8 なまむぎなまごめなまたまご
何も解決していなかった。
いや、落とし物の持ち主はわかった。
しかし、迷子の保護者は依然として不明だった。
それどころか、子供が他人のスマートフォンで大量の料理を注文していたことまで判明した。
ヴィルテは子供の前にしゃがんだ。
「いい?」
「なんだい?」
「人のスマホを勝手に触っちゃだめ」
「わかったねぇ」
「ほんとに?」
「わかったよぉ」
「なにがわかったの?」
「ふっふっふ」
「……」
ヴィルテは立ち上がった。
ゆったりとした足取りで、Oic Cornerの外へ出た。
ごおおおおおおお!
猛吹雪が顔を叩いた。
構わなかった。
ヴィルテは通りの端に積もった雪を蹴り上げた。
一回。
二回。
三回。
「……」
そして、ゆったりとした足取りで店へ戻った。
自動ドアが開く。
暖かい空気が顔に当たった。
子供はまだそこにいた。
店員たちもいた。
ヴィルテは子供の前にしゃがんだ。
「いい?」
「いいよぉ」
「人のスマホ。これね?」
ヴィルテはスマートフォンを指さした。
「これ、スマホって言うの」
「うん」
「これを、勝手に触っちゃだめ。わかった?」
「わかったよぉ」
「……」
ヴィルテは子供を見つめた。
「なにがわかったのか言ってみて」
「なまむぎなまごめなまたまご」
「……」
ヴィルテは立ち上がった。
ゆったりとした足取りでOic Cornerを出た。
ごおおおおおおお!
猛吹雪が顔を叩いた。
そんなことは知ったことじゃなかった。




