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幻想のカラディシア  作者: 空港ヨハンナ
Oic Corner

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7 連絡先

ヴィルテは、店員たちの立ち会いのもとで、スマートフォンの連絡先を確認した。

 迷子の保護者を探すためだった。

 勝手に他人の端末を調べるのは気が引けたが、子供は自分の住所も保護者の名前も答えられない。

 とりあえず、親らしい連絡先を探すことにした。

「えっと……」

 ヴィルテは画面を見た。

「マイスウィートダーリンエバーネバー……」

「……」

 ヴィルテは口をつぐんだ。

 店員を見た。

「店員さん、変わってもらっても?」

「うっす」

 店員はスマートフォンを受け取った。

 画面を見る。

「えっと、マイスウィートダーリンエバーネバー……」

「……」

「ぶふっ」

 店員は吹き出した。

「アツアツっすね」

「ぱぱとまま、なかいいねぇ」

「良いことだな」

 調理担当は頷いた。

「他は?」

「えっと……マイスウィートエンジェル」

「わたしだねぇ」

「愛されてるな。あとは?」

 店員は画面をスクロールした。

「クソ上司、きったねぇ肌のお局、性格の悪い姑、ネチネチうるさい小姑……」

「……」

「……」

「……」

 三人は黙った。

 どうやら、なかなか複雑な人間関係らしい。

「……まあ、最初の人にかけてみるか」

 調理担当が言った。

「そうっすね」

 店員は通話ボタンを押した。

 数回の呼び出し音。

 そして、相手が出た。

『はい』

「あ、お忙しいところすみません。こちらOic Cornerなんすけど、お子さんが迷子になってまして」

『……うちに子供はいませんけど』

「……え?」

 店員はヴィルテを見た。

 ヴィルテも店員を見た。

『この電話、どこで拾ったんですか』

「えっと……ちょっと待ってください」

 店員はスマートフォンをヴィルテに渡した。

 ヴィルテは子供を見た。

「どこで拾ったの?」

「といれだねぇ」

「……」

「ロックかかってなかった?」

「なんかうごかせたねぇ」

「……」

 ヴィルテは目を閉じた。

 なるほど。

 そういうことか。

「……ちょっと後で説教する」

「やだねぇ」

「……」

 ヴィルテは電話に向き直った。

「すみません。Oic Cornerのトイレで、迷子の子供が拾ったみたいで。今、その子の親御さんを探してるんです」

『そうですか。見つかると良いですね』

「はい……」

『とにかくそれは私の不倫相手のスマホなので、あまり触らないでください』

「……」

 ヴィルテは黙った。

 店員も黙った。

 調理担当も黙った。

『あ……連絡来てました。そっか、へえ。あ、あいつ落としたみたいですね』

「……」

『後ほど伺いますので、保管をお願いします』

「あ、そのときは身分証おねしゃす。ご本人と確認ができるものを」

 レジの店員が横から言った。

『あ、わかりました。お手数おかけして申し訳ありません』

「いえいえ、お気をつけてお越しください」

『はい、失礼します』

「おねしゃす」

 通話が終わった。

「……」

 ヴィルテはスマートフォンを見た。

 店員はヴィルテを見た。

 調理担当は天井を見た。

 そして、三人は子供を見下ろした。

「ふっふっふ」

「今それやめて」

「こまったねぇ」

「……」

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