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幻想のカラディシア  作者: 空港ヨハンナ
外務大臣

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11 外務大臣は風流を味わいたい

 薄い色の汁の中に、白いものや茶色いものが浮かんでいる。

「これ、なんですか?」

「おでんだねぇ」

「へえ」

「ふっふっふ、食べてみるかい?」

「はい」

 ヴィルテは、こんにゃくと大根とはんぺんを選んだ。

 哲学ヨハンナも、大根や卵などを選ぶ。

 店員が容器に具材を入れ、温かい汁を注いでくれた。

 二人は会計を済ませ、店を出た。

 外の冷たい空気が頬に触れた。

 ヴィルテは容器を両手で持ち、白い湯気を眺めた。

 それから、哲学ヨハンナの後について歩き出した。

 町家の並ぶ通りを抜けると、視界が開けた。

 大きな川が流れていた。

 川岸には遊歩道があり、ところどころに人が座っている。

 向こう岸には、暖かな明かりを灯した建物が並んでいた。

「鴨川だよ」

「へえ」

 ヴィルテは川を眺めた。

 水面には街の明かりが映り、ゆっくりと揺れている。

 川岸の石段に腰を下ろすと、哲学ヨハンナも隣に座った。

 ヴィルテは、おでんのこんにゃくを口に運んだ。

「あつっ」

 思ったより熱かった。

 少し息を吹きかけてから、もう一度齧る。

 弾力のある食感だった。

「……日本の人たちは、そんなに頑張ってどうしたいんでしょう」

「さあねぇ」

 哲学ヨハンナは、川を眺めた。

「ニューヨークや東京に住んでたこともあるし、働いたこともあるけど、わたしには合わなかったよ。忙しないのはどうにもねぇ」

「へえ」

「ニューヨークじゃ三日でクビになったしねぇ」

「え」

「数字は上げてたんだけどねぇ、勤務中にLoLをやったのがよくなかったらしい」

「……」

 ヴィルテは、哲学ヨハンナを見た。

 ヨハンナは、おでんの大根を箸で持ち上げていた。

 ふう、ふう、と息を吹きかける。

 それから、はふはふと食べ始めた。

「まあ、みんなが頑張ってるからこそ、このおでんも安くて美味しいのさ」

「そうですね」

「彼らも観光客のために頑張ってるわけではないだろうけどねぇ」

「なるほど」

 ヴィルテは、はんぺんを口に運んだ。

 柔らかかった。

 噛むと、温かい汁が染み出してくる。

「美味しい」

「ふっふっふ、そうだろう」

 川の向こうから、微かに人の話し声が聞こえた。

 遊歩道を、和服姿の男女が歩いていく。

 下駄の音が遠ざかり、また水の流れる音が聞こえてきた。

 ヴィルテは、もう一口はんぺんを食べた。

「ふっふっふ、鴨川を見ながら食べると風流だろう?」

「風流ってなんですか」

「ごらん。カモが泳いでるよ」

 哲学ヨハンナが川を指さした。

 見ると、暗い水面に数羽のカモが浮かんでいた。

 ゆっくりと流れに逆らいながら泳いでいる。

 ヴィルテはしばらく眺めた。

「風流ってなんですか」

 哲学ヨハンナは、大根をはふはふと食べていた。

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