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現代知識で魔力支援――魔力を感じる少年と最強エルフは世界を巡る  作者: ナカノフミト
第2章

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「おはよう、アス」


 ベッドで眠るアスにそう声をかけると、目を閉じたまま、小さくうなずく。

 いつものことだ。起きていても、ベッドの中でゴロゴロとする時間が好きなのだ。


「朝食、もうすぐ出来るよ」


 今度は目が開いて、アスは小さくあくびをする。


「美味しそうな匂いがする」


「今日は焼き魚だよ。後は野菜スープ」


 うん、と小さく返事をしてアスは体を起こす。

 あそこまで行けば起き出してくるだろう。放っておくとずっと寝続けるときもある。起きていてもなかなか活動モードには入らないこともある。

 そんなアスにスイッチを入れるには、朝食の香りが一番効果的だと、ここしばらくの生活で学んでいた。


 ベッドの上で体を起こしたアスの寝間着は、薄く白い布でできたローブが全身を覆っているだけの状態だ。

 見ようと思えば体のラインもよくわかる。目に毒なのでぼくは早々に部屋を後にする。


「早く来ないと、冷めるからね」


 そう言い残して部屋を出る。

 廊下を進み、階下へと降りる。


 そこにあるのはギルドの受付――最近はいつもそうしているように、ギルドマスターがヒマそうに頬杖をついてぼくを眺めていた。


「今朝も甲斐甲斐しい世話の焼きようですね、ジンくん。アスさんは起きました?」


「まあ、ね。そっちも、ギルドマスターのくせになかなかヒマそうだね、ヘイワード」


 カイル・ヘイワード。それが、優男のギルドマスターの名前だった。


「この時間は大して人は来ませんからね。受付業務ぐらいならわたしにも出来る。経費削減ってやつですよ」


 肩をすくめ、それからヘイワードが鼻を鳴らす。


「いい匂いだ。ジンくん、やっぱりウチの宿屋部門の料理長になりませんか? その方が君の未来が開けそうだけれど」


「ヘイワードよりも高給取りになれるなら、考えてみてもいい」


 自分で言い出したくせに、しっしっ、とぼくを追い払うヘイワードをその場に残し、ギルドの厨房へと向かう。

 そこには先ほど調理を終えたばかりの、焼き魚と野菜スープ、そしてパンが用意されている。

 そしてもう一品、この数日をかけて準備をしていたものもあった。


 ギルドの食堂のテーブルに配膳をしていると、やがてアスが現れる。

 革製の茶色のジャケットにブーツ、そして薄い色のシャツ、動きやすいズボン。

 いつもの傷だらけの剣を携えている、ギルドの仕事をする際の装いだった。

 この街に来てから揃えたその装備を、仕事の際にはほぼ毎日、アスは身につけている。


「……ジン。それは?」


 そんなアスが、ぼくの食卓だけに乗っている小皿を目で指し示す。さすがに目ざといな、と思う。


「漬物っていうんだ。保存食。試しに作ってみたんだ。塩とか調味料で野菜の水分を抜いて、腐らないように加工したものだよ」


「人間たちは、保存用に食物を加工すると聞くな。美味しいのか?」


 ぼくは肩をすくめる。前世での祖母の姿を思い出しながら作った、シンプルな浅漬けの漬物だ。

 白菜に似た野菜を使い、薄味に仕上げたけど、アスの口に合うかはわからない。でも、アスは試食を求めているんだろう。


 小皿に少しだけ乗っていたその野菜をアスの器に分けると、アスは満面の笑顔を浮かべ、一口食べる。

 なんで今まで、食べることに興味がなかったのだろう?

 今のアスを見て、ぼくは不思議に思う。そうして、漬物をフォークで口に運んだ後に、彼女は神妙な顔をする。


「……柔らかいな。それに、思ったよりも甘い」


「保存食としては、イケるよね?」


「十分すぎるぐらいだ。他の野菜でも、試してみてほしいな」


 ポリポリとその味を確かめるように、漬物を噛み、それからアスは焼き魚へと手を付ける。

 何かを口に入れるたびに、嬉しそうに表情を変化させるアスの食事は、見ていて飽きない。


 やがて、朝食を終えたアスが立ち上がる。


「美味しかったよ、ジン。……それじゃ、今日も行ってくる」


「うん。今日は何?」


「ゴブリン狩りだそうだ。街道から外れた洞窟に何匹か居付いてるんだとか」


「……また、割りに合わなそうな仕事だね」


 ぼく自身はゴブリンを見たことがない。だが、一般的に悪知恵が働き、徒党を組んで悪さをするイメージがある。


「なんてことない。ただ狩るだけだから、むしろ私の得意分野だ。昼までには戻るよ」


 アスの背中を見送った後、ぼくはいつものように残った朝食を片付けはじめる。

 この街にたどり着いて十日。

 大体、出来上がった生活パターンを今日もなぞっている。


 あれからぼくたちは、ギルドの宿屋に部屋を借り、生活をはじめていた。

 ギルドの請負人たちは、各地を回って歩くことも多く、それなりに大きいギルドは宿屋も兼ねている。


 ヘイワードに頼んで、食堂の厨房も使わせてもらっていた。

 料理人ももちろんいるのだけれど、ぼくの作った料理をアスが食べたいと言っていたから、というのもある。

 条件は、料理人たちの邪魔をしないこと。食材は自分たちで準備すること。その二つだ。


 キレイに片付けを終えて自分の部屋へ戻る道すがら、ヘイワードはまだ受付をやっていた。


「ヘイワード、アスにまた厄介な仕事を回したな?」


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