11 念願の
Oic Placeの中は、歓声に包まれていた。
「おおおおお!」
「いけいけ!」
「ゾーイちゃん頑張れ!」
ヴィルテは足を止めた。
「……?」
広い室内には、いつもより多くの人が集まっていた。
誰が持ち出したのか、大きなスクリーンが壁に張られている。
そこには、ラジオヨハンナのライブ配信映像が映し出されていた。
画面の中では、ソナとゾーイが戦っている。
どうやら、まだ決着がついていないらしい。
ヴィルテは周囲を見渡した。
人々はソファに座ったり、床に寝転がったり、立ったままスクリーンを見上げたりしていた。
飲み物を片手に声援を送る人。
ポテトを食べながら観戦する人。
毛布にくるまって、顔だけ出している人。
ラジオヨハンナを応援する声もあれば、ゲーミングヨハンナを応援する声もある。
どうやら、どちらが勝っても構わないらしい。
「ふっふっふ!」
聞き覚えのある声がした。
ゲーミングヨハンナだった。
パーカーにショートパンツ。
床に座り、Rowenaのタブレットを操作している。
周囲には空になったエナドリの容器がいくつも転がっていた。
「くらいなよ!」
「おおおお!」
Oic Placeから歓声が上がった。
ヴィルテはスクリーンを見上げた。
『待ちなよ! ゾーイちゃんなんだからパドルスター使いなよ!』
ラジオヨハンナの声だった。
画面の中で、ゾーイがスリープバブルを放った。
それがソナに命中する。
ソナはしばらく動いていたが、数秒後、眠りについた。
「おおっ!」
「入った!」
「終わっただろ!」
周囲が騒がしくなった。
ヴィルテは画面を見た。
ソナのHPは、残り五パーセントほどだった。
通常攻撃を一発当てれば倒せそうだった。
「ふっふっふ……」
ゲーミングヨハンナが笑った。
ゾーイが動き出す。
すたすた。
すたすた。
眠っているソナへ、ゆっくり近づいていく。
急ぐ様子はなかった。
むしろ、わざとゆっくり歩いているようだった。
「ラジオヨハンナ」
ゲーミングヨハンナが、タブレットを見つめた。
「なにか言い残すことはあるかい?」
『……せめて一スキを使ってくれるかい』
「ふっふっふ」
ゾーイが立ち止まった。
そして、パドルスターを放った。
最短射程だった。
星が、目の前のソナに当たる。
ソナのHPがゼロになった。
『シャットダウン。エース』
「うおおおおおお!」
歓声が上がった。
「勝った!」
「三十連敗が終わった!」
「ゲーミングヨハンナ!」
「ふっふっふ!」
ゲーミングヨハンナは立ち上がった。
両手を突き上げる。
「ふっふっふ! ふっふっふ!」
そして、足元にあったクッションを拾い上げた。
振り回す。
「ふっふっふ!」
投げた。
クッションは、少し離れた場所で寝ていたダリウスに命中した。
「……ん」
ダリウスが身動ぎした。
酒の匂いがした。
ダリウスは目を開けることもなく、クッションを抱き寄せた。
そして、眠りについた。
「……」
ヴィルテはダリウスを見た。
それから、ゲーミングヨハンナを見た。
ゲーミングヨハンナは、もうダリウスのことなど見ていなかった。
「さあ、畳み掛けようか!」
タブレットに飛びつく。
画面を操作する。
その時だった。
ネクサスが割られた。
「……」
ゲーミングヨハンナの指が止まった。
スクリーンには、Victory。
ゲーミングヨハンナの画面には、Defeat。
「……」
ヴィルテはスクリーンを見た。
それから、ゲーミングヨハンナを見た。
ゲーミングヨハンナは、しばらくタブレットを見つめていた。
「……まあ、ソナちゃんには勝ったからねぇ」
ヴィルテは悟りヨハンナを見上げた。「露天風呂空いてますかね」
「今なら大丈夫じゃないかな」
「行ってきますね」
「楽しむと良いよ」
「はい」




