第19話:主砲着弾と、大和の誇り
「全機、顧問とヤマトを援護しろ! 雑魚を海将から引き剥がすんだ!」
大阪湾上空。
雲を突き破って飛来した航空自衛隊のF-35戦闘機隊が、正確無比な精密誘導弾と機関砲の雨を海面へ降らせる。
ドガガガガガガッ! チュドオオンッ!
急旋回を重ねるヤマトの機動力と佐々木の正確な狙撃、そして空からの猛烈な援護射撃により、海を埋め尽くしていた百頭以上の半魚人たちはみるみるうちに数を減らし、爆炎の中へと消えていった。
波間から上がっていた幾十もの影が潰え、残るは怒りに狂うビルのごとき巨体――『超巨大海将』ただ一頭となる。
「……よし。レールガンを頼む!」
佐々木は無線を開き、上空の支援機へ『A.G.I.S.試作型大型レールガン』の投下を要請しようとした。
その時、インカム越しに猛の熱い叫びが響き渡る。
『待て、佐々木顧問! レールガンを撃ち込む前に……この戦艦ヤマトの主砲をあの化け物の真っ芯にぶち込んでやる! 装填と充填に三十秒かかる……それまで時間を稼げるか!?』
佐々木は口元をフッと緩めた。
「ああ、任せろ。三十秒どころか、一歩も動かさせないよ」
佐々木は甲板の先端へと疾走し、艦首に備え付けられた多連装重マシンガン砲台へ飛び乗った。
『―――――』
ドクン!!
『クロノ・ヴィジョン』が起動し、世界が完全なスローモーションに沈む。
波を押し分け、ヤマトへ噛み付こうと迫る海将の巨体。
佐々木は静止した世界で重マシンガンの照準を合わせ、海将の複眼と、顎の接合部へ向けて弾幕を叩き込んだ。
ドドドドドドドドドドドッ!!
通常速度に戻った瞬間、連続する破裂音が海上に響き渡り、海将は顔面を激しく破壊されて苦悶の咆哮を上げた。
「ギシャアアアアアッ!?」
顔をかばい、その場でのたうち回る海将。足止めは完璧だった。
――その頃、艦橋の射撃指揮室。
猛は汗ばんだ手で主砲の照準器を強く握りしめ、レンズの奥の海将の核を捉えていた。
(俺は……誇り高き大和一族の男だ)
脳裏に浮かぶのは、幼い頃から祖父に連れられて参拝した、靖国神社の静謐な空気。
国を思い、愛する人々を守るために海へと散っていった、曾祖父をはじめとする無数の英雄たちの面影。
(あの戦争で先人たちが命を懸け、繋いでくれたこの平和な日本を……こんな化け物どもに潰させるわけにはいかんのだッ!!)
猛の魂の叫びに呼応するかのように、ヤマトの巨大な三連装主砲が重厚な機械音を立てて旋回し、海将の胸元へと一直線に狙いを定める。
『主砲、エネルギー充填完了! ターゲット固定!!』
「祖国の未来を……喰らええええええッ!!!!」
猛が撃発レバーを全力で押し込んだ。
――ドガアアアアアアアアアンッ!!!!!!
大阪湾全体の空気が揺らぎ、ヤマトの艦体が大きくきしむほどの凄まじい衝撃波。
主砲から放たれた巨弾が、空気を焼き切りながら海将の胸部へと一直線に叩きつけられた。




