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現代知識で魔力支援――魔力を感じる少年と最強エルフは世界を巡る  作者: ナカノフミト
第2章

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 パチパチと、高く積んだ焚き木が音を放ちはじめる。

 ぼくの火の起こし方――炎を放たずに薄い木片を振動で焦げ付かせ、そこから火を起こし徐々に大きくしていく――その方法を見ていたマックスが、不思議そうに口にする。


「ジンはずいぶん、回りくどい方法を取るんだな。もっとこう、普通に火を放たないのは、何でだ?」


「答えはさっきのアスと同じだよ、マックス。できないからだ。弱いんだ、ぼくの魔力は」


「……あの、妙な魔法は使えるのに?」


「あれも、魔力自体は大して使ってないんだ。だから、戦えない。でも、さっきみたいに援護は出来る」


 起きた火に、ぼくが魔力で風を送りはじめると、徐々に焚き火だけじゃない、獣の匂いが混じってくる。


「あのリーダーの狼を追わなくてもいいのか? 逃げ切られるかもしれないぜ」


 マックスからその問いを聞きながら、ぼくは炎の中にすでに折り重なっている狼たちを見つめる。


「死体を放置しておくと、他の獣や魔獣を呼び寄せるかもしれない。しかもあの森に行くとすれば、ここは、ぼくらの帰り道だ。少しでも処理をしておきたい」


 そう説明をしていると、アスが処理をした狼の亡骸を引きずってきた。

 皮を剥がれた狼の姿を間近に見て、マックスがぎょっとする。

 アスが立ち上る炎を指さす。


「ジン、この中でいいのか?」


「ああ、投げ込んで」


「……手伝うぜ、アスさん」


 アスは狼の前足を持っていた。

 後ろ足をマックスが持ち、二人で勢いをつけて炎の中へと投げ入れる。

 亡骸はすでに中にいた他の狼たちの死体と折り重なり、同じように燃えはじめる。

 炎の向こうに見える亡骸たちに手をかざし、少しでもよく燃えるように、魔力を使う。

 目を閉じて、魔力を練り上げる。空気中から酸素を濾し取り、送り込むイメージ。網膜の底に鮮やかに思い描く。

 次に目を開いたときには、魔法が功を奏したらしい、炎が高く立ち上っていた。


 やがて火が下火になる頃には、すでに燃えさしの中の狼たちは、判別が難しくなっていた。

 脂の焦げた匂いが鼻をつく。

 焼けて崩れ落ちた薪の中に、原型もよくわからない黒く残った残骸。

 その狼たちの亡骸へ向けて、最後にぼくは手を合わせる。

 せめて安らかに。狩ったのはぼくらだけれど、そう思わざるを得なかった。


 それから、ぼくは視線を転じて、得体の知れない森を見下ろす。


「これでよし。……あのリーダーの狼、他に逃げ出した様子はない。森へ行こう」


   ※※※


 乾燥した岩肌から、苔むした腐葉土へ。

 その境目は、やはりどこか奇妙だった。水分のない岩肌に、濃い緑色の苔が貼り付けたように重なっている。

 まるで、今その地に森が降り立ったばかりでもあるように。


 岩肌に点々と続いていた血痕は、森の中へもも続いていた。

 だが、湿った土の水分と、まばらに生える背の低い植物の影響で、ほとんど不鮮明になっている。


「追えるか? これ。感知魔法でも、厄介だぜ」


 マックスが首をひねる。

 ぼくが感覚に意識を集中させると、不鮮明な血痕から立ち上る魔力の震えを、かざした手の中に捉えることができた。


「何とかなりそうだよ。魔力そのものを追おう」


 いぶかしげな顔をしていたマックスに告げると、彼は肩をすくめる。


「普通、感知魔法ってのは、痕跡を発見するためのものなのに……その、魔力そのものを感じ取れるってのは、一体なんなんだ?」


 マックスの愚痴めいた問いを受け流しつつ、狼の魔力を追って、森の中を進む。

 アスはいつの間にかぼくの隣に並んでおり、周囲を窺いながら、腐葉土を固く踏みしめていた。


「ここだと、少し、戦いづらいな。足場が悪い」


「あの狼に、トドメを刺すだけならいいんだけどね。……少し、待って」


 ぼくは立ち止まり、背後を振り返る。

 いままで追ってきた魔力と途切れがちに、わずかに残った血痕が、その方向に続いている。


「どうしたんだよ、ジン?」


「魔力は、ここで途切れてる。あの狼はここまでやってきた。だけど、その先がない」


「……ジン、下がっていろ」


 アスがぼくの前へと進み出る。

 すでにその手は、腰に下げた剣にかけられていた。

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