8 おかわり
「お次のお客様どうぞ~」
ヴィルテはカウンターへ進み、メニューを指差した。
「ワールドエンドラージビュヴェットバーガー。ピクルス、オニオン、オリーブ、レタス三倍。サイドは3L。サラダ、野菜スムージー、ちくわの磯辺揚げスティック」
「かしこまりました~」
「ふっふっふ、わたしも同じものを。あと、スマイル0円」
「にごぉ」
「なるほどね」
店員は表情を戻し、注文の確認を始めた。
何事もなかったように。
ヴィルテも何事もなかったように会計を待った。
悟りヨハンナが支払いを済ませる。
二人は商品を受け取り、席へ戻った。
店内は、夕方になってから客が増えていた。
席の七割以上が埋まっている。
スーツ姿の男女。
学生たち。
家族連れ。
Rowena端末を広げて仕事をしている人もいた。
窓の外では、雪が降っている。
猛吹雪は収まったものの、街路樹の枝には雪が積もり、歩道を歩く人々は厚いコートに身を包んでいた。
店内は暖かかった。
焼きたてのバンズの香り。
揚げ物の匂い。
食器の触れ合う音。
客たちの話し声。
そして、
『ふっふっふ、戦績はわたしが三十で、ゲーミングヨハンナはゼロ。そろそろ不貞寝したくなってきた頃じゃないかな?』
ラジオヨハンナの声が聞こえた。
戦績がとんでもないことになっていた。
ヴィルテはトレーを持ったまま、店内を見渡した。
「あ」
カウンター席が空いていた。
先ほどは埋まっていた窓際の席だ。
「悟りヨハンナさん、あそこ空いてますよ」
「ふっふっふ、そうだねぇ」
「移りましょうか」
「いいよ」
二人は、いったん元のテーブルにトレーを置いた。
ヴィルテは備え付けのクロスを手に取り、カウンター席へ向かった。
テーブルを拭く。
悟りヨハンナも、空いた椅子を引いた。
それから二人でトレーを運び、席を移った。
窓の外では、雪が降っていた。




