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現代知識で魔力支援――魔力を感じる少年と最強エルフは世界を巡る  作者: ナカノフミト
第2章

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「このままだと、ラチがあかねえよな」


 食べ終わって、最初に口を開いたのはマックスだった。

 食器を手早く片付けながら、ぼくに目を向ける。


「オスカーさん、あの壁に、魔法は試したのかよ?」


 オスカーがうなずく。


「ええ。私の魔力は凡人レベルではありますが……炎をぶつけてみました。しかし、先ほどみた、アスさんの剣と同じです。壁に吸い込まれて、消えていきました」


 吸い込まれる?

 その表現にわずかに違和感を覚えていると、マックスが立ち上がる。


「なら、このマックス様レベルの大魔力をぶちまけたらどうなるか、ってとこだな。……試してみようぜ」


 アスがぼくに目を向ける。

 判断しかねる、というのが正直なところだった。


「もしこの現象が、魔法による結果だとしたら――この現象の解決のための最初の一歩は、何よりも魔法の主を探すことだ。違うかな」


「だろうな。だがなジン、そいつをどうやって探す? 魔力そのものを感じとるお前にだって、そいつの居場所はわかっていないんだろ?」


 ぼくはうなずく。

 そして、マックスの実験に反対する根拠はない。

 試してみてダメなら、それから魔法の主を探せばいいし、マックスの魔力量なら、やってみて損はなさそうだ。

 ぼくはうなずいてみせる。


「決まりだな」


 マックスが先に立ち、先ほどオスカーが案内してくれた場所へと赴く。

 森の木々の間に見える岩山には、太陽が沈みかけている。

 この空間の内側と、外側の時間にズレはなさそうだ。

 決して、異世界というわけではないらしい。


「下がってな」


 まだ『境目』に距離があるところで、マックスが立ち止まる。オスカーが怪訝な顔をする。


「いくらなんでも遠すぎやしませんか……?」


「違うんだよ、オスカーさん。本当に、近づかない方がいいんだ。見ていればわかる」


 マックスが手を見えない壁に向かってかざし、とたんに魔力が跳ね上がる。

 ビリビリとプレッシャーすら感じる、膨大すぎる魔力。

 そのスイッチを入れる本人にも、おそらく制御しきれていない力。


 だが今、その力を遮るものも、力を調節して狙いを定めなければならない事情も、何もない。

 ただ全力をぶつけて、文字通り突破口を開くだけ。

 そんな状況で練り上げられた魔力は、あのレッドドラゴンを凌ぐとも思えるほどに膨大だった。


 かざしたマックスの右手に光が集約され、震える。

 ガクガクと揺れる右手をなんとか制御しながら、マックスがつぶやくようにぼくらへ告げる。


「それじゃあ、行くぜ……」


 その魔力が放たれる一瞬前に、アスがぼくを守るように、ぼくと『境目』の間に入り込んでくる。


 その後に見えたものは、光だ。

 そして空気の震え。

 今やその膨大な魔力の発射台となったマックスの周辺では、放たれた圧倒的なエネルギーの余波を受け、揺れる空間がピリピリと皮膚の表面に押しつけられる。


 だがその衝撃は、想像したよりもずっと控えめだった。

 狼を狩るときに放たれたマックスの魔法は、岩山を穿ち、そのえぐれた内部をガラスのように滑らかにしていた。相当な着弾の衝撃があったはずだ。


 だが、いま感じるのは、反応の控えめさだ。

 マックスの放った魔力が持つエネルギーに対し、起こった結果があまりにも少ない。

 アスの振るった剣と同じだ。剣はその場に止まり、手応えもなかったらしい。

 だが、ぶつけられた魔力のエネルギーは、一体どこへ消えるのか?


 光が収まったとき、ぼくはアスの向こうに実験の結果を見た。

 背を向けたマックスが発射の状態のままで立ち尽くしており、その向こうにある『境目』と、その向こうに見える岩山は、発射の勢いで巻き起こった土埃の向こうに、健在な姿を見せていた。


 無駄だったか。

 そう思ったそのとき、ぼくはその魔力の流れに気づく。


「……魔力が、吸い込まれている」


 そうつぶやいたのと、ぼくの目の前に立っていたアスが急に振り向いたのは、ほぼ同時だった。

 アスは即座に剣を抜き放つ。

 背後にいたぼくを半ば突き飛ばすように自らの後ろへと押しやり、そして叫ぶ。


「敵襲! 背後から魔獣だ、備えろ!」

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