやっただろう?……俺の本気では、お前の頭は潰れていただろうな」


「あ、あぁ……そうだろうよ」


 クレイグが、恐ろしいことをなんでもないことのように、さらりと俺に言ってくる。


 だが、腹立たしいことに、クレイグの言っていることは本当だ。


 こいつが本気なら、これくらいの痛みで済むはずがない。


 一応は、俺も幼馴染ということで、手加減をされた、ということなのだろう……痛かったが。


「……アロイス。お前は、他の女性には紳士なのに、幼馴染のナラノとメアリア様には、甘えすぎなんじゃないのか? 淑女に対する礼儀ではないだろう?」


「っ! ……あ、あぁ、そうだな。止めてくれてありがとうな、クレイグ。」


「いや、もう良い。今日のお泊まり会は、メアリア様がかなり前から張り切られておられた。メアリア様のためにも、我らはいつも通りでいよう。」


「あぁ、そうだな」


 クレイグが俺に手を差し伸べてくる。


 頭を抑えて座り込む俺を立ち上がるのを手伝ってやるってことなんだろう。


 俺は、なんだか気恥ずかしい気もしたのだが、何も言わずにクレイグが差し出す手をそのまま掴んだ。


 すると、やはり思った通りクレイグが俺を立ち上がらせてくれる。






(うん、……これで仲直りだ。昔からのクレイグと俺のやりとりだ。)





 俺たちの間に、ほかに余計な言葉は必要じゃない。心が繋がっていれば、それで伝わるんだ。


「……俺らが仲悪くなったら、せっかくウキウキしながら企画したメアリアが悲しむもんな。」


「ああ、そうだ。メアリア様は口にはされないが、俺たちと仲良くいられることを、それはそれは楽しみにしておられるからな。」


「まぁ、しゃーないな。俺ら、腐れ縁の()()()だからな〜っ!」


「……私は、メアリア様の()()だ」


「あー、お前、まだそんなこと言ってんのかよ……へいへい、わかりましたよ〜、っと。」


 俺とクレイグはお互いに言葉を交わしながら、笑い合った。


 だが、そんな俺たちの横で、

「〜〜〜〜っ!!アロイスも、クレイグも、勝手にわたくしのこと言ってくれちゃって……!!」、

とメアリアが、耳まで真っ赤にしながら照れて叫んでいた。


「まぁまぁ、メアリア落ち着いて。メアリアが私たちのことを好きなことも、このお泊まり会を頑張って企画してくれたこともわかってるからね?」

と、ナラノが余計にメアリアが照れるようなことを言って慰めていた。


 メアリアは、「〜〜〜〜っ!! な、ならのぉ〜〜!!」とさらに顔を赤くさせながら、余計に照れながら叫んでいたのだのだった。





 メアリアは幼馴染だけの前では、いつもよりツンデレになります。そして、幼馴染のナラノやアロイス、クレイグのことが大好きです。

 でも、他人からそれを指摘されてしまうと、メアリアは照れまくってしまい、どうしてだかツンツンしてしまう女の子です。

 まぁ、メアリアのそんな性格も幼馴染達は理解しているので、受け止められてますけどね。



 照れて、ツンツンしていたとしても、メアリアが幼馴染達を好きなのは本当です。

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