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現代知識で魔力支援――魔力を感じる少年と最強エルフは世界を巡る  作者: ナカノフミト
第2章

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 間を置いて、やがて、マックスの戸惑いの声が返ってくる。


「何を言ってるんだ、ジン? 結局、オスカーのおっさんを助けないのかよ?」


「違う。最初にマックスがあの魔獣を撃ったときのことを覚えている? あのとき、マックスの魔力はやつに届かず、吸われた。だけど、その挙動には、ムラがあった。ぼくにはそう感じられた」


 最初のマックスの放った一撃を思い返す。受け止められた光の柱は、そのままどこかへ放散されたわけじゃなかった。

 最後に消えていった場所がある。


「あの角の間、ちょうどその中央、そこがマックスの魔法が最後に消えていった場所だ。逆にいえば、そこだけ最後まで残っていた。つまり、わずかではあるけれど、吸い込みきれず、溢れていたんだ。――そこがおそらく、あの魔獣の魔法のボトルネックだ。そこに、今度はピンポイントで魔力を流し込んでやればいい。きっと限界をむかえて、壊れる」


 いま、その場所は視認できない。なぜなら、魔獣の角の間の空間に、オスカーがとらわれているからだ。

 気づいてみると、巧妙な作戦であることがわかる。

 これ見よがしに人質を掲げていただけじゃなく、自分の弱点になりうる部分も隠していたんだ。


「狙う場所は、オスカーの、ちょうど心臓のあたりだ。そのすぐ後ろが、目標だ。そこにだけに、きみの全力を注ぎ込め、マックス」


 返事は、すぐにはなかった。

 マックスがぼくに背を向けたまま、首を横に振る。


「……待ってくれ、ジン。わからない。それなら、オスカーを撃つことになるだろ?」


「違うよ。魔法は、イメージだ。そうだろう? オスカーに当てず、その背後を撃ち抜くんだよ。つまり、曲げればいい」


 ビクリと、マックスの手が震える。

 やがて絞り出した声には、諦めが滲んでいた。


「――ダメだ、できない。……お前なら、もうわかってるんだろう、ジン? 俺にそんなこと、できないってことが」


 少しの間ではあるが、マックスと一緒にいてわかったことがある。

 マックスは善良な男だ。そして使える魔力も膨大だ。


 だけど、その魔法の不器用さ――全出力を伴う一撃しかできないこと――については、結局のところ自分の口では教えてくれなかった。

 ポーズじみた尊大な態度で、ごまかすだけだった。

 他のギルド請負人たちとのトラブルも、そうして生まれたものだったのだろう。


 マックスのうめき声にも似た声が、続ける。


「俺に出来るのは、全力で相手を消し飛ばすだけなんだ。そうじゃないと、撃てもしない。わからないんだよ、ちょうどいい塩梅ってやつがさ。それを、これまで誰にも信じてもらえなかった。余裕ぶって、ヘマをしているんだと思われてきた。お前みたいに、器用じゃないんだよ。俺は、その、だから……できないから、自分なりに笑い飛ばしてきたんだよ」


 語尾が弱く消えていくにつれ、こちらに向けられたマックスの背中も、小さくなっていく。

 その弱さを、おそらくマックスは、誰にも見せられなかった。ぼくらが見てきたよりも、本当はずっと、臆病な心を持っているのかもしれない。

 だけど。


「マックス、きみと組んだのは、間違いだったのか?」


 ぼくのその問いかけに、マックスは背後に立つぼくに目を向ける。ぼくたちの目が合う。


「オスカーを見捨てない。そう言ったのは、きみ自身だろう、マックス? 出来ないじゃない。やるんだよ。……それにオスカーは、すでに覚悟を決めている」


 驚くように、マックスの目が正面に向く。

 その視線の先には、宙に固定されたオスカーの姿がある。


 その声は聞こえない。

 ぼくらに自分の声が届いていないのも、きっと察しているはずだ。

 だがその顔は、恐怖に満たされながらも、必死で何かを繰り返している。

 その口の形で、言葉は読み取れる。


「『私に構わず』。オスカーは、そう言っている。――オスカーを守りたいなら、やるしかないんだ、マックス。ぼくがガイドをする。だから、きみがやれ。覚悟を決めろ!」


 マックスの右手が震える。

 やがてその手がゆっくりと、しかし固く、握りしめられる。


「ジン、お前は、底の知れないやつだ。どう考えても、普通の子どもじゃない。そうだろう? そんなお前がやれって言うんだ。それなら……いや、違うな。お前がどうこうじゃない。俺が、やるんだ。そしてオスカーのおっさんを助ける」


 オスカーがゆっくり、ぼくの方へと振り返る。

 その目は、もう不安には揺れていなかった。


「やり方は教えてくれるんだろうな、ジン? ガイドをするって言ったのは、マジな話なんだろ」


 かすかに微笑んでみせるほくがうなずいてみせたとき、それまで魔獣からの攻撃を防いでいたアスの声が届く。


「二人とも、方針は決まったか? 早く頼む。もう、長くは持たないぞ」


 アスの言う通り、魔獣の魔力は広範囲に広がっており撃ち出される石の銃弾の範囲、角度はどんどん広がっている。

 さらにはその魔力自体が、攻撃を弾くアスの剣を、まっすぐ伸ばせば触れてしまうほどに、目の前に迫っていた。

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